【Axon(AXON) Q1 FY2026】公共安全AI OSへ進むAXONは、PER50倍を正当化できるのか?
Axon Enterprise(AXON)のQ1 FY2026決算はかなり強いというのが第一印象だ。
売上高は$807M、前年同期比+34%。
Software & Servicesは$355M、前年同期比+35%。
Connected Devicesは$453M、前年同期比+33%。
AI Era PlanおよびDraft One、Axon Assistantなどのstandalone productsを含むAI Era Plan product revenueは前年同期比+700%超。
Counter-drone、つまり対ドローン製品の売上も前年同期比+300%超。
そして通年売上ガイダンスは、従来の+27〜30%成長から+30〜32%成長へ上方修正された。
これだけ見ると、文句なしの好決算に見える。
ただし、今回のAXONを「AI製品が伸びた好決算」で終わらせるのではなく、考えたいのは、AXONがTASER会社でも、ボディカメラ会社でも、単なる警察向けSaaS企業でもなく、公共安全AI OSへ進み始めていること。そして、その企業価値の構造はかなり魅力的に見える一方で、PER50倍級のバリュエーションを正当化できる利益構造なのかという点だ。
私は以前、AXONをかなりモートの深い会社だと思い、コア銘柄候補として位置づけたことがある。
しかし、バリュエーションで見送った。
その代わりに、フィジカルAIの文脈ではSamsara(IOT)を買った。
今回の決算は、その判断をもう一度見直すにはちょうどよい材料だ。
AXONを投資対象として見るなら、モートの深さだけでは足りない。
利益の面取り、FCF、SBC、ハードウェアミックス、Dedroneの地政学的な意味、そしてIOTのようなフィジカルAI銘柄との違いまで分解しないと投資判断として腹落ちできない。
Q2’25 → Q3’25 → Q4’25 → Q1’26
・売上高:$668.5M → $710.6M → $796.7M → $807.3M
Q1’26はQoQ +1.3%、YoY +33.7%。Q2’25はYoY +32.8%、Q3’25はYoY +30.6%、Q4’25はYoY +38.5%だったので、AXONは4四半期連続で30%超成長を維持している。しかも会社は、Q1’26で9四半期連続の30%超成長と説明している。これは大型化しつつある企業としてかなり強い。
・粗利率:60.4% → 60.1% → 57.9% → 59.1%
粗利率は高水準ではあるが、純粋SaaSのような80%前後ではない。Q4’25で57.9%まで低下し、Q1’26は59.1%へ回復した。ただし前年同期比では150bp低下している。会社は、関税、Dedroneミックス上昇、導入関連のProfessional Servicesコストを理由として説明している。ここはAXONを見るうえで重要だと思う。モートはSaaS的に見えるが、利益構造はまだハードウェアの重さを含んでいる。
・GAAP営業利益:-$1.0M → -$2.1M → -$50.1M → $29.2M
・GAAP営業利益率:-0.2% → -0.3% → -6.3% → 3.6%
Q1’26は営業黒字に戻った。ただし、営業利益率3.6%はまだ低い。AXONはAdjusted EBITDAではかなり強く見えるが、GAAP営業利益で見ると、R&D、SG&A、SBCの重さが残っている。ここを見ずに「高成長・高収益企業」とだけ見るのは危険だと思う。
・Adjusted EBITDA:$171.6M → $177.0M → $206.3M → $201.6M
・Adjusted EBITDA margin:25.7% → 24.9% → 25.9% → 25.0%
Adjusted EBITDA marginは25%前後で安定している。Q1’26も25.0%。会社はFY2026通年でもAdjusted EBITDA margin 25.5%を見込んでいる。売上成長30%超を維持しながら、Adjusted EBITDA margin 25%台を出している点はかなり強い。
・GAAP EPS:$0.44 → -$0.03 → $0.03 → $2.05
・non-GAAP EPS:$2.18 → $1.24 → $2.23 → $1.61
Q1’26のGAAP EPS $2.05は強く見えるが、Other incomeの影響が大きい。10-QではQ1’26のOther income, netが$189Mあり、GAAP純利益$169Mを押し上げている。したがって、AXONの営業実力を見るなら、GAAP EPSだけではなく、non-GAAP EPS、Adjusted EBITDA、FCFを合わせて見るべきだと思う。
・営業CF:-$91.7M → $60.0M → $217.2M → -$31.5M
・営業CFマージン:-13.7% → 8.4% → 27.3% → -3.9%
