薬剤学が、化粧品を読み解く武器になるとは思っていなかった
化粧品の話になると、どうしても成分に注目しがちです。
しかし、その成分がどのように配合され、どのように皮膚へ届くのかという視点も大切です。
今日の授業をしながら、そんなことを改めて考えました。
医薬品安全性学
私は、大学で医薬品安全性学という科目を受け持っています。
この科目は、わかりやすくいうと医療安全と医薬品そのものの安全性を学ぶ授業です。
また、この医薬品そのものの安全性については、薬剤学と衛生学が深く関係していると思っています。
今日はこの授業の日でした。
授業しながら思ったことを整理してみます。
薬剤学
私は、薬剤学は製剤学と薬物動態学を大きな柱とする学問だと考えています。
製剤学は「どうやって薬を形にするか」、薬物動態学は「薬が体の中でどう動くか」を扱います。
製剤学は、薬をどんな形(錠剤、注射、軟膏など)にするか、そしてその形にすることで効き目をどうコントロールするかを研究する学問です。
これは、化粧品においても乳液にするのがいいか、クリームにするのがいいかなどを考えることに関わってきます。
薬物動態学は、どういう成分が、どのような状態で吸収されやすくなるかについての学問です。
これは、化粧品の中のどの成分が、どんな条件で皮膚に届きうるかを考えることにつながります。
大学で薬剤学を学んだ
医学部、歯学部、薬学部には、コアカリキュラムという考え方があります。
コアカリキュラムとは、学部ごとに国が定めた「最低限これは学ばせなさい」という学習内容の基準です。
この考え方は、医学部、歯学部、薬学部の教育に特徴的なものと理解しています。
このコアカリキュラムにより、薬学部では全国どの大学でも薬剤学を必ず学ぶことになっています。
ただし、コアカリキュラムは私の大学時代にはありませんでした。
なぜなら、当時はまだ現在のような医療系学部としての教育体制ではなかったからです。
薬剤学に近い内容は、他の理系学部でも学べます。
しかし、製剤学や薬物動態学を体系的に学ぶ機会は、やはり薬学部が中心ではないかと思います。
物質は簡単には吸収されない
今日の授業では、物質が細胞の中に入る仕組みを説明していました。
話しながら、「これって化粧品の話にもつながるな」と思いました。
化粧品は成分ばかりが注目されます。
しかし、どんなに良い成分でも、目的の場所に届かなければ意味がありません。
そう考えると、薬剤学で学んだことが意外なところで役立っているように感じました。
そもそも、薬などの物質は単純に吸収されるものではありません。
物質が体内に取り込まれるには、さまざまな仕組みが関わっています。
特に皮膚というのは、何でも通してしまったら困る器官です。
だからこそ、複雑なバリア機能が備わっているといえます。
化粧品の「浸透」をうたう広告は多いです。
ただ、その「浸透」が何を意味しているのかは、案外あいまいなまま語られていることが多いように感じます。
薬剤学からの化粧品の理解
この年になるまで、薬剤学が化粧品を理解するための有効な視点になりうるとは、正直あまり意識していませんでした。
美容に興味を持ったことで、学生時代に学んだことが意外な形でつながったように感じています。
化粧品を語る人は多いです。
ただ、その背景にどんな学問があり、どう考えているかを意識している人は少ないのかもしれません。
化粧品の広告を見るときも、成分名だけではなく「どういう形で配合されているのか」「本当に皮膚に届くのか」という視点を持つと、見え方が少し変わるかもしれません。
私は開発者ではありません。
ただ、薬剤学という視点から化粧品を考えることはできそうな気がしています。
まとめ
・薬剤学は薬の形や体内での動きを考える学問である
・その視点は化粧品の設計や浸透性を考える際にも役立つ
・どんなに良い成分でも目的の場所に届かなければ意味がない
・化粧品は成分だけでなく配合や剤形にも注目する必要がある
・成分だけでなく、剤形や配合設計にも目を向けると化粧品の見方が変わる
