【Tempus AI(TEM)Q1 FY2026】コア候補にしてよいのか?医療AIデータOSへの進化と、まだ残るSBC・FCFの重さ
Tempus AI(TEM)のQ1 FY2026決算は、最初に正直に言うとかなり面白いと思う。
ただ、かなり判断が難しい。
なぜなら、この会社を単なる診断検査会社として見ると、バリュエーションは高い。現時点でGAAP赤字も残っているし、営業キャッシュフローもまだ安定していない。SBC、つまり株式報酬費用も重い。
一方で、TEMを「診断会社」としてではなく、医療AIデータOSとして見ると、話はかなり変わってくる。
この会社の本質は、検査で売上を作ることだけではない。
検査を通じて、臨床データ、ゲノムデータ、画像データ、治療反応データを集める。そして、そのデータを製薬会社のR&D、医師の治療判断、AIアルゴリズム、基盤モデルに接続していく。
つまり、Diagnosticsでデータを作り、Data and Applicationsで製薬会社に展開し、AIアルゴリズムを臨床現場に戻し、さらにデータが増える。
この循環が本当に回るなら、TEMは単なる検査会社ではなく、医療AI時代のデータ基盤企業になる可能性がある。
今回の決算は、その可能性が一段強まった決算だったと思う。
ただし、コア銘柄として見てよいかは、まだ別問題だ。
まず数字を整理する。
なお、Q2’25とQ3’25では会社の開示名称が「Genomics」「Data and services」、Q4’25以降は「Diagnostics」「Data and Applications」に変わっている。ここでは比較しやすいように、同じ系列として扱う。
また、Q3・Q4の営業CF、CapEx、FCFは、累計キャッシュフローとの差分から単独四半期値を算出している。ここは直接開示の単独四半期値ではない。
Q2’25 → Q3’25 → Q4’25 → Q1’26
・売上高:$314.6M → $334.2M → $367.2M → $348.1M
Q1’26はQoQ -5.2%、YoY +36.1%。Q2’25はYoY +89.6%、Q3’25はYoY +84.7%、Q4’25はYoY +83.0%だったため、成長率だけを見るとQ1’26は鈍化している。ただし、これはAmbry買収による前年比較の影響が薄れてきたことも大きい。絶対額で見れば、Q1はQ4から季節的に少し落ちたが、前年同期比ではまだ36%成長している。Q2、Q3、Q4、Q1 2026の売上高は会社発表と10-Qで確認できる。
・事業別売上構成比
Diagnostics / Genomics:76.9% → 75.7% → 72.7% → 75.0%
Data and Applications / Data and services:23.1% → 24.3% → 27.3% → 25.0%
ここは必ず見た方がいい。TEMは「AI医療データOS」として評価したくなる会社だが、現時点の売上構成を見ると、まだ売上の約4分の3はDiagnostics、つまり検査事業から生まれている。一方で、Data and Applicationsは売上構成比で約4分の1。Q4’25では27.3%まで上がったが、Q1’26では25.0%に戻った。Q1 2026のDiagnosticsは$261.1M、Data and Applicationsは$87.0Mで、会社はそれぞれYoY +34.7%、+40.5%と開示している。
つまり、TEMはすでに完全なデータ会社になったわけではない。
まだDiagnosticsが売上の土台であり、Data and Applicationsが評価倍率を引き上げるオプション、あるいは将来の本丸になっている段階だと思う。
ここを見誤ると、TEMを「AIデータ会社」として過大評価しすぎる可能性がある。一方で、Diagnosticsを単なる検査売上としてだけ見ると、データ生成エンジンとしての価値を見落とす。TEMの面白さは、Diagnosticsが売上を作りながら、Data and Applicationsのモートを深める構造にある。
・GAAP粗利率:62.0% → 62.8% → 64.7% → 63.8%
・Non-GAAP粗利率:62.8% → 63.6% → 65.6% → 65.0%