Q1’26の営業CFはマイナス。ここは見た目としては弱い。会社は、急成長しているDedrone事業を支える在庫投資と、金利費用、Q1特有のボーナス・コミッション支払いを理由として説明している。したがって単純に「キャッシュ創出力が悪化した」とは見ない。ただし、PER50倍の会社を見るなら、FCFへの転換は必ず確認する必要がある。
・CapEx:$23.0M → $26.6M → $61.8M → $23.1M
CapEx自体はAIデータセンター投資とは違い、売上比で極端に重くない。AXONのキャッシュ圧迫要因は、現時点ではCapExよりも在庫投資、買収、SBC、運転資本の動きが大きい。
・FCF:-$114.7M → $33.4M → $155.4M → -$54.6M
・FCFマージン:-17.2% → 4.7% → 19.5% → -6.8%
ここが今回一番冷静に見るべき弱点。会社は通年で約$450MのFCFを見込んでいる。FY2025売上高$2.780Bに、FY2026売上ガイダンス中央値の+31%を掛けると、FY2026売上中央値は概算で$3.64B。FCF $450Mなら、FCF marginは約12%台になる。悪くはない。ただ、PER50倍級を正当化するには、将来的に15〜20%台のFCF marginへ伸びていく絵がほしい。
・SBC:$139.2M → $146.2M → $208.6M → $134.7M
・SBC / 売上比率:20.8% → 20.6% → 26.2% → 16.7%
Q1’26はSBC比率が16.7%まで下がった。これは改善。ただし、FY2026のSBCガイダンスは$590M〜$620Mで、絶対額としてはまだかなり大きい。会社は、平均希薄化を年2.5%未満に抑える方針で、SBCドル額は今後数年おおむね横ばいになり、売上成長により比率が下がると説明している。ここは次回以降も必ず見るべきだ。
なお、ここでのSBCはキャッシュフロー計算書上のStock-based compensationベースで見ている。non-GAAP net income調整項目としてのSBCとは一部差があるが、株主希薄化と実質的なキャッシュ創出力を見るため、ここでは継続比較しやすいCF表ベースを採用している。
・non-GAAP EPS計算に使った希薄化後株式数:82.1M → 83.0M → 82.8M → 82.5M
株式数は大きく増えているわけではないが、SBCの絶対額は重い。AXONのような高PER企業では、non-GAAP利益だけを見ると、株主に残る実質的な利益を過大評価しやすい。
・現金・現金同等物:$615.5M → $1,423.9M → $1,201.1M → $458.9M
現金はQ1’26で大きく減った。なお、会社が流動性として説明しているcash, cash equivalents and short-term investmentsはQ1末で$731M。ここで並べた$458.9Mは、10-Q上のCash and cash equivalentsのみである。3月末時点でSenior Notesは元本$1.8B、ネットデットは約$1.0B。Carbyne買収や戦略投資もあり、財務余力はあるが、完全なネットキャッシュ企業として見る局面ではない。
・ARR:$1.183B → $1.252B → $1.347B → $1.493B
・ARR成長率:YoY +39% → +42% → +35% → +35%
ARRは非常に強い。Q1’26はQoQでも約+10.8%伸びた。会社はARR $1.5B、YoY +35%と説明し、premium software offeringsとcloud productsの新規ユーザーが成長を支えているとしている。
・NRR:124% → 124% → 125% → 125%
NRR、つまり既存顧客からの売上継続・拡大率は125%。これはかなり強い。既存顧客が解約せず、むしろ追加機能や上位プランを買っていることを示す。AXONのモートを見るうえでは、売上成長率以上に重要な数字だと思う。
・Future Contracted Bookings:$10.7B → $11.4B → $14.4B → $14.3B
Q1’26はQoQではやや低下したが、YoYでは+44%。会社は、この残高の20〜25%を今後12か月で履行し、残りは概ね今後10年で履行すると説明している。これは、長期契約による売上視認性の高さを示す一方で、実際の売上認識には時間がかかるということでもある。
・Connected Devices売上:$376.4M → $405.4M → $454.2M → $452.8M
売上構成比:56.3% → 57.1% → 57.0% → 56.1%
・Software & Services売上:$292.2M → $305.2M → $342.5M → $354.5M
売上構成比:43.7% → 42.9% → 43.0% → 43.9%
