【漫画原作】アクトライズ【第4話】
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東和高校被服室にて。ただならぬ沈黙が続いている。
むげん「…本当にやるというのか成宮」
みらい「ええ…やると決めたらとことんやりますよ。私は」
ごくり。思わず唾を飲む。両者視線を譲らない。みらいが手にしているのは…
みらい「ささっ!先輩はぞうきんを持ってあの机から!」
むげん「この広い教室を二人で掃除するのはかなり無理があると思うんだがね?!」
みらい「元はというとこのままにしていたあなたが悪いんですよ!」
ぎゃあぎゃあ言う先輩を横目にエプロンとバンダナを締め、右手にハタキ、左手に箒を握ぎる。そう!今日は何としてでもこのホコリ被った教室をピカピカにしてみせるのだ!完璧を目指すのであればまずは身の回りを正すことから。…もしかしたらあの映像データも見つかるかもしれないし。
むげん「そもそもこの教室は授業では使われてない言わば空き部屋なんだからそこまで綺麗にしなくてもなぁ…ブツブツ」
みらい「大勢の生徒が使わなくても私達が使うんですよ。きちんと綺麗にしてください」
むげんはちぇー、などと悪態を着いている。いやいや言いながらも結局は掃除しているではないか。ならなぜここまで放置していたのか問いただしたいほど。
…にしてもこんな広い教室で毎日台本を作っていたのか。たった1人で。来るか分からない演者を待ちながら。
むげん「成宮!他人に任せておいて手が止まってるぞ」
みらい「ちょっと考え事してたんですよ!これからどう使おうかなって」
ふと昨日の事がよぎる。新しい何かが開かれた感覚。手の中に溢れる情景。一つ一つが眩しくて掴もうとすれば溶けてしまう。そんな不思議な感覚にまた心臓が高鳴る。あの輝きを掴む感触がまだ体から抜けきれていない。思わず手をグーパーグーパーしてしまう。大丈夫。力はいつも通り入るようだ。
それにしても全く、少しくらい物思いにふけってもいいじゃないか。とトルソーのホコリを払う。こういうものも衣装作成時に使う道具の一種なんだろうな。見渡せば所々部で使えそうなものが散らばっている。布生地。木の板。ペンキ缶。まぁ全てホコリを被っているが。
そして前から気になっているものがある。あのダンボールの山だ。ざっと見て5、6箱くらいある。このまま掃除をするのにも邪魔になるし足元にあるものから少し避けてみ…
みらい「お…重っ?!!」
思わず尻もちを着きそうになったが何とか耐えた。反動で上に覆いかぶさってたホコリがパラパラと舞う。なんだ。一体何が入っているんだ。何を入れたらこんなにも重くなるんだ?好奇心のあまり恐る恐る開けてみる。
みらい「これって…」
むげん「げほっごほっ。もっと丁寧にやりたまえっ…あぁこれか」
みらい「もしかして全部…台本?」
蓋を開けると中は全て大学ノートで埋め尽くされていた。それも昨日と同じ銘柄のノート。思わず1冊手に取る。
みらい「わぁ…」
そこには見覚えのある文字で別の物語が繰り広げられていた。今度は少年が周りの人々に助けられながら己の過ちに嘆き、逃げようとした足を引きずりながらも少しずつ、少しずつ前進する物語。周囲との環境や過去、どうしようも無い閉塞感も相まって少年の心情が波打つように描かれている。…ほんとこの人の物語はとても心を揺さぶられる。出てくる登場人物一人一人がその場所で生きている。この人の物語に少しでも多く、新しい物語に触れたいと心が感化される。
みらい「もしかしてこっちも…」
むげん「おい成宮それ以上はバランス崩…」
みらい「おわっ?!」
好奇心に耐えきれずダンボールの山に手を伸ばしたのもつかの間体制を崩してしまいがらがら、っと大きな音を上げて転げ落ちてしまう。幸い怪我はないらしい。…先輩が下敷きになってるけど。
むげん「ううう…」
みらい「いったぁ…ってこれは学校新聞…?」
雪崩落ちたダンボールの中から飛び出たのは校内新聞と書かれた数多の紙束だった。秋にある体育祭。冬に行われるマラソン大会。数々の学校行事が一面を飾っている。これなんて6月に行われた新入生歓迎会なんて書いてあ…ん…?新入生歓迎会って何…?
???「なつかしー。こんなの作ったな」
聞き覚えのない女性の声がする。顔を上げる。そこには赤いフードを被った金髪ロングの女子生徒が少し不機嫌そうな顔で佇んでいた。不機嫌そうというか気だるげ…?
みらい「あなたは…誰…?」
女子生徒はこちらに気がつくとその身を前に乗り出しあるものを見せる。
???「あぁ…君のことは把握済みだよ成宮くん。(手には小躍りの様子のスマホの画面が映し出されている)」
みらい「なんで誰もかれもその映像持っているんですか?!!」
しかもよりによってなぜそこをピックアップする!それは一刻も早く消してしまいたいものなのだが!…というより複製されていては全て回収するのはとても困難になっているのでは…?