粗利率はかなり良い。Q1’26のNon-GAAP粗利率は65.0%。前年同期の61.4%から360bps改善している。会社は、Diagnostics側のASP改善、ラボ効率化、Ambryの取り込み、さらに高粗利のData and Applicationsの成長が改善要因と説明している。
ただし、ここでも構成比が重要になる。Data and Applicationsは粗利率が高い一方で、まだ全社売上の25%程度にとどまる。つまり、全社粗利率をさらに引き上げるには、Data and Applicationsの構成比が継続的に上がる必要がある。Q4’25の27.3%が一時的な高水準だったのか、それとも今後30%台へ向かう入口だったのか。ここは次回以降の重要な確認点になる。
・営業損失:-$61.8M → -$61.0M → -$61.4M → -$84.7M
・営業利益率:-19.6% → -18.3% → -16.7% → -24.3%
ここはQ1で悪化している。売上成長は続いているが、GAAP営業損失はまだ大きい。Q1’26はSBC、買収関連の償却、AI・データ基盤への投資が重く、P/L上ではまだきれいな黒字化局面ではない。Q1 2026の営業損失は10-Qで-$84.7Mと確認できる。
・Non-GAAP営業利益:-$17.0M → -$8.7M → +$4.3M → -$11.6M
・Non-GAAP営業利益率:-5.4% → -2.6% → +1.2% → -3.3%
Q4’25ではNon-GAAP営業利益がプラスに転じていたが、Q1’26では再びマイナスに戻った。とはいえ、前年同期のNon-GAAP営業損失-$25.8Mと比べれば、Q1’26の-$11.6Mは改善している。つまり、長期的には営業レバレッジが出始めているが、四半期単位ではまだブレる。Q1 2026のNon-GAAP loss from operationsは-$11.6Mと会社が開示している。
・GAAP EPS:-$0.25 → -$0.46 → -$0.30 → -$0.70
・Non-GAAP EPS:-$0.22 → -$0.11 → -$0.04 → -$0.13
Q1’26のNon-GAAP EPSは-$0.13。市場予想との比較では売上とNon-GAAP EPSは上振れたと見てよい。ただし、一次情報で確認できるのは会社の実績値までなので、市場予想との比較は補助的に見る。ここで重要なのは、GAAP EPSはまだ大きな赤字で、Non-GAAPでは改善傾向という二面性だ。Q1 2026のbasic EPSは-$0.70、diluted EPSは-$0.71、Non-GAAP EPSは-$0.13で確認できる。
・Adjusted EBITDA:-$5.6M → +$1.5M → +$12.9M → -$2.8M
Adjusted EBITDAはQ3’25で黒字化し、Q4’25では$12.9Mまで改善したが、Q1’26は-$2.8Mへ戻った。ただし、前年同期の-$16.2Mからは改善している。会社は2026年通期でAdjusted EBITDA約$65Mを見込んでいるため、Q2以降の積み上がりが重要になる。Q3、Q4、Q1 2026のAdjusted EBITDAは会社発表で確認できる。
・営業CF:+$44.2M → -$119.8M → -$36.8M → -$73.3M
・営業CFマージン:+14.0% → -35.8% → -10.0% → -21.0%
ここが今回の弱点。Q1’26の営業CFは-$73.3M。会社は、Q1のキャッシュ使用について、支払いタイミング、年次ボーナス、大型Insights契約の前受金取り崩しが重なったと説明している。そして、Q2以降は支払い正常化と四半期払いへの移行で改善を見込むとしている。Q1 2026の営業CFは10-Q上でも-$73.3Mと確認できる。
・設備投資額:$7.5M → $6.7M → $4.8M → $8.2M
・設備投資額 / 売上比率:2.4% → 2.0% → 1.3% → 2.4%
TEMはMicrosoftのような巨大CapEx企業ではない。設備投資額そのものはそこまで重くない。問題はCapExではなく、運転資本、SBC、買収関連償却、AI/クラウド/データ基盤への費用だと思う。Q1 2026のproperty and equipment購入額は$8.2M。
・FCF:+$36.7M → -$126.5M → -$41.5M → -$81.5M