Software & Servicesの比率は4割強。ここがAXONのSaaS的な部分だ。Q1’26のSoftware & Services gross marginは72.4%、adjusted gross marginは75.8%。さらにSoftware-only gross marginは80%超と説明されている。
一方で、Connected Devicesは売上の56%を占める。Q1’26のConnected Devices gross marginは48.7%、adjusted gross marginは50.4%。つまり、AXONはSoftware-onlyでは非常に高粗利だが、全社ではハードウェアの重さをかなり抱えている。
Connected Devicesの内訳
・TASER売上:$216.2M → $238.0M → $264.2M → $232.9M
売上構成比:32.3% → 33.5% → 33.2% → 28.8%
・Personal Sensors売上:$92.8M → $106.7M → $109.1M → $108.8M
売上構成比:13.9% → 15.0% → 13.7% → 13.5%
・Platform Solutions売上:$67.3M → $60.8M → $80.9M → $111.2M
売上構成比:10.1% → 8.6% → 10.2% → 13.8%
今回一番重要なのは、Platform Solutionsの伸びだ。Q1’26は$111Mで、YoY +95%。会社は、その主因をDedroneとしており、Dedrone revenueはYoY +300%超だったと説明している。
つまり、AXONの売上構成はこう変わっている。
TASERとBody Camの会社から、
Software & Servicesを重ね、
FususやDedroneを含むPlatform Solutionsが伸び、
AI Era PlanがARRとNRRを押し上げる会社へ移っている。
これはかなり魅力的だ。
ただし、Platform Solutions、特にDedroneは、短期的にはConnected Devicesの粗利率を押し下げる可能性がある。会社も、Dedroneを含むPlatform Solutionsのミックス上昇がConnected Devices gross marginの前年同期比低下要因だと説明している。一方で、Dedroneにはsoftware componentもあり、スケールすれば改善余地があるとも見てよい。
ここが今回の決算で一番メスを入れるべき点だと思う。
成長率は強い。
しかし、利益の面取りはSaaSより重い。
■ AXONは公共安全AI OSへ進んでいる
今回の決算も含めて、経営陣が以前から一貫して伝えてきたことは、AXONはもう個別製品の会社ではないということだと思う。
CEOは、技術はもはや線形でも指数関数的でもなく、複数の次元で同時に進化していると説明した。そして、AXONのエコシステムはこの時代のために作られていると述べた。重要なのは、ハードウェアとソフトウェアを別々に見るのではなく、センサー、リアルタイム運用、AI、ドローン、Connected Devicesを統合したシステムとして見ることだ。
ここは前回の私が整理した「フィジカルソケット戦略」とつながる。
生成AIの機能そのものはコモディティ化する。
翻訳、要約、レポート作成、検索、チャット。
これらはフロンティアモデルの進化で、多くの企業が実装できる。
しかし、AXONの強みはAIモデルそのものではない。
現場で毎日使われるTASER、Body Cam、Fleet、Outpost、Dedrone、Evidence、FususにAIを埋め込めることにある。
AIがコモディティ化するほど、そのAIを現場に入れる入口、つまりフィジカルソケットの価値は上がる。
今回、そのフィジカルソケットはさらに進化したと思う。
AXONは、単に現場にデバイスを置く会社ではなく、現場のデータをリアルタイムで理解し、初動、通報、証拠、報告、司法までつなぐ公共安全AI OSへ進み始めている。
AXONは自社を「Safety Sensor Network」「Fully Connected」「Supercharged with AI」と整理している。つまり、センサー網、接続されたEvidence、AIによる価値解放を一体で見せている。
■ AI Era Planは、まだ柱ではない。ただしARRに効き始めた
AI product revenueはYoY +700%超。
これは凄い。
ただし、ここで浮かれてはいけない。会社は同時に、AI revenueはまだsmall revenue baseだと説明している。つまり、AIが全社売上の大黒柱になったとまでは言えない。
見るべきは、AI revenue単体の成長率ではない。
AI Era Planが、ARR、NRR、契約単価、更新時のアップセルにどう効くかだ。
Q1’26のARRは$1.493B、YoY +35%。
NRRは125%。
AI bookingsはYoY +140%。
さらに経営陣は、大規模な国内法執行機関のほぼすべてが、購入時にAIを組み込んでいると説明している。