悶々と悩んでいると後ろの方から威勢の良い声が聞こえる。
むげん「おぉ!!ここに顔を出すだなんて久々ではないか!!真山!」
みらい「…先輩お知り合いの方なんですか?」
むげん「知り合いも何もうちの部員だよ彼女は」
みらい「え?!」
あかり「まぁ、今は広報委員一筋ってところだけどね。改めましてこんにちは、成宮くん。ワタシは真山あかり。2年。よろしく。」
みらい「よ、よろしくお願いします。」
真山あかりさん。彼女が例の幽霊部員…?
むげん「にしてもいつぶりか?君が来るのは。もしやまた一緒に活動したく…」
あかり「あー…そうじゃなくて2人に許可取ろうかと思って」
きょ…許可?私この人に何かしたっけ…?何も思い当たる節がないぞ…?彼女は私を尻目に再びスマホの画面を向けてくる。
あかり「これ、うち(広報委員)で使っていい?」
みらい「な、何これ?!!いつの間に?!!」
そこにはむげんが私をだき抱えている場面があった。それもお姫様抱っこで。彼の神妙そうな顔も相まってなかなかにカメラ映りがいい。…じゃなくて!
むげん「さすがの情報通。掴むの早いな。」
みらい「先輩の変態!!私の知らないところでこんなことして!」
むげん「変態って…知らないも何も昨日成宮倒れただろう?いくら揺すっても起きそうになかったから保健室までこの僕が運んだのだよ。」
なるほど。それじゃあ仕方がないですn…。良くないよ!!またひとつやるべきことが増えてしまったではないか!!あーもうなんでこうも簡単にプラン外のことがどんどん増えるの…!
あかり「あのカメラのおかげでいい瞬間が沢山撮れるから君には感謝してるよ、進藤」
みらい「先輩…ま、まさかこの人も…」
むげん「あぁそうだ。そもそもこの学校に監視カメラが設置されてることを知っているのは僕と彼女くらいだしな。」
オーマイガー。いや、なんてこった。もしや真山先輩って思っていたよりもとんでもない人なのでは…?それにこの調子だとかなり乱用してるのでは?
私たちを気にすることなく淡々とあかりは言葉を呟く。
あかり「ワタシは最高の一瞬を捉えたい。彩度、明度、光度。その全てが1番良い時を形にしたい。そのためなら手段は選ばない」
小柄ながらに発せられるその言葉はとても鋭利で空気をつんざく。
あかり「それに2年きっての奇人イケメンと新入生1の才女。とってもいいスクープだと思わない?」
彼女はニヤリと冷たい笑みを浮かべる。ぐうの音もでない。正直私が一般生徒だったら迷わず食いついてしまう話題だ。でも、これ以上話題が増えてしまったらそれこそ今までの事態の収集がつかなくなってしまう。…考えろ!考えるんだ成宮みらい!今1番最悪な状態を免れるためにはどうすればいいか_
むげん「真山、交渉しないか?」
むげんが口にしたその言葉は教室中に広がる。その瞬間彼が私にとっての救世主に見えた。さすが先輩…!やる時はちゃんとやる男なんですね…!私、見直しました…!
むげん「何もしないで使われるのは僕も不服だ。ここはひと勝負といこうではないか、真山」
あかり「なあにそれ。とっても面白そう」
空気が変わる。緊張感が走る。2人の目つきも変わる。今、ここで何かが始まろうとしている。思わず固唾を飲む。
むげん「もし君が満足出来なかったらそれを使ってくれて構わない」
みらい「ちょっ?!せんぱ!私の意見は」
私の言葉を遮り彼は続ける。
むげん「だが、もし君が満足したのであれば、彼女を照らす光となってくれ」
沈黙が訪れる。場の重たさは相変わらずだ。しかしその言葉で何かが変わったことは分かった。あかりは態度を変えずのらりくらりとしている。
あかり「ふーん…つまりはワタシを部に引き戻したいわけ?そんな瞬間見せてくれるの?またあの時みたいにならない?」
むげん「ああ、もちろんだとも。君の力はとても素晴らしい。僕の想像する舞台に必要不可欠だ。」
両者揺るがない目。負けられない戦いが今始まろうとしている…!
真山先輩はやれやれと1度目線を外す。気だるげなところは変わらないが再度見上げたその目つきは何かを見定めるように鋭かった。
あかり「いいよ、ちょっと暇してたし。んで?その内容ってなに?」
むげん「今から成宮が即興をする。それを見て決めてくれたまえ」
みらい「え?!!」
緊張感の中不意に言われたものだから思わず体がビクっと反応してしまう。前言撤回!!やっぱりただの演劇バカだ!それに即興ってあれだよね?いきなりお題出されて演じるやつ。もしかしてまた突拍子もないこと言われてる…?!!
その言葉を聞いた瞬間あかりは今までの態度からは見えなかった笑い声を出す。
あかり「あはっ!そんなに気に入ったんだその子。いいよやろうよ」
むげん「君なら乗ってくれると思っていたよ。ひと目見たら分かる。彼女の才能がどれだけ素晴らしいか」
あかり「ふーん。あの進藤がそこまで言うんだ。それはとても見ものだろうね」
向かい合っていたふたりは同時に私の方に体を向ける。これは戦いの合図の音だ。
むげん・あかり「「さあ、成宮(くん)。演じるんだ」」
それにしてもなんでこんなに巻き込まれるの私…?!!
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