・FCFマージン:+11.6% → -37.9% → -11.3% → -23.4%
FCFはまだ安定していない。Q2’25は一時的にプラスだったが、その後はマイナスが続いている。TEMをコア候補として見るうえで、ここは最重要。売上成長が強くても、FCFが安定して黒字化しない限り、まだ「本当に株主価値に変換されるのか」は未確認だ。
・SBC:$22.5M → $34.0M → $45.3M → $52.7M
・SBC / 売上比率:7.1% → 10.2% → 12.3% → 15.1%
ここもかなり重要。Q1’26のSBCは$52.7M。さらに関連雇用主税を含めると$56.3Mになる。売上比率で見ると、SBC単独でも15%超まで上がっている。高成長企業なのでSBCを完全に否定する必要はないが、長期投資家としては、これが将来の1株価値をどれだけ薄めるかを見ないといけない。Q1 2026のSBC $52.7Mと関連雇用主税$3.6Mは会社の調整表で確認できる。
・現金+有価証券:$293.0M → $764.3M → $759.7M → $643.8M
Q3’25で大きく増えたのは、転換社債発行とATMによる資金調達があったため。Q1’26末では$643.8Mまで減ったが、まだ手元流動性はある。ただし、会社は赤字とマイナスFCFが残っているため、手元資金があるから安心というより、今後どれだけ早く自力でキャッシュを生めるかが重要だ。Q1 2026末のcash, cash equivalents, and marketable securitiesは$643.8M、10-Q上のcash and cash equivalents単体は$521.2Mで確認できる。
・Diagnostics / Genomics売上:$241.8M → $252.9M → $266.9M → $261.1M
・Diagnostics / Genomics売上構成比:76.9% → 75.7% → 72.7% → 75.0%
DiagnosticsはTEMの売上の土台だ。Q1’26でも全社売上の75.0%を占めている。ここから分かるのは、TEMはまだ「検査事業で稼ぎながら、データ事業を伸ばしている会社」だということ。
このDiagnosticsを単なる検査事業として見ると、TEMは高い診断会社に見える。ただし、TEMの場合、Diagnosticsは売上源であると同時に、臨床・ゲノム・治療反応データを集めるデータ生成エンジンでもある。だから、Diagnosticsの成長は、売上成長であると同時に、将来のData and Applicationsの素材が増えるという意味を持つ。
・Data and Applications / Data and services売上:$72.8M → $81.3M → $100.4M → $87.0M
・Data and Applications / Data and services売上構成比:23.1% → 24.3% → 27.3% → 25.0%
今回の本丸はData and Applicationsだと思う。Q1’26はQ4比では落ちたが、前年同期比では+40.5%。Insightsは+44.1%。Merck、Gileadとの戦略提携もあり、データ事業が単なるサブ事業ではなく、評価の中心に近づいている。
ただし、構成比で見ると、まだ全社売上の25%だ。ここが重要だと思う。
TEMのバリュエーションを正当化するには、Data and Applicationsが「高成長の脇役」ではなく、「全社の評価軸」になる必要がある。少なくとも、構成比が25%前後で横ばいなのか、30%、35%、40%へ上がっていくのかは、今後の投資判断にかなり大きい。
もしData and Applicationsの構成比が上がりながら、全社粗利率と営業レバレッジが改善するなら、TEMは診断会社ではなく医療AIデータOSとして再評価されやすい。一方で、構成比が25%前後にとどまり、Diagnostics依存が続くなら、今の高い評価はやや重くなる。
・Oncology revenue:$133.2M → $139.5M → 未確認 → $147.3M
・Oncology revenue / 全社売上比率:42.3% → 41.7% → 未確認 → 42.3%
