退職金=ローン完済、という思い込みを手放した理由
この記事を読んだらわかること
✅ 退職金でローン完済がなぜ損になりやすいのか
✅ 低金利ローンを返さずに運用すると20年でいくら違うか(シミュレーション付き)
✅ 一括返済に向いている人・向いていない人の違い
✅ 退職金運用で失敗する人に共通するパターン
✅ 筆者(借入約4,000万円・変動金利)が完済しないと決めた理由
「退職金が出たら、まずローンを返そう」
そう思っている方は多いのではないでしょうか。かつての私も、そのつもりでいました。
でも今は、そのつもりがありません。
なぜそう考えが変わったのか。自分自身の住宅ローンの数字を使いながら、整理してみたいと思います。
1. 私の住宅ローン、いまこんな状況
約5年前に家を買いました。35年の変動金利ローンで、借入額は約4,000万円。完済予定は約80歳です。
退職まではあと10年ちょっと。退職金はおそらく約500万円くらいになると思っています。
つまり、65歳で退職しても、その時点でもローンはまだ15年残っている計算になります。そこに500万円を一括で入れたら、気持ち的にはスッキリするかもしれません。でも、それって本当に正解なのでしょうか?
2. 「退職金でローンを消す」は、昔の正解だった
かつて、退職金でローンを繰り上げ返済することは賢い選択とされていました。金利が高かった時代には、借金を早く消すことが合理的だったからです。
しかし、ネットなどで調べてみると、近年はそうした相談自体が激減しているといいます。退職金を運用に回すことを優先する人が増え、定年後も働き続けるケースが一般化した結果、「退職金=ローン完済」という図式が崩れてきているのです。
3. 変動金利で借りたローンは、実は「おトクな借金」かもしれない
現在50代の方が10〜20年前に組んだ住宅ローンは、超低金利時代のものです。私のローンも同じで、当初の適用金利はかなり低い水準でした。
一方、2024年3月以降、日本銀行が利上げを進めています。その結果、10年物国債の利回りは2.5%超に達しています。つまり、国債のような「ほぼリスクなし」の商品でも、低金利ローンの利息負担を十分カバーできる可能性が出てきました。
【ポイント整理】
・変動金利ローンの金利 → 超低金利時代に組んでいれば低水準
・10年物国債の利回り → 2.5%超(2025年時点)
・差し引き → 運用益がローン利息を上回るケースも十分あり得る
変動金利の上昇リスクはありますが、今後上がる可能性を考えても、まだまだ低金利です。ただ「5年ルール」「125%ルール」には油断しないでください。そのあたりはこちらの記事をご覧ください。
4. 約80歳完済なら、団信が一生ついてくる
私のローンは約80歳完済です。この場合、完済前に万が一のことがあっても、団体信用生命保険(団信)によって残債が清算されます。
つまり、ローンを残しておくことが「リスク」ではなく、むしろ「保険が効いている状態」ともいえます。これは繰り上げ返済してしまったら得られないメリットです。
この記事を読まれている方はローン契約済の方が多いと思いますが、団信はこちらの記事でまとめていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
5. 一括返済のメリットも、もちろんあります
繰り上げ返済や一括完済にもメリットはあります。支払利息の総額を減らせること、毎月の返済がなくなること。老後の家計がシンプルになるのは、心理的にも大きいでしょう。
ただし、手元の蓄えが潤沢でない人は要注意です。
国債などで運用していれば、必要になれば売却して現金化できます。でも、ローンに入れてしまったお金は二度と戻ってきません。子どもの結婚、リフォーム、車の買い替え……老後はまとまった出費が続きます。それを見越した上で判断することが大切です。
【一括返済に向いている人・向いていない人】
向いている人:
・手元に十分な預貯金があり、生活防衛資金にも余裕がある
・心理的に「借金がある状態」に強いストレスを感じる
・ローン金利が比較的高い(固定金利で2〜3%超など)
向いていない人:
・退職金が唯一のまとまった資金である
・老後に大きな出費が見込まれる
・超低金利のローンを保有中で、運用利回りがそれを上回る見込みがある
6. 「運用に回す」で失敗した人の話
一方で、退職金を運用に回して後悔しているケースも少なくないようです。
SNSを通じた投資詐欺に巻き込まれたケース。投資経験がないまま自分に合わない商品を買ってしまったケース。いずれも、退職金という「一生に一度の大きなお金」を失う結果になっています。
専門家の見解として、投資経験がゼロ、もしくはそれに近い人は、まず安全確実な金融商品を選ぶのが無難とされています。セカンドライフは長いので、焦らず投資の基礎を学んでからチャレンジするのがよいでしょう。
「運用に回すのが正解」という話ではありません。自分の状況・経験・リスク許容度を踏まえた上で判断することが大切です。
投資に関しては私の過去の経験談がこちらです。前編は失敗と成功の経験、後編はその考察と注意点を書いています。
7. 私は「完済しない」と決めている理由
話をまとめると、私が退職金でローンを完済しないと決めている理由はこうです。
・ローン金利が低く、運用利回りが上回る可能性が高い
・約80歳完済なので、団信が長期にわたって有効
・退職金約500万円を流動性の高い形で持っておきたい
・老後の不測の出費に備えたい
もちろん、金利が大幅に上昇すれば判断は変わるかもしれません。でも今のところ、退職金はローンではなく「運用と生活防衛」に使う方針です。
【シミュレーション】完済 vs 運用、どちらが得か?
ここでは「退職金を一括返済に充てた場合」と「運用に回した場合」を、残債・運用利回り別に試算してみます。
前提条件は以下の通りです。
【試算の前提】
・退職時の残債:1,500万円 / 2,000万円 / 2,500万円の3パターン
・退職金:約500万円(わが家の想定)
・ローン残存期間:20年(退職後も返済が続くケース)
・ローン金利:変動0.5%(現行水準を想定)
・運用利回り:5%(新NISAのインデックス投資を想定)
・運用期間:20年間(複利で試算)
・税金・諸費用は簡略化のため考慮外
パターン①:残債1,500万円のケース
退職時に残債が1,500万円残っており、退職金約500万円を一括返済に充てた場合と、全額運用に回した場合を比較します。