これはかなり重要だと思う。
AIが単なるオプション機能ではなく、顧客の将来の技術スタックに入り始めている。AXONのAIは、普通の生成AIチャットではない。CJIS準拠の環境で、公共安全データに接続し、レポート作成、翻訳、通話・映像・証拠・ポリシー確認を業務フローに組み込むものだ。
ここでSaaSの再定義が起きている。
従来のSaaSは、ユーザーが画面を開いて操作することで価値が生まれた。
AXONのAI Era Planは、現場のセンサー、証拠、911、映像、レポート、Fususと接続し、業務そのものに入り込む。
つまり、席数課金のSaaSというより、公共安全業務のAI実行レイヤーに近い。
ただし、まだ未確認の点もある。
AI Era Plan単体の売上額、粗利率、導入率、解約率、契約単価への寄与は未開示。だから、今後見るべきはAI revenueの前年比成長率ではなく、ARRとNRRがどれだけ強く維持されるかだ。
■ Dedroneは空域ソケットになる可能性がある
今回、もう一つ重要なのがDedroneだ。
Dedrone revenueはYoY +300%超。
BookingsはYoY +500%。
経営陣は、Super BowlやKentucky Derbyのようなイベントに加え、World Cup、国際案件、企業、データセンター、重要インフラ防衛にも需要が広がっていると説明している。
これは単なる「対ドローン製品が伸びた」ではない。
私は、DedroneはAXONにとって空域ソケットだと思う。
Body Camが人間の視点を押さえるソケットなら、Dedroneは空域を押さえるソケット。
公共安全の現場は、もはや地上だけでは完結しない。
ドローンは、警備、犯罪、軍事、イベント、重要インフラ、データセンター防衛に絡む。地政学リスクが高まるほど、空域の状況把握と防衛は重要になる。
ここにAXONが入る意味は大きい。
特に面白いのは、DedroneがU.S. public safetyだけでなく、international、enterprise、federalにも刺さる点だ。経営陣も、Dedroneは4つすべての顧客セグメントに関連すると説明している。
これは、AXONのTAMを広げるだけではない。Dedroneを入口に、Fusus、Evidence、Body Mini、Outpost、AI Era Planへ広げるland and expandの起点にもなる。
さらに、Dedrone C2は単なる検知ハードではなく、sensor fusion、mitigation management、third-party sensors and effectorsとの統合を含むプラットフォームとして説明されている。AXONは、Fususと同じようにDedroneも柔軟でオープンなプラットフォームとして設計していると説明している。
ここはかなり重要だ。
Dedroneが単なるハードウェア販売なら、利益構造は重い。
しかし、sensor fusion、空域監視、mitigation管理、third-party integrationを束ねる空域OSになれるなら、AXONのモートは一段深くなると読む。
■ DJI依存と地政学リスクが、Dedroneの価値を高める
ここで、もう一つ見ておきたいのがDJIの存在だ。
現状、ドローン市場では中国DJIの存在感が非常に大きい。DJIは2024年時点でグローバルドローン市場の約70%を占めると推定している。
これは技術力・価格競争力としては強い。
しかし、西側諸国の公共安全、防衛、重要インフラ、データセンター保護という文脈では、逆にリスクにもなる。
米国では、FCCが2025年12月に、外国製UAS、つまり無人航空機システムと重要部品をCovered Listに追加した。FCCは、外国製ドローンや重要部品について、監視、データ流出、重要インフラへの脅威などの国家安全保障リスクを挙げている。
つまり、ドローンは単なる便利な空撮デバイスではない。
センサーであり、通信機器であり、場合によっては兵器にもなる。
ここでAXONのDedroneは、単なるcounter-drone製品ではなくなる。
西側の公共安全・重要インフラ・大規模イベントにおいて、信頼できる空域管理・対ドローン基盤としての意味を持つ。
さらに欧州でも、European Commissionは2026年2月にDrone and Counter-drone Security Action Planを公表し、counter-drone systemsの共同調達、AI-powered command and control systems、EU Trusted Drone labelなどを打ち出している。
これは、AXONにとってかなり重要な追い風だと思う。
Dedroneの成長は、単なるイベント警備や一時的なドローンブームではない。
DJIのような中国系ドローンへの依存、地政学、重要インフラ防衛、大規模イベント警備、データセンター保護が重なることで、空域管理そのものが公共安全インフラになり始めている。
