信用をつぶされて激怒した話。私は、“やさしさ”を守るために法人をつくった。
|「やさしさ搾取」って、なに?
「やさしさ搾取」とは、
“しっかり者”のあなたが、気づかないうちに便利に使われてしまう構造のことです。
たとえば──
穏やかな性格に甘えて、頼みごとを押しつける
相手の優しさを「当然の労力」として計算に入れる
自分のミスや曖昧さを、他人がカバーしてくれる前提で動く
本人に悪気があるとは限りません。
けれど、それによって誰かの労力・時間・信用がじわじわと削られていくとしたら──
それはもう、搾取です。
|それは、信頼していた相手との仕事で起きました
法人設立前、まだ個人事業主の漫画家・此花あかりでしかなかった頃。
昔からの友人であり、実績もあり、社会的な立場もある方に、
とある案件の経理と進行管理を任せました。
それはエディトリアルデザイナーなどとチーム制作する必要がある内容でしたが、デザイン制作会社からの下請け発注でなく、私の公式Webサイト「此花あかりWEB」から直接相談があった案件でした。
「此花あかりさんの絵で描いてもらうには?」
そういう相談だったのです。
しかし私は漫画しか描けませんので、チームを組む必要があることをお客様に伝えました。
これまでにも何度もそういった「元請け制作」はしてきました。
個人事業主同士でチームを組むこともありましたし、取引先の法人企業に経理や編集、進行管理等をお願いすることも多かったです。
(普段私は下請けなのですが、「此花さん営業力あるわ~もちろん手伝うよ!」という感じで皆さん引き受けてくださいました)
そういうふうに過去に何度もチームで仕事をしていて、トラブルなど一度もなかった。
漫画描きが漫画制作に集中したいのは業界の方なら承知済ですし、「こっちの作業は任せろ」的に分業が速やかに行われていました。
プロとしてそういうことができる先を選んでいました。
だから私は、該当の案件でも、昔からの友人で信頼している人に、全体の報酬管理や見積・請求業務を委ねました。
しかし、その人も私も個人事業主で、「力関係」が曖昧になったのですね。
|ファクトが揃うまで、ひとりで嵐を抱えた
まず、当初私は着手金をいただいて制作スタートしていましたが、実は全額支払われていたことを知らされておらず、請求してもすぐに支払われなかった。
どこいった。私の報酬。
ねぇ。(怒りの涙目)
もちろん怒りましたけど、「ない袖は振れない」状態です。
一時、絶望します。私のもとにはアシスタントもいます。もし事故ったら、私はアシスタントからの信頼を失いますので、報酬のないまま自腹切るんかと…。
その段階で、クライアントへの不必要な追加請求が行われていたことにも気づきます。
本来は必要のないはずの追加費用を請求していた。
内訳も不明瞭で、最終見積書も共有されず、私は知らないままになっていた。
違和感を覚えた私は、直接クライアントに確認し、
そのやりとりの中で初めて、不正な請求が行われていた事実に気づきました。
クライアントは実は不審に思っていて、業界がちがうことから内訳の内容をうまく追求できなかったそうです。(私はすでに台割決定後の最終見積書を共有されていなかったので、介入できず)
けれど、当時まだ納品前。
最終チェックはクライアントが最も集中しないといけないフェーズですし、
この問題を表沙汰にせず、自分の中で“嵐”をおさめることを選びました。
|「やさしさ搾取」はこうして起きた
私は、相手を信じていたというよりも、
「信じてる前提」で動かないとプロジェクトが進まないと思っていました。
だから…
最終見積書が共有されなかったこと、クライアントに不当な追加請求をしていたことを問い詰めなかった
支払いが不明瞭でも「今は忙しいから」と言われ、飲み込んだ
クライアントに迷惑がかからないよう、自分が動いてカバーした
相手の立場を考えて、強くは言わなかった
一度任せたことを、信用の証として任せ続けた
「追及して制作がバラけたら困る」という意図で。
まぁ、相手からすれば何も言わないやさしい人でしょうね…。
|「なんで私がここまでやらなきゃいけないの?」という工程をすべて担った
さらに、こんな工程を踏んでいました。
金額の妥当性について、クライアントに直接ヒアリング
メール・請求書・LINE履歴をすべて遡って整合性を確認
アシスタントに状況説明、謝罪
第三者の弁護士にも複数回相談
弁護士からは、私の報酬はすぐに支払われるべきだが、穏便に済ませるなら支払期日を延ばすのも一手と言われる
→ (えっ、なんで私が譲歩しなきゃなんないの……?)
