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粉末成型はなぜ安定しないのか|トラブル事例と現場での対処法

【はじめに】

前回の記事では、設備保全としての業務内容を紹介した。今回はその中でも、現在担当している「ファンデーションの粉末成型工程」について踏み込んでいく。

化粧品の中でもファンデーションは粉体を扱う工程が多く、一見すると単純な成型作業に見える。だが実際の現場では、粉詰まりや成型不良が頻繁に発生し、安定した生産を維持するのは一筋縄ではいかない。

本記事では、現場で実際に起きるトラブルの事例と原因、そして保全として行っている具体的な対処法を解説する。


【粉末成型ラインとは】

粉末成型は、粉体を金型で圧縮して成形する工程である。
一見シンプルに見えるが、材料特性や環境の影響を強く受けるため、安定運用には工夫が必要となる。


上杵で抑えて下からの油圧で押し固める


・粉塵が発生しやすい環境

 → 設備トラブルや摩耗の大きな要因になる。
 → 粉塵爆発リスクもあるため、保全者は粉塵教育の修了が必須。
 → 清掃・点検も安全前提での対応が求められる。

・材料特性(流動性・粒度など)の影響が大きい


 → クリーンルーム内での成型のため、外的要因の影響は受けにくい。
 → 一方で、粉末そのもののバラつきが大きく影響する。
 → 原料配合や製造条件が同じでも、微妙な差が発生する。
 → そのため再現性が取りにくく、成型時は都度微調整が必要になる。


【粉末成型ラインでよくあるトラブル】


粉末成型では、設備要因と材料要因が複雑に絡み合い、原因特定が難しくなるのが特徴である。

設備要因によるトラブル

①粉詰まりによる動作不良

粉塵環境では、可動部への粉の侵入や堆積が避けられず、わずかな負荷変化でも設備の動作に影響を与える。

現象
 → シリンダーやプレス機のロータリーアクチュエータの動作不良
原因
 → 粉の堆積やブリッジによる負荷増大、可動部への粉侵入

《失敗談》 材料不良と思ったら設備不良だった!


実際に自分がやってしまい長時間の設備停止を招いてしまった体験を1つ紹介する。

「充填状態がいつもより悪く、条件を調整しても改善しない状況が続いた。
当初は粉末ロットのバラつきによる材料起因と判断し、充填条件・撹拌条件の調整を繰り返した。
しかし改善しないまま時間が過ぎ、改めて設備を確認したところ、充填撹拌モーターの駆動部に粉が詰まり、回転がわずかに低下していたことが判明した。
「ちょっと遅い」程度の変化だったため、日常点検では見落とされていた。材料を疑い続けた分、対応が後手に回った。」

教訓:材料起因に見える不良でも、まず設備の基本動作(回転数・速度・負荷)を確認するという事だ。設備確認を後回しにするほど、原因特定に時間がかかると思い知らされた体験だ。

1方向からの判断だけでは見落としに繋がる


② センサー誤作動(粉汚れ)

現象:ON/OFF不安定、誤検知
原因:粉塵のセンサー検知面への付着
注意:「設備の問題」と気づかず、段取りや材料を疑い続けてしまいやすい。センサー周辺の清掃状態は、日常点検で必ず確認すべき箇所だ。

③ 段取り替え時の位置ズレ・組付け誤差

現象:チョコ停・異音・成型不良
原因:製品切替時の芯ズレ、締結ばらつき
背景:段取り替えは作業者の手技に依存しやすく、組付け精度のばらつきが起きやすい。


【現場での対処法】

設備要因への対処:
予防保全を仕組みにする・清掃は「周期」で管理する

・定期清掃
粉塵の堆積を前提とし、期間を決めて清掃を行う。
「汚れたら清掃する」のではなく、堆積する前に除去する管理が重要である。

・駆動部の定期メンテナンス
週1回のグリスアップ・注油。
粉侵入による潤滑不良の防止。
粉塵環境では潤滑劣化が早いため、周期管理が前提となる。

・ 月1回のオーバーホール
分解点検を行い、内部の摩耗や劣化を確認する。
日常点検では見えない異常の早期発見につながる。

・ 日常点検記録の運用
毎日の点検記録簿を活用し、状態変化を蓄積する。
これにより異常の傾向を把握しやすくなる。

材料要因への対処:
再現性は「手順」で担保する


材料のバラつきは設備で吸収しきれない。設備ではなく「記録と手順」でカバーするのが現実的なアプローチだ。

・調整条件の数値化
→充填ホッパー高さ・撹拌速度・プレス圧力などを数値で管理。
→属人的な調整をなくし、誰がやっても同じ基準から始められる状態にする。

・不良・調整データの蓄積
→「何が原因で・どう調整して・結果どうなったか」をセットで記録。同じ不良で毎回一から試行錯誤する状況を防ぐ

・対応フローチャートの整備
→不良発生時の判断手順を明確にし、担当者による対応ばらつきを抑える。
→経験の浅い担当者でも、一定水準の対応ができる状態をつくる。


【まとめ】


正直に言うと、粉末成型は「完全に安定した」と感じる日がほとんどない。条件を固めても、記録を積み上げても、翌日には「また微妙に違う」が起きる。

それでも、仕組みを整える前と後では明らかに違う。
原因にたどり着くまでの時間が短くなった。
同じミスを繰り返す回数が減った。
「なんとなくおかしい」を記録で説明できるようになった。

数値や手順で固められる部分は、しっかり固める。その上で、数値に現れない粉の状態や設備の微妙な変化は、現場で体で覚えていくしかない。

『この工程に「慣れた」と思った瞬間が、一番危ない。』

それくらい、粉末成型は毎回何かしら違う顔を見せてくるのである。



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