だから私は、Dedroneを「伸びているハードウェア事業」とだけ見ない。
AXONが公共安全AI OSへ進むうえで、Dedroneは空域ソケットになり得る。
ただし、ここでも利益面の確認は必要だ。
Dedroneは地政学テーマとしては強い。
公共安全AI OSの空域ソケットとしても強い。
しかし、PER50倍を正当化するには、Dedroneが粗利率を壊さず、ソフトウェア収益を伴う空域OSへ進む必要がある。
■ Fususは民間市場のトロイの木馬かもしれない
AXONの民間展開を見るうえでは、Fususがかなり重要だと思う。
今回、会社は4月に大手通信会社との$40M案件をクローズしたと説明した。導入の中心はFusus、Axon Body Mini、Axon Outpost。そしてAxon Visionもenterprise向けに展開する予定だ。
Fususの強さは、既存のCCTVや映像インフラをAXONのリアルタイム運用基盤に接続できることだ。
企業や都市は、すでに大量の監視カメラを持っている。
しかし、その多くはシステムごとに分断されている。
Fususはそれらを一つの画面、一つの運用体験へ統合する。
これはかなり強い。
TASERやBody Camは、AXONが自社デバイスを現場に置くフィジカルソケット。
一方でFususは、すでに他者が設置したカメラや映像網をAXONのエコシステムに変えるソフトウェアソケットだ。
AXONが民間市場でいきなりTASERを売るのは難しいかもしれない。
しかし、企業のセキュリティ部門にFususを入れ、そこにBody Mini、Outpost、Dedrone、Axon Visionを重ねることはできる。
つまりFususは、民間市場のトロイの木馬になり得る。
ここもAXONの魅力だ。
■ 利益の面取りはSaaS企業と比べてどうなのか
ここからが本題だ。
AXONのストーリーはかなり魅力的だと思う。
公共安全AI OS。
AI Era Plan。
Dedrone。
Fusus。
911。
地政学。
民間展開。
長期契約。
NRR 125%。
しかし、利益構造を見ると、純粋SaaSとは違う。
Q1’26のSoftware & Services gross marginは72.4%。adjusted gross marginは75.8%。Software-only gross marginは80%超。ここはSaaS的に強い。
一方で、Connected Devices gross marginは48.7%。adjusted gross marginは50.4%。売上構成比は56%。つまり、全社の半分以上はハードウェアを含む事業だ。
ここがAXONの難しさだと思う。
ハードウェアがあるからモートは深い。
現場デバイスがあるからAIを実装できる。
EvidenceとFususとBody CamとTASERがつながるから、スイッチングコストが高い。
公共安全という失敗が許されない領域だから、信頼もモートになる。
しかし同時に、ハードウェアがあるから粗利率は純粋SaaSほど高くない。
在庫が必要になる。
関税やメモリ価格の影響を受ける。
Dedroneのような急成長ハードウェアが伸びると、短期的に粗利率を押し下げる。
買収統合も必要になる。
つまりAXONは、SaaS企業のように見ると利益面で重い。
しかし、ハードウェア企業として見るとモートが深すぎる。
ここが面白く魅力の本質だと思う。
私はAXONを、高粗利SaaSと現場ロックイン型ハードウェアのハイブリッド企業として見るべきだと思う。
■ ポートフォリオ導入コア銘柄徹底比較: AXON vs IOT
私は以前、AXONをコア候補として見ながら、実際にはIOTを買った。
今回あらためて考えても、この判断にはかなり合理性があると思う。
理由は、AXONのモートを否定したからではない。
むしろ逆だ。
AXONのモートはかなり深い。
公共安全、証拠管理、911、TASER、Body Cam、Fusus、Dedrone、AI Era Plan。
ここまで統合されると、単なるSaaSより不可逆性は強い。
ただし、AXONはすでにそのモートの強さを市場にかなり評価されている。AXONのForward non-GAAP P/Eは約50倍。
一方で、IOTはまだAXONほどモートが完成しているとは思わない。
IOTはフェーズ1だと思う。
つまり、物理オペレーションの現場データをつなぎ、不可逆なモートをこれから育てていく段階だ。
競合も多い。
Samsaraの10-Kでも、Geotab、Lytx、Motive、Verizon Connect、Omnitracsなど、多数の競合が挙げられている。
それでもIOTを選んだ理由は、TAMの広さと価格だ。
Samsaraは、建設、輸送、卸売・小売、物流、製造、公益、エネルギー、政府、ヘルスケア、教育、食品飲料など、物理オペレーションを担う産業を対象にしている。同社は、これらの産業が世界GDPの40%超を占めると説明している。
つまりIOTは、公共安全という深い市場ではなく、物流・建設・現場オペレーションという広い市場を取りに行く会社だ。
