揺るぎなく靭く時に苛烈に~ラザファムの心
*『本好きの下剋上』のネタバレ考察になりますので、未読の方はご注意ください*
今年の2月から『フェルディナンドの館にて』という番外編コミックが始まりました。https://to-corona-ex.com/comics/244043515510999
本編で登場する機会があまりなかった側仕えラザファムが管理する貴族街のフェルディナンドの館を舞台にしています。
名捧げ側近ユストクス、エックハルトの二人がフェルディナンドの還俗後再び近くで仕えられるようになったのに比べて、下級貴族ラザファムは管理を任された館から出ることがほぼありません。
館に3人が集まって交わされる会話や生活ぶりが描かれることで、今まで出てこなかった物語の裏側が描かれ、ラザファムというキャラクターの解像度もぐっと上がっています。
本当に今まで出てきていた彼に関する情報は少ないのです。
健気な美形キャラのビジュアルと言動にくらくらっときて、今まで出ていた情報を搔き集めたくなりTwitter(現X)で垂れ流していましたが、下記にまとめてみます。
◆嫌がらせでつけられた側仕え◆
ラザファムがフェルディナンドの側近に付けられた経緯は主に書籍版第4部8エックハルト視点SSに出ていました。
様々な手を使ってフェルディナンドを排除しようとし嫌がらせを仕掛けてきていたヴェローニカが故意に魔力量の少ない下級貴族のラザファムを貴族院時代に側近に付けたとあります。
年齢的に一つ年上のラザファム。文中の説明からいくと貴族院に入った当初に側仕え見習いとして付けられたと考えられます(貴族院時代の成人側近はユストクス/書籍版第4部3「貴族院へ戻る」ジルヴェスターのセリフその他より)。
貴族の側仕えは様々な魔術具を使ってお世話をせねばならないので、魔力量が少ないことで苦労することもあったのだろうと思います。ヴェローニカの思惑としては領主候補生の側近がそんなことも出来ないなんて、と主であるフェルディナンドに恥をかかせるというもの。
その上ヴェローニカの指示でフェルディナンドに嫌がらせをするようにも言われていた(ほかの側近はそれに従って主に嫌がらせをしてくる日常;)のだけど、その圧に屈せずラザファムは自分にはそんなことは出来ないと毅然としていました。フェルディナンドは指示に従って自分の身を守れと言ったにも関わらず。
そして警戒心の強いフェルディナンドの側近として信頼を勝ち取るために名を捧げました。低学年時代から一本筋の通ったラザファムが、権力者の思惑に逆らい周囲の嘲りにも屈せず、側仕えとしてフェルディナンドを守る側に立とうとした、その心映えが本当に素晴らしいです。
ラザファが側近に付けられた経緯等は書籍版4部8のエク兄視点SSにあります
— (📚好き専用)haneusagi (@haneusaamano) July 2, 2026
本編でラザファ情報少ないので貴重v https://t.co/B4gMHrWMzY pic.twitter.com/7sIrkRo7CB
◆貴族街の館の管理人に◆
同じく書籍版第4部8エックハルトSSによると、文官のユストクスと違い下級貴族で側仕えのラザファムには城で出来る仕事はないので、フェルディナンドが成人後北の離れを出た際賜った貴族街の館の管理を任されて以来ラザファムの仕事場はずっと館。
神殿入りしてしばらくは通いだったフェルディナンドは昼食も館に帰ってきて食べていたようですが(書籍版第4部9 フラン視点SS)
フランが側仕えになった頃には既に生活拠点が神殿に移って寝泊まりもしていたようなので当初の2年くらいが通いで、徐々に神殿の側仕え達を信用して寝食も任せ始めていたと思われます。
館に戻ってくることが徐々に減っていったのはラザファムにはどれだけ寂しいことだったことでしょう。
マインが青色巫女になった頃には政変後特別措置によって魔力が少ない青色神官達が次々と貴族街に戻り、神殿入りした当初は暇にしていたフェルディナンドは神官長に就き激務に追われるので神殿に生活拠点を移さざるを得なかったはず。
そうした変化に対して館にずっと居てあまり情報が入ってこないラザファムには神殿入りしたころの毒混入未遂事件が記憶に強く、今回の番外編では意識がその頃とさほど変わっていないことが分かる会話があり少し切ないです。
フェルが神殿で過ごす方が多くなった件)
