見出し画像

前回の対策が効かない理由|同じ不良でも原因が変わる“本当の話”

「前回と同じ対策をしたのに、なぜか直らない」

現場でこんな経験、ありませんか?

実はこれ、よくあることです。
そして原因はシンプルで、

👉 同じ不良でも、原因は1つじゃないからです。

今回は、実際に現場で起きた「ハガレ不良」の事例をもとに、
なぜ“前回の対策が効かなかったのか”を解説します。


【ある日、成型面に「ハガレ」がでた】

■違和感の始まり

その日、生産ラインはいつも通り稼働していた。
だが、出来上がった成型品の表面にわずかな異常が出始める。

ハガレだ。

ハガレとはプレスされた際の結合が上手くいかず、逆剥けのように表面がペロっとめくれてしまう症状だ。

■条件を疑う

まず、疑ったのは設備条件だ。

  • 充填の撹拌条件を変更

  • プレス圧力を調整

  • プレス速度、時間を変更

  • プレスタイミングも見直す

考えられる条件は一通り触った。
それでもハガレは直らない。

他の保全仲間達にも相談をしたが

「設備的には他に考えられない」という結論に至った。

ここで

『設備条件ではない可能性が高くなった』


■最初の結論

視点を変え、副資材を確認。
プレス時に上杵と成形面の剥離を促すために巻紙をかましている。

結果、原因はこの巻紙だった。

巻紙の状態により、表面の密着状態が変化し、成型面のハガレを引き起こしていたのだ。

すぐに違うロットの巻紙と交換し、ハガレは治まった。

ここまでラインを止めて半日、ようやく復旧する事ができた。

その日のうちに、今回の事象について仲間内で情報共有を行い、再発してもすぐに原因にたどり着けるようにしっかりとミーティングも行った。

これで大丈夫だ。この時、私はこう思っていました。
「もう原因は分かっている」と。


【同じ不良、同じ対策。しかし止まらない】

■再発

しばらく経って2、3ヶ月後ぐらいだろうか。
同じ製品の生産が入ってきた。

生産が始まり、また同じようにハガレが出始めたのだ。

前回の情報は共有済み。
迷わず、同じ対策を実施した。


■違和感

だが、今回は違った。
対策を打ってもハガレは直らない。

おかしい…

「設備調整も巻紙の交換もしたのに!」
「前回と同じなんだからこれで直るはずだろ!」

頭の中で自問自答が駆け巡る。

ライン停止の時間がどんどん延びていき、焦る気持ちが加速していく。

『前回と同じなのに、挙動が違う』


■視点の切り替え

設備でも副資材でもない。
もしかして・・・

そうなると残るは材料側だ。

粉の状態に問題があるのではないか?
そう考え、中味製造部に確認を依頼した。


■真因

調査の結果、対象ロットの中味粉末の製造段階で、撹拌時間がいつもより短い事が判明した。

その結果、原料が十分に混ざり合わず、成型時の結合力が不足していたのだ。

時間は16時過ぎ。
対象ロットの中味粉末を使わず、次ロットを使用して、すんなりと生産は稼働再開できた。


見た目は同じハガレでも、"原因はまったく別だった"。



【なぜ同じ不良で原因が変わるのか】


■ハガレ不良の発生メカニズム

要因として表面要因と内部要因に分ける事ができる。

・表面要因→巻紙。表面接触不良。再現性あり。
・内部要因→撹拌不足。分散不良。ロット依存。

同じ現象でも全く層が違うのだ。

今回の場合、撹拌不足 → 成分偏り → 局所的に結合弱い、という事が起きていた。


■現場での切り分け手順(疑うべき3つの手順)

・設備条件(圧力・速度・タイミング)
・副資材(巻紙など)
・原料状態(撹拌・粒度・含水)


■再現トラブルで最も危険な思い込み

・成功体験に引っ張られる。
・原因の固定化が起こる。

するとどうなるか。
解決する過程で最も危険な思考になる。

『前回と同じ原因だろう』



【まとめ】

「前回うまくいったから、今回も同じでいい」
この思い込みが、一番時間を奪います。

同じ現象でも、原因は一つではない。
現象ではなく、構造で捉える事の重要さ。
切り分けの幅をもつ事の大切さ。

だからこそ、毎回ゼロベースで切り分ける必要がある。
それが、トラブル対応を“作業”ではなく“技術”に変えるのだ。


【あわせて読みたい】

安定したと思った翌日に、また違う顔を見せてくる。

それが粉末成型です。

👉 [粉末成型はなぜ安定しないのか|トラブル事例と現場での対処法]


「また朝から不良か」と思ったことがある方へ。

これ、パターンがあります。

👉 [粉末成型の朝一不良、20年の保全経験で見えた2つのパターン]


いいなと思ったら応援しよう!