AXONは深い。
IOTは広い。
そして、利益構造を見るとIOTはかなりSaaSに近い。
FY2026のIOTは、ARR $1.890B、売上高$1.619B、売上成長+30%。non-GAAP gross marginは78%、non-GAAP operating marginは17%、free cash flow marginは13%。Q4 FY2026の資料でも、FY2026のnon-GAAP operating margin 17%、free cash flow margin 13%が確認できる。
ここがAXONとの違いだ。
AXONは、モートは深いが、利益構造はハードウェアの重さを含む。
IOTは、モートはまだ育成中だが、利益構造はよりSaaS的で、TAMはかなり広い。
さらに、SBCも比較しておきたい。
SBCとは、Stock-Based Compensation、つまり株式報酬費用のことだ。
高成長SaaSやAI企業を見るとき、ここはかなり重要になる。
なぜなら、non-GAAP EPSやnon-GAAP営業利益ではSBCを費用から除外することが多いからだ。
つまり、見かけの利益は強く見えるが、実際には従業員や経営陣に株式が渡り、既存株主の持分が薄まる可能性がある。
AXONもIOTも、SBCは軽くない。
AXONはFY2026のSBCを$590M〜$620Mと見込んでいる。そのうち約$230MはEmployee XSPとCEO Performance Awardに関連するものだと会社は説明している。これらは、単なる通常のRSUではなく、株価、事業運営上の目標、時間条件などに連動するパフォーマンス型のインセンティブだ。
通常のRSUは、ざっくり言えば「一定期間働けば株式がもらえる」報酬だ。
もちろん株式報酬なので株主希薄化はあるが、費用認識の流れは比較的読みやすい。
一方で、AXONのXSPやCEO Performance Awardは、会社が大きく成長し、株価や業績条件を達成した場合に大きく効いてくる報酬設計だ。
つまり、株主にとって悪い話だけではない。
会社が本当に高い目標を達成して、株価も上がるなら、経営陣や従業員への報酬が増えるのは合理性がある。
株主と経営陣の方向性をそろえる効果もある。
ただし、投資家としては注意点もある。
業績・株価連動型の報酬は、費用の見え方が普通のRSUよりブレやすい。
条件達成の可能性や株価の動きによって、会計上のSBC費用が大きく見えたり、前年より下がって見えたりする。
だからAXONのSBCは、単純に「Q1で下がったから安心」とは見ない方がいいはずだ。
CFOも、SBCの一部はperformance planに紐づき、株価・事業運営上のマイルストーンを達成した場合に実現するものだと説明している。また、通常のRSUも人材獲得・維持のために必要だとしつつ、平均年間希薄化を2.5%未満に抑え、今後はSBCドル額をおおむね横ばいにし、売上成長によって売上比率を下げるという考えを示している。
つまりAXONのSBCについて私はこう見た。
悪いSBCではない。
むしろ、会社が本当に大きく成長するなら、経営陣・従業員と株主の利害を一致させる設計とも言える。
ただし、絶対額は大きい。
FY2026で$590M〜$620Mというのは重い。
そして、PER50倍級の銘柄では、SBCが重いままだと、non-GAAP利益の見かけと株主に残る実質利益にズレが出る。
次にIOTだ。
IOTのSBCもまだ高い。
Q4 FY2026資料のGAAP to non-GAAP reconciliationを見ると、FY2026のSBC関連調整額は$335.0M。売上高$1.619Bに対して約20.7%になる。FY2024は$251.2M、FY2025は$298.6M、FY2026は$335.0Mなので、絶対額は増えている。
ただし、ここで重要なのは方向性だ。
Samsaraの売上はFY2024 $937M、FY2025 $1.249B、FY2026 $1.619Bと拡大しているため、SBC関連調整額の売上比率は、FY2024の約26.8%、FY2025の約23.9%、FY2026の約20.7%へ低下している。
つまり、IOTもSBCは重い。
しかし、売上成長と営業レバレッジによって、SBC比率はかなりきれいに下がっている。
ここはIOTにとって株価の押し上げ材料になり得る。
そして、IOTのSBCはAXONよりも構造が読みやすい。
IOTは、基本的にはRSU中心のSBCと見てよい。
RSU、つまりRestricted Stock Unitは、一定の勤務期間を経ることで株式が付与される報酬だ。多くの場合、入社時や昇進時に付与され、数年かけて少しずつ権利確定していく。
これは、社員を採用・維持するための報酬としては一般的だ。
特にSaaS企業では、現金給与だけでなくRSUを使って優秀なエンジニアや営業人材を確保する。
ただし、株主から見ると、RSUは「現金は出ていかないが、将来株式が増える可能性のある報酬」だ。