→ それでも延ばした。結果、ようやく入金された。問題箇所を客観的にまとめ、クライアントにも報告
クライアントへの不正な請求は、内容を承諾してからだと立件は難しいとわかる。対クライアントの事案なので、私はもうタッチできなくなる。
納品後、クライアント本社に謝罪に伺い、クライアントの"静かな怒り”を受け止める
よく「契約書を交わしていなかったのか」と聞かれます。
たしかに、私と“やらかした人”のあいだには契約書は存在していませんでした。
“やらかした人”が制作チームの代表としてクライアントと契約(外注取引基本契約・機密保持契約)を交わしており、私はそのチームに属する制作者という扱いだったのです。
|クライアントの言葉が、なによりの証明だった
納品を終えたあと、
私はクライアント本社に直接謝罪に伺いました。
本来なら、これは私がやるべき仕事ではないかもしれない。
でも、制作チームを座組したのは私だ。
人を信頼して、裏切られたのは私だけど、私がクライアントに対して責任とらなきゃ。
──そういう気持ちからでした。
まず良いものができたとお礼を言われ、此花さんの絵で描いてもらって本当に良かったと喜んでいただけていました。
しかしくだんの話になると、いつも穏やかな方々から、静かな、怒りの気配が滲んでいました。
「納品後も不明瞭な追加請求があり、断った」←NEW!
「あなたの見えないところで、雑なことがされていた」←NEW!
やらかしプラスαマシマシで、情けなくて死にそうになりましたが、それで私はようやく、じゅうぶんなファクトを手に入れ、この怒りが私怨ではなかったと確信できたのです。
でも、正直に言えば苦しかった。
クライアントが本当に怒っている相手は、別にいるのに。
けれど、やらかした本人は納品後、訪問することもなく、謝罪にも行きませんでした。
私が、お声を受け止めることで、謝罪になっただろうか…。
|「やさしさ搾取」は、可視化されない限り“成功体験”として繰り返される
のちに、同じような被害を受けていた方がいることも知りました。
納期遅延を、別のメンバーがしょうがなくフォローしていた。
そしてそれは表沙汰にならず、そのメンバーの「我慢」で収まっていた。
つまり、「誰かが黙ってカバーしてくれる」ことを、
“咎められずにやり過ごせた経験”として記憶していたんじゃないでしょうか。
やさしさを搾取された側は、たいてい黙ります。
私もそのタイプです。
「もう関わらないようにしよう」
「怒っても仕方ない」
「次からは気をつけよう」
でもそのとき、加害側には“成功体験”が蓄積されるんですよ。
クライアントは何も言わなかった
一緒に制作した人も怒らなかった
お金も返さなくて済んだ
本人に悪意があったかどうかは関係ありません。
やらかされたほうが「我慢」して咎めず、記録されないままだと、
それは“再現可能な搾取手法”として社会に残ります。
残ったから私はやらかされたんだと。
|私は、怒りました。心の底から。
やさしさが壊されたことに対してではありません。
私を信用して発注してくれたクライアントに対して、何してくれてんねん!
という怒りでした。
そして、
"私”に対して何してくれてんねん!!!とも。
私の信用を削ってんのや!!
何十年もやってきた私の信用を!!!
|やさしさを守るために、私は法人をつくった
この出来事を経て、私は決意しました。
やさしさを、ただの“性格”や“スタンス”で終わらせない。
それを守るための立場や構造を持とう、と。
だから私は、法人を設立しました。
具体的には、
法人口座で資金を透明に管理し
すべてのステークホルダーと取引条件の覚書を交わし
責任の所在を明らかにしたうえで、チーム編成を行う
もしかすると、「信用できる人とだけやればいいのでは?」という声もあるかもしれません。
でも、人間関係の良し悪しだけでは守れない領域があると、私はこの一件で痛感しました。
やさしさは、構造がなければ搾取される。
信頼は、仕組みに置いてこそ機能する。
これからは、そういう時代なのだと思います。
|同じように「やさしさ」を傷つけられた経験がある方へ。
やさしさが、相手の利益のために利用されたとき。
怒ってもいい。それは、あなた自身を守る第一歩です。
私はその怒りを、法人という“構造”に変えました。
今度は、あなたのやさしさを守る番です。
👇このページの内容をふたつのAIに多角的に見てもらった記事も書きました!
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