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あなたは優しく嘘をつく|第2話|「姫ちゃん♡だーいすき!」と言われて500万円失った話

序章はこちら

最初に言っておく。

彼は暴力を振るわなかった。

怒鳴らなかった。

浮気もしなかった。

私を見下すこともなかった。

むしろ優しかった。

だから私は、5年を失った。


彼と出会ったのは、私が社会人、彼が学生の頃だった。

彼は年下だった。

若くて、素直で、よく笑う人だった。

そして、初めてのデートの日。

彼は学生にもかかわらず、私にこう言った。

「今日は僕が払います」

私は驚いた。

社会人の私よりお金がないはずなのに。

その気持ちが嬉しかった。

でも結局、その日は私が払った。

年上だし。社会人だし。

学生に出させるわけにはいかない。

そう思った。


今思えば、その時はまだ健全だった。

問題は、その後だった。


私は年上だった。

彼の周りには同世代の女の子がたくさんいた。

若くて可愛い女の子たち。

焦るよ、普通に。

若さでは勝てない。可愛さでも勝てない。

なら何で勝つ?

私が出した答えは、

「大人の女でいること」

だった。


食事代を出す。高いプレゼントを買う。お金が足りなければ補う。

私はそれでマウントを取ったんだ。

彼の同世代の女たちに対して。


最初はファミレスだったからいい。

私の虚栄心は、おしゃれな店を選ぶようになった。

そして、有名店。

気づけば、彼の方からリクエストしてくる、ミシュラン系のレストラン。


彼は一度も命令はしなかったよ。

ただ、「次こういうお店、行ってみたくない?」って可愛い笑顔で、ミシュラン系レストランの特集雑誌を私に見せて、うっとりしていた。

彼は私を「姫」と言った。

「姫と一緒にこういう良いお店行きたいんだ。姫だって好きでしょ?」

だからね、幸せだったの。

彼に選ばれた私が、彼と絵にかいたような恋人同士でいられることが。


私は連れて行った。

私にしか与えられない、彼の幸せだと思ったから。


洋服もそうだった。

最初は数千円だった。

そのうちブランド物になった。

代官山。青山。中目黒。

ブランド店、セレクトショップ、雑誌に掲載されているブランドはくまなく探して彼は服を選んだ。

1点、数万円のものを。

数10万円じゃないから、「安いね」と言い合うようになり、感覚も狂っていった。


さすがにもうお金が尽きた…。今日は買えないって言った時、初めて彼が起こった。

「何とかしてお金出せないの?俺に買えって言うの?」

「どうしても、なきゃ困るものなの?」

「もうズボンが破けてるんだよ。買い替え時だろ」

「ユニクロじゃだめなの?」

「〇〇(ブランド名)で良いのがあったんだ。姫だって俺にかっこいい服着てもらいたいでしょ?」

「でも、お金ないなら仕方ないじゃん」

「お前ふざけんなよ!!」

殴られるかと思った。

怖かった。

でも、殴られる恐怖より、彼を失う恐怖が勝った。

私はキャッシングした。


最初は少額だった。1回分なら返せると思った。でも金額は増えた。

買わないと怒られる。怒られたら、別れるって言われそう。つなぎとめるためには、お金しかない。

買ってあげた時の彼は満面の笑みで、

「姫ちゃん♡だーいすき!」

って言ってくれるんだ。


気づけば借金は数百万円になっていた。


私は会社に内緒で副業を始めた。

平日は働き、休日も働き、夜も働いた。


それでも彼は言った。

「いつもありがとう。姫ちゃんのおかげで、僕はとっても幸せ♡」


当時の私は、その言葉に救われていた。

愛されていると思ってたんだ。


付き合って5年。

彼は学生を卒業した。

私は思った。

やっとだ。

これで将来の話ができる。


でも彼は就職しなかった。

フリーターになった。


結婚の話をすると、曖昧な返事しかしない。

将来について聞くと、話を変える。

お金の話になると、機嫌が悪くなる。


それでも私は別れなかった。

5年も付き合ったから。ここまで支えたから。きっといつか変わるから。

私が彼を支えていこうと思っていたんだ。私が稼いで、彼は自由きままに過ごしてくれていいとさえも、考えていた。


ある日、彼は言った。

「生活するために、給料じゃ暮らせないんだよね。君だって、おいしいもの食べたいでしょ?フレンチとかイタリアンとかさ」

この時はもう、「姫」ではなく「君」になっていた。

「だから、毎月お小遣いくれるよね?」

「いくら?」

「10万」

ない、あり得ない!

さすがに私は怒った。でも彼は、「じゃあ別れる」という。

でもね、この時すでに私はもう彼にすがっていなかった。もうセックスレスが3年も続いていて、呼び名は「君」に降格。もう、なんで付き合っているのかもわからなかった。


その瞬間だった。

頭の中で何かが切れた。

やっと気づいた。


私は彼を支えていたんじゃない。

養っていたんだ。


別れを切り出した。


でも、それすら簡単ではなかった。


泣かれた。

引き止められた。

説得された。

情に訴えられた。


別れるまで1年かかった。


そして最後の最後まで。

私はお金を払っていた。


今ならわかる。


彼は優しかった。

本当に優しかった。


でも。

優しいことと、

責任感があることは違う。


優しいことと、

自立していることも違う。


優しいことと、

人を幸せにできることも違う。


私はその違いを理解するのに、5年かかって、500万円かかった。

借金も残った。返済するために、副業もした。

あの時別れた自分を褒めたい。

だって、あのままだったら、私は今頃、彼の老後まで養っていたと思うから。


もし今、

「彼は優しいから」

という理由だけで関係を続けている人がいるなら。

一度だけ考えてみてほしい。


その人は、

あなたを支えてくれているだろうか。


それとも、

あなたが支え続けているだけだろうか。


次の記事では、

私が5年後にようやく気づいた

「ダメ男の危険サイン」

について書こうと思う。

当時の私が知っていたら、

きっともっと早く逃げられたサインだ。

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