・Oncology revenue / Diagnostics売上比率:55.1% → 55.2% → 未確認 → 56.4%
Oncologyはかなり堅調。Q1’26では約85,500件の臨床Oncology検査を実施し、前年同期の約67,000件から約28%増えた。Oncology revenueは$147.3M、YoY +27%。ここはTEMのデータ生成エンジンとして重要だ。
構成比で見ると、Oncologyは全社売上の約42%、Diagnostics売上の約56%を占めている。つまり、TEMの中核は依然としてOncologyだと思う。HereditaryやMRDも重要だが、医療AIデータOSとしての価値を考えるうえでは、Oncologyでどれだけ深い臨床・分子データを蓄積できるかが一番大きい。
・MRD volume:未確認 → 未確認 → 約4,700件 → 約6,500件
・MRD QoQ:未確認 → 未確認 → +56% → +38%
MRD、つまり微小残存病変検査は伸びている。Q1’26は約6,500件、YoY約+500%、QoQ +38%。ただし、ASPは約$470と低い。しかも約97%はPersonalisとのtumor-informed testで、Tempusは固定の販売・マーケティングフィーを得る形。つまり、MRDは件数の伸びだけで評価してはいけない。今は市場を取りに行く段階であり、利益貢献はまだ確認が必要だ。
・Oncology ASP:Q4’25 約$1,740 → Q1’26 約$1,720
Oncology ASPは少し下がった。主因はMRDの低ASPミックスだと会社は説明している。一方で、会社はxT CDxのtumor-only拡張、xFのFDA提出、xRのPMA準備を通じて、今後数年で約$500のASP上昇余地があるとしている。ここは実現すればかなり大きい。ただし、FDA承認と保険償還は別物なので、ここは次回以降の答え合わせが必要だ。
・Hereditary revenue:$97.3M → $102.6M → 未確認 → $100.0M
・Hereditary revenue / 全社売上比率:30.9% → 30.7% → 未確認 → 28.7%
・Hereditary revenue / Diagnostics売上比率:40.2% → 40.6% → 未確認 → 38.3%
Hereditaryは表面上はQ1’26でYoY +54%に見えるが、Ambryの買収タイミングを調整したpro-formaでは検査数成長が+7%にとどまる。会社は2026年後半にmid-teens、つまり10%台半ばの成長に戻ると説明している。ここは今回の弱点であり、次回以降の確認点。
構成比で見ると、HereditaryはQ1’26で全社売上の28.7%、Diagnostics売上の38.3%。かなり大きい。だから、Hereditaryの鈍化は無視できない。TEMの投資ストーリーの主役はOncologyとData and Applicationsだとしても、HereditaryがDiagnosticsの4割弱を占める以上、ここが低成長のままだと全社成長率にブレーキがかかる。
なお、Oncology revenueとHereditary revenueを足してもDiagnostics revenueとは完全には一致しない。Q1’26ではOncology $147.3M、Hereditary $100.0M、合計$247.3Mに対し、Diagnostics全体は$261.1M。差額は約$13.8Mで、全社売上比では約4.0%。ここはその他診断関連収益や分類調整が含まれる可能性があるため、OncologyとHereditaryはDiagnostics内の主要KPIとして見るのがよいと思う。
・TCV:2025年末 $1.1B超 → Q1’26も増加
・NRR:2025年末 126%
TCVはTotal Contract Value、つまり契約残高。NRRはNet Revenue Retentionで、既存顧客からの売上維持・拡大を見る指標。2025年末時点でTCVは$1.1B超、NRRは126%。Q1もBookingsが売上を上回り、TCVはさらに増えたと会社は説明している。ここはData and Applicationsの再現性を見るうえで重要だ。