— (📚好き専用)haneusagi (@haneusaamano) June 28, 2026
フランSS書籍版4部9↓
実は神殿入り当初は貴族街から通いで、なんと昼まで帰って食べてたフェルなのです
このSSでは毒の混入未遂事件とその後の変化(フランはまだマルグリット付き時期の為ロータルの言)等々
情報多いので未読の方是非書籍版もご検討くださいv pic.twitter.com/Ym4SGjY9bj
ラザファムには神殿の側仕え達にちょっと思うところもあっただろうなと思い、出てくる箇所を再読していたらやはりそういう心情を吐露した箇所もありました。
神殿組にちょっぴり思うところあったんじゃって考えてたらありましたよwやはり
— (📚好き専用)haneusagi (@haneusaamano) July 5, 2026
羨んでいたらしい
そうだよね、自分とこにあんまり帰ってきてくれなくなって神殿でお世話ちゃんとされてるのだもんね
最終巻の加筆分でラザファ出てくるとこ確認中です
館にて読んでから再読すると味わい深いですよ〜v https://t.co/49hEtOTDra pic.twitter.com/bZh2irzfdr
フェルディナンドがアーレンスバッハに行く時ローゼマインに図書館として自分の館を与えています。死地に臨むような覚悟でエーレンフェストを離れた彼にとって、領地にローゼマインを繋ぎとめるとともに、大事な物を預けた意識が強かったように思えます。
自分を守る力がないラザファムをどこに敵が潜んでいるか分からない城には居させられない&ローゼマインに館ごと預ける方が安全性も高い。
そのことは書籍版第5部12「エーレンフェストへ」で図書館の中身を移して館を返す際のフェルディナンドの言葉の中に出てきます 。
大事な物全て残して託していたと考えるとラザファムはフェルディナンドにとって間違いなく守るべき大切な存在の一人です。
譲り受けた図書館でローゼマインが過ごす時のラザファムとの会話の中では時かけの伏線になるものもありました。ラザファムの説明にあったと思われる言葉「フェルディナンドと中央から一緒に来た女性」「母親のように慕っていた」https://ncode.syosetu.com/n4830bu/532/)
この件については
https://note.com/amanoakimi/n/n92b8017beb77に纏めましたので宜しければ是非そちらもお読みくださいv
◆生きる意味そのもの◆
魔力量が少ない下級貴族のラザファムですが、ローゼマインの魔力圧縮法をフェルディナンドの側近枠で受けていて頑張って増やしているそうです(『ふぁんぶっく7Q&A』)
自分の身を守れない側仕えであるラザファムはアーレンスバッハには連れて行って貰えませんでした。
毒を受けた際に3人の名捧げ石は一度返されましたが、ラザファムはそのままにしていたという話もあります(『ふぁんぶっく7Q&A』)
「救出」の際にフェルディナンドの指示を実行するために名捧げをいったん解除したユストクスとエックハルト(後に再度捧げ直し)ですが、ラザファムは解除することもなく。
全く主の置かれた状況も分からず、待つしかなかったラザファムはフェルディナンドにもしものことがあればそののまま自分も一緒に逝くつもりだったのです。
情報が入らず心配で堪らなかった心情はSS25話「ラザファムとの会話」にもあります。
https://ncode.syosetu.com/n7835cj/25/
ここからは単なる推測になりますが、ヴェローニカの権力が全盛の時に指示に従わずフェルディナンドに名を捧げて側近になったラザファムは実家でも居場所がなくなっていた可能性があります。親の思惑に振り回され家での居場所を無くしたローデリヒのように。
同様にローゼマインに救われなければ周囲の貴族たちに側仕えの建前で愛妾として無碍に扱われ続けたグレーティアのように。
主こそが自らの生きる意味、居場所。
主の側に居て少しでも役に立つべく粛々と自分のすべき仕事をし、非力ながら主を守るために生きているような健気さ。
まだまだきな臭いアレキサンドリアでなくエーレンフェストで調合や引継ぎ、引っ越し作業を行うローゼマインとともに館で大量の課題(旧アーレンスバッハの毒に関する知識などを叩き込むための資料等)をフェルディナンドに与えられたラザファムはその意味をすぐに理解し、やる気を見せます。
