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一億人の織姫と彦星 —— 香取慎吾「Circus Funk」ライブ感想

7月5日、地球滅亡の噂が飛び交っていた。
「どうか、あと一日だけ待ってくれぇぇぇ」
そんな思いを胸に抱いていた。

なぜなら、翌日に香取さんのライブが控えていたからだ。
「年に一度の特別な出会い」。
まるで七夕の夜のようなものだと思った。

世界の終わりよりも、
ずっと大切にしてきた日である。





当日の暑さは変わらず、汗を拭いながら神戸ワールド記念ホールへ向かう。
三ノ宮に着くと、緊張でお腹を下し、トイレに駆け込んだ。

「もしライブ中にお腹が痛くなったらどうしよう…」
そんな心配から一瞬、オムツを買うことすら考えた。

ポートライナーに乗り換え、車内を見渡す。
グッズを身にまとった人、そうでない人。
マイノリティとマジョリティが同じ空間で混じり合う。
同じシャツを着る者同士が向かい合いながら、会話が始まらないのがむず痒い。

「絶対的な共通の話題」があるのに、どこか照れくさがっている。
それでも、みんなが「同じ場所」に向かっていると思うと、胸が高鳴った。





12時。開場。
今回の席はスタンド最上段にある「BOX席」。
ステージを横から、アリーナ全体を見渡せる特別席。
ふかふかの座席は、まるで審査員席のような居心地の良さ。

前回はスタンディングのアリーナ席。
後ろの席の人が楽しめているか不安で視界を気にしていたが、今日は気兼ねなく楽しめることにほっとした。

右隣には、静かにスマホを覗くクールな20代の女性。
左隣には、20代の男性が買ったばかりのマフラータオルとペンライトを握りしめている。

周りにはひとりで来たファンも多かった。
でも誰とも話せずにいた。

「どこから来たの?」とか「好きな曲は?」
なんて話しかけたいのに、勇気が出ない。

でも、それぞれが自分のペースで開演を待つこの空気も、悪くなかった。
見知らぬ者同士がこれから一緒に楽しむ。
そんな予感が面白かった。

自分はひとり、会場のBGMに合わせて軽く体を揺らして開演を待った。





13時。照明が落ちる。
白い煙の中から香取さんが姿を現す。
会場は瞬時に異世界へと変わった。

隣の男性と目が合った。
そっと「立つ?」とアイコンタクトする。
二人で笑顔を交わし、立ち上がったのが唯一の会話だった。

右隣の女性は、先ほどの静けさを忘れたかのように体を揺らし、手拍子を送り全力で手を振る。
自分もその動きに負けまいと、目の端で見ながら体を動かした。





香取さんは、圧倒的だった。

まるで覇王のような存在感。
キレのあるダンス、どんどん進化する歌声。
遠くからでもわかる、力強く輝くデカい肉体と煌びやかな衣装。
総じて圧倒するパワーに満ちていて、華やかな「化け物」だと思った。

それでも合間に挟まるMCでは「みんなの慎吾ちゃん」が顔を出す。
「この星のみんなの笑顔を取り戻しにきた。そろそろ自分の星に帰るぞ」
「イィー!(ショッカー風)」
という謎のノリも生まれた。
半径5mにいるかのように親しみやすく、まるで目の前にいるかのように観客と会話する。
一万人に対して「話しかけて」、「笑わせる」その姿に、ちょっと恐怖すら感じた。





BOX席から見下ろす会場は、客席の熱気とステージからのエネルギーがぶつかり合っていた。

一万人分のサイリウムが揺れる光景は、天の川のように美しかった。

ライブに集まった人々は、日々の喜怒哀楽を超えてここにいる。
「楽しい!」という高揚感と「ワクワク」という希望をペンライトに乗せて振っている。
その背景を勝手に想像すると、胸の奥が締め付けられた。

そして開演前まで、それぞれの時間を過ごしていたのに、今はまるで一つの生き物のようにうねり動いている。

でも2時間後にはまた、知らない人となり、それぞれの日常へ戻っていく。
右隣のノリノリな女性も、左隣でギコちなくノリノリな男性もきっと2度と会わない。
そんなことを思うと、どこからか切なさが込み上げてきた。

その輪の中心に立つ香取さんは、
まるで一年に一度、天の川を越えて出会う「彦星」だろうか。

刹那のひとときを心から慈しみ、
その限られた時間に込められた深い愛情を、
音楽という言葉で観客に静かに返しているように感じられた。





終演。
現実に戻らねばならないのに、すぐには帰りたくなかった。
あの熱狂と興奮の余韻に包まれたまま、電車に飛び乗る気にはなれなかった。
まだ夢の中にいたいと思った。二度寝をするかのごとく、少し歩くことにした。

歩きながら、胸の奥に悔しさがじわりと滲み出していた。
最後の大団円。
ムカデ競争のように肩に手を置き、一列になってステージを降りるメンバーの様子が羨ましかった。
あのステージに立ち、たくさんの人の心を揺さぶる存在でありたい。
憧れと焦りが交差する気持ちが湧いてきた。

気づいた。
エンターテイメントは観る側も楽しいけれど、創る側はもっと楽しいはずだ。
自分がやりたいことを自分の手でつくり出す喜び。
だから、自分も何かを生み出し続ける側の人間でありたい。
香取さんが「これからもステージに立ち続けます」と言ったように、自分もそう強く思った。





「Circus Funk」は、香取さんの脳内にトロッコで没入するような体験だった。
ライブに参加して、本当に良かったと思う。

香取さんは、
願いも祈りも、ファンの喜怒哀楽すべてを飲み込んで、
圧倒的なエンターテイメントに変えてしまう「化け物」のような存在だった。

今頃香取さんは、
ポートタワーの上に停めた宇宙船に乗って、
また別の星に向かっている。

もし本当に、地球滅亡の日が来たとしても、香取さんの星についていけば良いやと思った。

そしてきっと、
香取さんは、こう言ってくれるはずだ。

「みんなの笑顔を取り戻しにきた。そろそろ帰るぞ」

その時は、こう返す。

「イィー!!!」

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