特に、Data and Applicationsが全社売上の25%にとどまる現状では、TCVとNRRの伸びはかなり大事になる。売上構成比がまだ小さいからこそ、将来の構成比拡大を裏づける先行指標として見る必要がある。
・FY2026売上ガイダンス:$1.59B → $1.59B〜$1.60B
・FY2026 Adjusted EBITDA:約$65M → 約$65M
ガイダンスは売上が小幅上方修正。Adjusted EBITDAは据え置き。つまり、今回のガイダンス引き上げは「大幅な再評価」というより、「会社計画に対する確度が上がった」くらいに見るのが自然だと思う。
数字だけ見ると、今回の決算は強い。
売上はYoY +36%。
Data and Applicationsは+40%。
Insightsは+44%。
Non-GAAP粗利率は65%。
通期売上ガイダンスも上方修正。
ただし、構成比まで見ると、より冷静に見える。
TEMの売上の75%はまだDiagnostics。
Data and Applicationsは25%。
Oncologyは全社売上の約42%。
Hereditaryは全社売上の約29%。
つまり、TEMはまだ「Diagnosticsを土台にした会社」であり、「Data and Applicationsが評価の上振れを作る会社」だと思う。
だから今回のTEMは、「文句なしの好決算」とは言わない。
正確には、医療AIデータOSへの進化は確認できたが、売上構成ではまだDiagnostics中心であり、株主価値への変換は確認途中の決算だと思う。
■ TEMは診断会社なのか、医療AIデータOSなのか
TEMを理解するうえで一番大事なのは、この会社を単なる診断会社として見ないことだと思う。
TEMはDiagnosticsで売上の大半を作っている。だから表面上は、がん遺伝子検査や遺伝性疾患検査を提供する診断会社に見える。
ただ、会社自身は、自社のPlatformを「医療データをサイロから解放する技術基盤」と「そのデータを使える形にするOS」の組み合わせとして説明している。DiagnosticsとData and Applicationsは互いに補完し合い、検査で得られたデータを構造化・匿名化し、製薬企業や医師向けのInsights、Trials、Next、Algosに展開する構造だ。10-Kでも、DiagnosticsとData and applicationsは相互に強化し合い、データベースの価値が競争優位につながると説明されている。
ここが重要だ。
普通の診断会社は、検査をして、結果を返し、売上を認識する。
TEMは違う。
検査をする。
データが増える。
そのデータをAIで構造化する。
製薬会社がR&Dに使う。
医師が治療判断に使う。
さらに検査とデータが増える。
この循環が回るなら、TEMは単なる検査会社ではなく、医療AI時代のデータOSになる可能性がある。
■ Diagnosticsは売上事業であり、同時にデータ生成エンジンでもある
今回のDiagnostics売上は$261.1M、YoY +34.7%。Oncology volumeは+28%。ここはかなり強い。
ただ、Diagnosticsを単なる売上事業として見ると、TEMの本質を見落とす。
TEMにとってDiagnosticsは、売上を作る事業であると同時に、データ生成エンジンでもある。
Oncology検査を通じて、DNA、RNA、液体生検、MRD、臨床情報、治療反応が蓄積される。それがData and Applicationsに回り、製薬企業向けのInsightsやAIモデリングに使われる。
つまり、Diagnosticsの成長は、単に売上が増えるという話ではない。
データモートが深まるという話でもある。
■ Data and Applicationsこそ、本当の評価軸
今回の決算で一番見るべきは、Data and Applicationsだと思う。
Q1’26のData and Applications売上は$87.0M、YoY +40.5%。Insightsは+44.1%。さらに、Merckとの複数年戦略提携、Gileadとの拡張契約が発表された。会社は、MerckをAstraZeneca、GSK、BMSなどに続く戦略パートナーとして位置づけ、GileadについてもLensとマルチモーダルデータセットへのエンタープライズアクセス拡大と説明している。
これはかなり重要だと思う。
