【短編ホラー集】怪忌16.形見/E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末
E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末
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16.形見
休日の昼前、希美は庭の花に水をあげていた。希美の母はガーデニングを趣味としており、庭で様々な花を育てている。春はチューリップ、夏はマリーゴールド、秋はコスモス、冬はスイセン……といった具合に、庭では一年を通して何かしらの花を楽しむことができる。中でも特に母がお気に入りなのが、いま希美が水をあげているコスモスで、希美自身も大好きな花だった。
「──希美、おはよう」
門扉を開け、隣の家に住む幼馴染の歩希がやって来た。希美も、「おはよう」と、挨拶を返す。
「これ、うちの母さんが作ったカレー。今日のお昼に食べろって」
歩希はカレーが入ったプラスチック容器を差し出した。希美の家と歩希の家は家族ぐるみの付き合いがあり、食事に限らずこうしたおすそ分けをし合うことが多い。希美たちがもっと小さかった頃は、仕事や用事がある時などは双方で子どもたちの面倒を見てくれることもあった。希美と乃愛は何度も歩希の家でご飯をご馳走になったりお泊りさせてもらったし、歩希もまた希美の家で同じようにしてきたのだ。
「ありがとう。おばさんのカレー、甘くて美味しいから大好き。乃愛も喜ぶよ」
希美はカレーの容器を受け取った。プラスチック容器はかなり大きく、その中にカレーがたっぷりと入っている。三人で食べても二日くらいは持ちそうだった。
「何かお返ししたいけど……うち、昨日の夜はコンビニのお弁当だったから」
希美がそう言うと、歩希は「いいよ、お返しなんて。気にするな」と、希美の家の事情を察したように言った。
うん、と言って、希美はさっきまで水を上げていたコスモスに目を向けた。九月の中ごろに咲き始め、少し前まではこの花壇一面をピンクや白などで彩っていたこのコスモスも、十月も終わりが近づき、気温が下がるにつれ、枯れたものが目立ち始めていた。
「この子たち、もうすぐいなくなっちゃうね」
希美は寂しい気持ちで言った。コスモスの開花時期は十一月くらいまでだ。どんなに水をあげても、もうじき全て枯れてしまう。
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