だから、GAAP上は費用になるし、株主希薄化も起きる。
IOTの良い点は、SBCが主にこの通常型のRSU中心で、AXONのXSPやCEO Performance Awardのような大型のパフォーマンス型報酬による会計上のブレが相対的に小さいことだ。
つまり、IOTのSBCはまだ高いが、読みやすい。
売上成長に対して、SBC比率が毎年下がっているかを見ればよい。
一方、AXONはSBC比率自体はFY2026見込みでIOTより低く見える可能性がある。
しかし、XSPやCEO Performance Awardのような業績・株価連動報酬があり、四半期ごとの見え方はIOTより複雑になる。
ここを整理すると、こうなる。
AXONは、モートが深く、経営陣のインセンティブも成長に強く結びついている。
ただし、SBCの絶対額は大きく、XSPやCEO Performance Awardの影響で見え方がやや複雑。
IOTは、SBC比率自体はまだ高い。
ただし、RSU中心で構造が読みやすく、売上成長とともにSBC比率が低下している。
これは、IOTを選んだ理由の一つになる。
IOTは割安とは言えない。
Forward non-GAAP P/Eは約42.6倍、Forward EV/Salesは約7.9倍。決して安い銘柄ではない。
ただし、IOTは、
広いTAM、
SaaS的な利益構造、
SBC比率の低下、
GAAP黒字化の方向性、
FCF marginの拡大、
という形で、利益の質が改善していく絵が比較的見えやすい。
一方でAXONは、
公共安全という深いモート、
DedroneやFususによる拡張性、
AI Era PlanによるARR拡大、
地政学テーマ、
という魅力は非常に強い。
ただし、Connected Devicesの粗利率、Dedroneミックス、在庫投資、SBCの絶対額、FCF転換を確認しないと、PER50倍を正当化しきれないリスクがあると考える。
つまり、私がIOTを選んだ決定打は、単純に「IOTの方が安い」ではない。
AXONはモートのフェーズが進んでいるぶん、株価も高い。
IOTはまだフェーズ1で不確実性はあるが、広いTAM、SaaS的利益構造、SBC比率低下、FCF拡大に対して、価格がまだ許容できた。むしろ、「適正な価格」で買えたと整理できた。
この違いが大きかった。
これは、自分の中ではかなりしっくり来る整理だった。
■ PER50倍を正当化する条件とは?
AXONは高い。
Forward non-GAAP P/Eは約50倍。
PER50倍ということは、ざっくり益回り2%。今の利益だけで見れば明らかに安くない。
では、何があれば正当化できるのか。
私は4つあると思う。
1つ目は、30%級の成長が長く続くこと。
Q1’26はYoY +34%。通年ガイダンスも+30〜32%。これは条件を満たしている。ただし1年だけでは足りない。FY2027以降も20〜30%級の成長を維持できるかが必要になる。
2つ目は、Software & Services比率が上がり、全社粗利率が改善すること。
Software-only gross marginが80%超でも、全社粗利率は59.1%。この差を埋めるには、AI Era Plan、Fusus、Evidence、911、Dedrone software componentが伸びる必要がある。
3つ目は、FCF marginが15〜20%へ近づくこと。
FY2026のFCFガイダンス約$450Mは悪くない。ただしPER50倍級なら、将来的により高いFCF転換が欲しい。Q1はFCFマイナスなので、Q2以降の回復は必須。
4つ目は、SBC比率が下がること。
Q1のSBC / 売上比率は16.7%まで下がったが、通年SBCは$590M〜$620M見込み。ここが下がらなければ、モートの果実は株主だけでなく従業員にも大きく配分される。
つまり、AXONのPER50倍は、現時点の利益だけでは正当化できない。
正当化するには、AXONが本当に公共安全AI OSになり、ARR、NRR、FCF、SBC比率の改善として数字に出続ける必要がある。
■ 迷いを抱えた投資判断
今回の決算を見て、AXONへの評価はむしろ上がった。
AXONはもうTASER会社ではない。
公共安全のフィジカルソケットを握り、そこにAIを埋め込み、Fususで映像インフラを統合し、Dedroneで空域まで押さえ、911や司法ワークフローまで取りにいく会社になりつつある。
この構造はかなり強い。
公共安全という失敗が許されない領域で、信頼、データ、ハードウェア、ソフトウェア、長期契約、政府調達が組み合わさる。普通のSaaSよりも深いモートに見える。
だから、AXONは高PERだから切り捨てる銘柄ではない。
モートは深い。
ストーリーも強い。
地政学も追い風。
民間展開も面白い。
AI Era Planも始まった。
Dedroneも伸びている。
でも、利益の面取りはまだ純粋SaaSほど綺麗ではない。
全社粗利率は59%。
Connected Devicesが売上の半分以上。
FCFはQ1でマイナス。
SBCも絶対額としては重い。