なぜなら、データ事業が単なる「データ販売」ではなく、製薬会社のR&Dプロセスに入り込む可能性が見えてきたからだ。
MerckやGileadがTEMのLensやマルチモーダルデータセットを使うということは、TEMのデータが、創薬、バイオマーカー探索、臨床試験設計、患者層別化に使われるということになる。
ここが本当に定着すれば、TEMは製薬企業にとっての外部データ基盤になる。
ただし、ここもまだ確認が必要だ。
Data and Applicationsは大型契約が入ると一気に伸びる。逆に言えば、契約更新や新規大型契約が止まると、成長率が鈍化する可能性もある。
だから次回以降は、売上だけでなく、TCV、NRR、Bookings、契約更新、顧客拡大を必ず見る必要がある。
■ AIアルゴリズム付帯率40%は、かなり面白い
今回かなり面白いと思ったのが、Algosの付帯率だ。
会社は、Oncologyのsolid tissue assaysで、Algosのattachment rateが約40%になっていると説明している。つまり、約40%のケースで、医師が通常のNGS検査に加えて、AIアルゴリズムによる解析も求めているということだ。
これは単なるAIの物語ではない。
医師が実際に使い始めているということだ。
ここが重要だと思う。
AI医療銘柄は、どうしても「将来すごそう」で終わりやすい。
しかし、TEMの場合、Algosが検査と一緒に注文され、医師の治療判断に入り始めている。
この付帯率が上がるなら、TEMは「検査結果を返す会社」から「治療意思決定を支援する会社」へ変わっていく。
検査の差別化だけではなく、臨床ワークフローへの食い込みになる。
ここはモートとしてかなり重要だと思う。
■ 500PB超のデータモートは、簡単にはコピーできない
TEMの最大の魅力はデータだ。
会社は、500PB超のデータ、約4,500万患者、300万超のシーケンス済みサンプル、150万超のmatched clinical and molecular records、約900万枚のwhole slide images、4,000万超のTCRなどを保有していると説明している。しかも、単なる分子データではなく、臨床アウトカムや治療反応と接続されている点が重要だ。
AI時代において、データは多ければよいというだけではない。
重要なのは、
使えるデータか。
構造化されているか。
治療反応と結びついているか。
医師と製薬会社のワークフローに戻せるか。
TEMの強みは、ここにある。
OpenAIやGoogleのような汎用AI企業が、いきなりこの医療データを集めるのは難しい。病院との接続、法務、EHR統合、HIPAA、臨床現場の信頼、長期データの蓄積が必要になる。
ここは、単なるAIモデル企業とは違う。
TEMのモート候補は、モデルそのものではなく、医療データの生成・構造化・活用・臨床還元の循環にあると思う。
■ ただし、SBCとFCFはまだ重い
ここまで見ると、TEMはかなり魅力的に見える。
ただ、株としては慎重に見るべきだ。
理由は、SBCとFCFだ。
Q1’26のSBCは$52.7M。関連雇用主税を含めると$56.3M。売上$348.1Mに対してかなり大きい。
成長企業なのでSBCを使うこと自体は悪ではない。
しかし、コア銘柄として長期で持つなら、1株価値が増えていく必要がある。売上が伸びても、SBCで希薄化し続けるなら、株主に残る価値は薄まる。
そしてFCFもまだ弱い。
Q1’26の営業CFは-$73.3M。設備投資を差し引いた簡易FCFは約-$81.5M。会社はQ2以降の改善を見込むと説明しているが、これは次回必ず確認しないといけない。
TEMは、営業CFが圧倒的に強く、CapExが重い会社ではない。
TEMの場合は、まだ営業CF自体が安定していない。
ここがコア候補としての最大の確認点だと思う。
■ MRDは派手だが、まだ利益貢献は確認途中
MRDとは、Minimal Residual Diseaseの略称で、再発予測に極めて重要な、がん治療後の微小な残存病変の意味で、ここは数字だけ見ると強烈だ。
Q1’26は約6,500件、YoY約+500%、QoQ +38%。ただし、ASPは約$470と低い。これは、Personalisとの提携構造の中で、Tempusが固定の販売・マーケティングフィーを得ているためだ。
つまり、MRDは現時点では「巨大市場への種まき」と見るべきだと思う。