ローン金利0.5%の場合、500万円を繰り上げ返済しても節約できる利息は20年でわずか約26万円です。一方、同じ500万円を年利5%で20年間複利運用すると、約827万円の運用益が生まれます。差し引き約801万円、圧倒的に運用が有利という結果になりました。
パターン②:残債2,000万円のケース
残債が2,000万円の場合でも計算してみましょう。退職金約500万円を充てても残債は1,500万円残ります。完全完済はできませんが、「一部繰り上げ返済」と「全額運用」の比較です。

残債2,000万円でも構図はまったく同じです。繰り上げ返済の節約利息は残債の金額に比例しますが、500万円分の節約利息は金利0.5%の水準では大きな差を生みません。「返す」より「増やす」が合理的な選択になりやすいことがわかります。
パターン③:残債2,500万円のケース(私に近い状況)
退職時の残債が約2,500万円(私の場合はこれに近い想定)で、退職金約500万円を一部充てるケースです。

残債が多くなるほど繰り上げ返済の効果が上がりそうに思えますが、金利0.5%では節約利息は大きく変わりません。一方、運用益は残債の金額に左右されません。どのパターンでも「運用優位」という結果は変わりませんでした。
ただし、これはあくまで「金利0.5%」前提の話です
ここまでのシミュレーションはすべて、変動金利0.5%という現行水準を前提にしています。金利が上昇すれば、当然この構図は変わります。
【金利が上がったらどうなる?】
・金利1.0%の場合 → 節約利息が約2倍に。それでも運用5%なら依然として運用優位
・金利2.0%の場合 → 節約利息が増加するが、運用益との差はまだ大きい
・金利3.0%以上 → 完済優位に逆転する可能性。要注意ゾーン
→ 適用金利が3%を超えてきたら、一括返済の再検討が現実的なラインになります
変動金利の動向は今後も注視が必要です。ただ「5年ルール」「125%ルール」の存在もあり、短期間で急激な負担増になるケースは限られます。定期的に自分のローン金利を確認し、運用利回りと比較する習慣をつけておくことをおすすめします。
私の結論:約500万円の使いみちはこう考えています
以上のシミュレーションを踏まえて、私自身の退職金約500万円の使いみちを整理しておきます。
【わが家の退職金活用イメージ(現時点の方針)】
・生活防衛資金として確保:約200万円
→ 老後の急な出費(リフォーム・医療費等)に備えるバッファ
・新NISAで長期運用:約200万円
→ オルカン等のインデックスファンドで10〜15年運用を想定
・国債・定期預金等の安全運用:約100万円
→ リスクを抑えながらローン金利を上回る利回りを狙う
・住宅ローン繰り上げ返済:0円
→ 金利が3%を超えるようなら再検討します
これはあくまで私個人の試算と方針であり、すべての方に当てはまるわけではありません。退職金の額、残債、家族構成、運用経験によって最適解は変わります。ただ、「退職金が出たら自動的にローン返済」という思考停止だけは避けていただきたいと思います。ぜひ一度、ご自身の数字で計算してみてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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