Dedroneは伸びるが、粗利率にはまだ負荷がある。
そして、SBCの中身も確認が必要だ。
AXONのSBCは、通常のRSUだけではない。
XSPやCEO Performance Awardのように、株価・業績・時間条件と連動する報酬がある。
これは経営陣や従業員のインセンティブを株主価値に近づける設計ではある。
しかし、費用の見え方はブレやすく、PER50倍銘柄としては、今後本当に売上比率が下がるかを見続ける必要がある。
だから判断として、AXONはコア候補。
ここはブレない。
ただし、今すぐ飛びつく銘柄ではなく、恐怖局面で拾うために深く理解しておく銘柄だ。
私がIOTを選んだのは、AXONのモートを否定したからではない。
もっと素直に言えば、AXONのPER50倍をまだ許容できなかったからだ。
IOTもPERは42倍で、決して安くない。
しかし、広いTAM、SaaS的な利益構造、SBC比率低下、GAAP黒字化、FCF拡大を考えると、私が買ったタイミングでは、なんとか適正価格として許容できた。
一方でAXONは、モートのフェーズが進んでいるぶん、市場評価もかなり進んでいた。
同じタイミングで買うなら、AXONは割高に見えた。
ただ、ここに迷いがある。
IOTを買ったとはいえ、購入予定金額の半分しか買えていない。
これはIOTを信じていないという意味ではない。
フィジカルAIという大きな成長テーマに、今のうちに長期でポジションを持っておきたい。
一方で、確かなコア銘柄をできるだけ割安に買いたいという心理も残っている。
つまり、今の自分はこういう状態だと思う。
AXONは欲しいが、高い。
IOTは買えるが、完全には安くない。
しかし、何も持たずに次の成長局面を見送ることもしたくない。
だから、IOTを半分持ち、AXONは深く追い続ける。
これはもしかしたら中途半端な判断ではないのか?
私の奥では迷いが残っている。
つまり、現時点の不確実性を、ポートフォリオサイズで表現しただけだと思う。
集中投資では、銘柄を選ぶこと以上に、どの価格で、どのサイズで持つかが最も重要になることを理解している。だから私の決算分析では、ポートフォリオへの接続という核心部分まで自分の思考を落とし込んで、後でその投資判断を振り返るように残している。
今はその迷いを残していいと思う。
AXONの魅力は今回の決算でさらに増した。
IOTを買った判断も、現時点では十分に合理性がある。
次にやるべきことは、その迷いを消すことではない。
AXONがPER50倍を正当化できるだけのFCF転換を見せるか。
IOTがフェーズ1から不可逆モートを深め、SBC比率低下とGAAP黒字化を続けられるか。
迷いを抱きながら、この2社を次の数四半期で冷静に見比べることが私のやるべきことだ。
■ 次回チェックポイント
・売上成長率が30%超を維持できるか
・Software & Servicesの売上構成比が上がるか
・Software & Services gross marginが再び改善するか
・Connected Devices gross marginがDedroneミックスで悪化しないか
・Platform Solutionsの成長が継続するか
・Dedrone revenue / bookingsの高成長が続くか
・Dedroneがイベント需要だけでなく、恒久的な空域管理インフラとして採用されるか
・DJI依存・中国製ドローン規制の流れが、米国以外の西側諸国にも広がるか
・Dedrone C2が単なるハードウェアではなく、sensor fusion / mitigation management / third-party integrationを含む空域OSとして売れるか
・Dedroneのsoftware componentが粗利率改善に寄与するか
・World Cup、Olympics、重要インフラ、データセンター保護でDedrone案件が継続するか
・AI Era Plan revenueが「小さいベース」からどれだけ実額で伸びるか
・ARRがQoQで強く伸び続けるか
・NRR 125%を維持できるか
・Future Contracted Bookingsが再加速するか
・営業CFがプラスに戻るか
・FY2026 FCF約$450Mガイダンスへ進捗するか
・SBC / 売上比率がさらに低下するか
・在庫投資が売上に変わり、キャッシュを回収できるか
・民間企業向けFusus案件が継続して出るか
・International revenueの20%構成比が定着するか
・PER50倍を許容できるだけのFCF転換が見えるか
・AXONのFY2026 SBC $590M〜$620M見込みに対して、実績がどの水準で着地するか
・XSP / CEO Performance Award関連SBCがどれだけ残るか
・AXONのSBC / 売上比率が16%台からさらに下がるか
・平均年間希薄化2.5%未満という会社方針が維持されるか
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