市場規模は大きい。成長率も高い。
しかし、今すぐ利益が大きく出る事業ではない。
ここを間違えると、MRD件数の成長だけで過大評価してしまう。
見るべきは件数ではなく、ASP、粗利、償還、Personalisとの経済分配、自社MRDの展開スピードだと思う。
■ Hereditaryの踊り場も確認が必要
Hereditaryも注意が必要だ。
Q1’26のHereditary revenueは$100.0M。表面上のYoY成長率は高いが、Ambryの買収タイミングを調整したpro-formaでは検査数成長が+7%にとどまる。
会社は、2026年後半にはmid-teens成長に戻ると説明している。
ここは次回以降の答え合わせだ。
TEMの本質はData and ApplicationsとOncologyデータモートにあると思うが、Ambry買収後のHereditaryが想定より弱いままだと、買収効果や成長ストーリーに傷がつく。
特にRARE、全ゲノムシーケンスへの移行、報告パイプラインの改善が、本当に下期の成長回復に繋がるかを見る必要がある。
■ バリュエーションは高い。だから「良い会社」と「良い銘柄」は分ける
TEMは安い会社ではない。
バリュエーションを見ると、Forward EV/Salesは6倍台、Forward P/Sも6倍台、Forward EV/EBITDAはかなり高い。赤字やFCFマイナスが残る企業としては、かなり将来の成功を織り込んでいる。
だから、単に「AI医療データがすごい」で買う銘柄ではない。
この会社は、コア候補として見る価値はある。
しかし、コア確定ではない。
コアにするなら、不可逆モートが深まり、かつ1株価値に落ちてくる必要がある。
現時点で確認できたのは、モートの種がかなり強いこと。
まだ確認できていないのは、そのモートが安定したFCFと希薄化抑制に変換されることだ。
■ 私の暫定判断
TEMは、フェーズ1のコア候補としてかなり面白い。
RBRKと同じように、今後5年で不可逆モートが深まる可能性を持つ銘柄だと思う。
ただし、RBRKよりも不確実性は大きい。
医療規制、保険償還、FDA、データ利用、SBC、M&A統合、製薬会社の予算サイクル。
確認すべき変数が多い。
だから、現時点ではこう見る。
TEMは、医療AIデータOSへの進化が見え始めたコア候補。
ただし、まだコア確定ではない。
今は、強気に監視する段階。
Q1決算では、Data and Applicationsの強さ、Merck/Gileadとの提携、Algos付帯率40%、500PB超データモートは非常に良かった。
一方で、SBC、FCF、Hereditary鈍化、MRD低ASPはまだ重い。
つまり今回の決算は、コア候補として監視を強める決算だった。
ただし、買うとしても、ストーリーだけで大きく張る銘柄ではない。
医療AIデータOSになれる可能性はある。
しかし、株主として本当に報われるかは、次の数四半期でFCF、SBC、Data事業の継続性を確認してから判断したい。
■ 次回チェックポイント
・Q2で営業CFが本当に改善するか
・FCFマージンが改善方向に向かうか
・SBC / 売上比率がピークアウトするか
・Data and Applications売上がQ1の強さを維持できるか
・InsightsのBookings、TCV、NRRが伸び続けるか
・Merck、Gilead以外の大型製薬提携が追加されるか
・Algos付帯率40%がさらに上がるか
・xT CDx tumor-onlyのFDA判断が出るか
・xF、xRのFDA/償還ロードマップが進むか
・Oncology ASPが$1,720から上昇に転じるか
・MRDの検査件数だけでなく、ASPと粗利が改善するか
・Hereditaryが会社説明どおり2026年後半にmid-teens成長へ戻るか
・RAREの全ゲノム移行が成長率に効くか
・Q2以降もFY2026売上$1.59B〜$1.60B、Adjusted EBITDA約$65Mの達成確度が上がるか
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。役に立ちましたら、是非、スキ、フォローしていただきましたら幸いです。
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