漫画家、社長になる。個人事業主とマイクロ法人、二刀流で生きる戦略
|二刀流という新たな挑戦
漫画家として30年以上、広告漫画の世界で活動してきました。表現力と実績には自信があります。しかし、時代の変化とともに、私の仕事の形も変わりつつあります。これまでの経験を活かしつつ、新しいことにも挑戦したい。そんな想いから、私は個人事業主とマイクロ法人の「二刀流」という働き方を選ぶことにしました。
|私の経歴:表現力と実績
京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)洋画コースで培った表現力。1992年のデビュー以来、数々の広告漫画を手掛けてきました。大手出版社での専属作家経験もあり、難易度の高いテーマや、情報収集力・構成力が求められる大規模なプロジェクトにも対応可能です。
|二刀流を選択した理由:漫画家と経営者の顔を持つ
以前は、漫画家といえば雑誌の編集者が担当についてコミックスを出すのが一般的でした。しかし、私が専門とする広告漫画の場合、取引先は広告代理店や広告制作会社が中心となります。アーティストタイプというよりは、ビジネスパーソンに近い働き方です。
長く広告漫画を描くうちに、広告主から直接依頼を受けるようになりました。おそらく、ホームページに実績を多く掲載し、ビジネスパーソンとして安定した雰囲気を出すことができているからだと思います。




広告主から直接依頼を受けるようになると、漫画を描くだけでなく、小冊子やパンフレットの制作、取材など、様々な業務が発生します。その際、私は自分の人脈からデザイナーやシナリオライター、印刷会社などのプロフェッショナルを集め、チームを組んで対応してきました。
進行管理を含め、自分一人で対応できる案件であれば問題ありません。しかし、漫画の分量が多く、チームメンバーが多い場合、「ペンを持った千手観音状態」のプレイイングマネージャーとなり、手が回らなくなってしまうこともありました。そのため、マネジメントを外部に委託することもありました。
「これだけのチームを組めるのなら、会社にした方が良いのではないか?」
と、何度も考えましたが、会社にするなら自分の漫画の需要がなくなり、漫画家を辞める時がそのタイミングだと考えていました。しかし、そんなある日、クラウド会計ソフトfreeeから送られてきたセミナーの案内メールが目に留まりました。個人事業主がよく使っているあの会計ソフトです。
|法人設立への道のり:freeeが手伝ってくれた
セミナーのテーマは、「自分に合った法人化タイミングはいつ?」。法人化について具体的に考えたことはありませんでしたが、いつかは必要になるかもしれないと思い、セミナーに参加しました。
そこで紹介されたのが、個人事業主を残したままマイクロ法人を作る「二刀流」という働き方でした。パン屋さんが不動産経営をするケースが紹介されていましたが、売上によっては社会保険料が安くなるというメリットもあり、節税のためにマイクロ法人を設立するケースが多いそうです。
私は節税よりも、個人事業主を残しながら法人を設立できるという点に魅力を感じました。「これが私の道かもしれない!」と思いました。
翌日、freeeから電話がかかってきて「法人設立のご予定」を聞かれ、そんな急に考えられるか、二刀流を聞いたのは昨日じゃ、とは言わず「まぁ、半年後くらいには・・・」とものすごくもにゃもにゃした返事をしました。すると個別面談を案内され、一応聞いておくか(無料だし)、とものすごくもにゃもにゃした気持ちでお願いすることにしました。
freeeの担当者に私の仕事内容を伝えたところ、「すでに法人化できる事業ができあがっていますね」と言われました。漫画家は個人事業主として残し、チームを組んで行っていた業務を法人化するというビジョンを伝え、疑問にも答えてもらいました。
freeeは、個人事業主などのスモールビジネスをターゲットに、バックオフィス業務を効率化するためのクラウドサービスを提供している企業です。私が利用している会計ソフトの他に、会社設立に必要な書類を作成し、法人登記や設立後の手続きをサポートする「freee会社設立」というサービスもあり、今回の相談はそちらの担当の方に対応していただきました。
面談後もすぐに法人化を決断することはできませんでしたが、やはり半年後には設立したいと考えていました。そして2週間後、「半年後じゃなくいま会社を作ろう」とこちらからfreeeの担当者に連絡しました。
|社長になりたいわけではない:顧客への責任と持続可能なサービス
私は、特に「社長になりたい」と思っていたわけではありません。どちらかというと、自由人でいたかった。
しかし、自分の仕事が「会社に向いている」と感じたのです。
個人事業主との二刀流で「社会保険料を安くしたい」という気持ちもありましたが、それが主な目的ではありません。
個人事業主同士のチームには、「誰が責任を持つのか曖昧」というリスクがあります。案件が大きくなるほど、そのリスクは高まります。
私は、常に顧客第一で仕事をしたいと考えています。顧客が安心して取引できる体制を作りたい。
これまでも、これからも、顧客にとって安心できる取引相手でありたい。そして、「あの人に依頼すれば安心」と信頼され続けたい。個人事業主では、長期的なサービスの継続を保証することが難しいと感じていました。
個人事業主に仕事を依頼してトラブルになったという話をよく聞きます。連絡が取れなくなったり、アフターサポートが受けられなかったり、納品データが紛失したりといったケースだけでなく、制作費を支払ったのに制作が完了せず、返金を求めても支払う能力がなく泣き寝入りせざるを得ないという深刻な事例もあります。
法人は個人事業主とは異なり、法的責任が大きく、税務署の監査も厳しくなります。社会的責任も大きい存在です。
法人創業からの廃業率は、10年後で約30%、20年後で約50%と言われています。一方、個人事業主の廃業率は、開業から1年で約40%、3年で約50%、5年で約60%に達すると言われています。
私の個人事業主歴は30年以上。時にはアルバイトをしながら、瀕死の状態になりながらも、フリーランスとして生き残ってきました。
自分では特別だと思ったことはありませんでしたが、生き残りのプロなのかもしれません。法人を設立しても、「大きくすること」ではなく、「生き残ること」を目指そうと思いました。
|目指すは「年輪経営」:持続可能な成長
長野県民の誇りである伊那食品工業の「年輪経営」を参考にしようと思っています。無理な成長はせず、長期的な視点で、顧客に安心感を与え続けられる企業を目指します。
|二刀流で生きる戦略、今後の展望
法人設立は、私にとって新たな挑戦です。これまでの経験を活かしつつ、新しいことにも積極的に取り組み、顧客の期待に応えられるサービスを提供していきたいと考えています。
今後の記事では、法人設立の準備、具体的な事業展開、二刀流のメリット・デメリットなどについて、詳しくご紹介していく予定です。
つづく
🔗【追記】この記事では詳しく書かなかった、「法人をつくった本当の動機」はこちら↓にまとめました。書くかどうかすごく迷ったけど、書いて良かったです。
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