主の伴侶になるローゼマインを守ることを期待されているのだと(書籍版第5部12「基本色の調合」)
この課題を終えローゼマインと共に新領地に向かうラザファムの晴れやかな気持ちを思うと笑みが零れますね。
◆穏やかさと苛烈さと◆
ローゼマインとの会話の中でごくごく普通に
「白の塔でなければ報復も可能だったのに」と残念そうに語る彼はいざとなれば自分の命を懸けてでもヴェローニカを排除したかったのでしょう(書籍版第5部12「就任式の衣装と図書館の閉鎖」)
執拗に主の命を狙い続け大切な物を奪い続け、貴族街に居られなくし、エックハルトの妻と子を毒殺した敵。
その苛烈さゆえに、ヴェローニカ失脚後の後始末には警戒されて駆り出されず、ローゼマインに関係する仕事を頼まれていたのが今回の番外編の時期のようです。
ユストクス、エックハルト、ラザファム3人は下手にヴェローニカには近づけられないと考えるフェルディナンドやカルステッドは正しいです(笑)
穏やかで真面目で誠実な人柄と、守りたい主のためには圧にも負けない心の靭さ、敵と見定めたものに向かっていく苛烈さ、そのアンビヴァレンツなまでの振り幅の大きい魅力的なキャラクターの在り様から今後も目が離せません。
ちなみにユストクスに関してはフェルディナンドの貴族院時代からの側仕えであるのは間違いないのですがhttps://x.com/haneusaamano/status/2073676133363843273?s=20
ユスがフェルの側近になったのは最初アーデルベルトの命令だったんでした(リヒャSS)
— (📚好き専用)haneusagi (@haneusaamano) July 5, 2026
ゲオと同年で異性のユスはゲオの側近になるなら文官コースと言われていたのに故意に側仕えコースを選びゲオの側近になるのを回避
フェル子供部屋時代は命令で付いて、フェルの優秀さを知り名捧げで側近って感じかな pic.twitter.com/j251D7nlGD
エックハルトは貴族院時代にフェルディナンドの優秀さに心酔して名捧げを行い側近になったとあります。いつからだったかは不明。
同じようにヴェローニカに迫害されていたエルヴィーラが守ろうと動いていたともあるし(書籍版第4部3「お母様とハルデンツェルの印刷業」)、フェルディナンドの貴族としての母親になるはずだったイルムヒルデ様の元側近(『ふぁんぶっく10Q&A』)なので母親の後押しと領主の命を受けて護衛騎士に任じられる可能性もあるけども、一つ年下なので低学年の騎士見習い時代だと力不足。
どちらかというとエックハルト視点で語られている通り
まずは本人がフェルディナンドの優秀さに心酔→ユストクスが問題なしと判断→それでも警戒するフェルディナンドの為に名捧げさせて側近入り
という感じなんじゃないかなと思ったり。
いずれにせよ、最初の内はユストクス以外付けられた護衛騎士も信頼できるものがほぼ居ないような子供部屋&貴族院時代を過ごしていたと思われます。ディッターの魔王と呼ばれた時代、自陣の貴族から背後を襲われかねないので信頼できる少数を連れて情報戦含めてかき回していたとあったし、
コミカライズ第3部9のブリギッテ視点SSに
「挨拶の途中でいきなりシュタープを出す者がいないか注意する必要があるんですよね」とブリギッテが言うと
「あなたの知ってる子供部屋はフェルディナンド様しか候補生が居ない時期」(大意)とリヒャルダが答える場面がありました。
相当危険な状況だったようです。
唐突ですが)
— (📚好き専用)haneusagi (@haneusaamano) July 1, 2026
コミカライズ3部9のブリギッテ視点SSに
「挨拶の途中でいきなりシュタープを出す者がいないか注意する必要があるんですよね」
と言うブリギッテのセリフに
「あなたの知ってる子供部屋はフェル様しか候補生が居ない時期」(大意)というフェル子供部屋時代の稀少な描写があるんですよね
フェルディナンドの子供時代貴族院時代などは情報がさらに少なく明かされていくとしたら続編になるでしょう。
それでもフェルディナンドにとって三人がどれだけ心強い存在なのかとは改めて思います。
*いつもながら無駄に長い文章をお読みくださってありがとうございます。後々の自分のためにも記載箇所の出典をなるべく入れ込んでおこうと思って入れておきましたので二次創作などの資料的に役立てていただけると幸いです

