【Navitas Semiconductor(NVTS)Q1 FY2026】死の谷は越えたのか。NVIDIA 800VDCの“候補”から“量産採用”へ進めるか?
Navitas Semiconductor(NVTS)のQ1 FY2026決算を分析する。
前回のQ4決算では、私はNVTSを「死の谷を這い上がるNVTS 2.0」として整理した。
かつてのNVTSは、GaNを使ったスマホ充電器やモバイル向けの小型電源で成長してきた会社だった。しかし、その市場は価格競争が激しく、ボラティリティも大きい。そこで経営陣は、モバイル・低価格コンシューマーを縮小し、AIデータセンター、エネルギーグリッド、性能コンピューティング、産業電化といった高出力市場へ大きく舵を切った。
これが「Navitas 2.0」だった。
前回の私の見立ては、Q4 FY2025の売上$7.3Mが、旧モバイル事業を切り捨てた後の“死の谷”の底ではないか、というものだった。
そして今回のQ1決算で、その仮説は一部確認できた。
売上はQ4の$7.3MからQ1は$8.6Mへ増加。QoQで+18%。Q2ガイダンスも$10.0M中央値で、さらにQoQ +16%以上の連続成長を見込んでいる。高出力市場は売上の大部分を占め、YoYで約35%成長したと会社は説明している。
つまり、Q4が底だった可能性は高まった。
ただし、ここで冷静に見たい。
今回の決算で確認できたのは、Navitas 2.0が売上反転として数字に出始めたことであって、まだAI電力インフラの勝者になったことではない。
NVTSは、NVIDIA 800VDCエコシステムの中に名前がある。NVIDIAは次世代AIファクトリー向けに800VDCアーキテクチャを進めており、1MWラック以上を支えるために2027年以降の移行を示している。NVIDIAは、従来の54VDCラック電力では、銅配線の肥大化、スペース制約、変換効率の低下が課題になると説明している。
さらにNVIDIAは、Kyberラックでは800VDCを高電圧のままcompute node近くまで配り、GPU近傍で64:1の高比率LLCコンバーターにより12VDCへ変換する構想を示している。
これはNVTSにとって重要だ。
なぜなら、NVTSは今回、NVIDIA GTCで20kWの800V→6V DC-DC power delivery boardを発表し、さらに800V→50Vの電力変換ボード、250kWのsolid-state transformerも示しているからだ。会社は、これらがAIデータセンターの高密度電力変換に向けた技術だと説明している。
つまり、NVTSはNVIDIA 800VDCの大きな流れと技術的には噛み合っている。
しかし、現時点で確認できるのはここまでだ。
NVIDIAの800VDCエコシステムに名前があること。
GTCで電力変換ボードを示したこと。
高出力市場がQ1で売上反転をけん引したこと。
一方で、まだ確認できていないことも多い。
NVIDIA Kyber / Rubin世代の量産設計にNVTSのGaNやSiCが採用されたとは確認できていない。
NVIDIAがNVTSを標準サプライヤーとして名指ししたわけでもない。
Delta、Flex、LiteOn、Megmeet、Vertivなどの電源システム企業が、NVIDIA 800VDC向け量産電源でNavitas採用を発表したわけでもない。
そして、NVTSの売上・バックログ・FCFに、その量産採用が明確に出たわけでもない。
ここが今回の決算で最も重要な線引きだと思う。
NVTSはNVIDIA 800VDCの候補群には入った。
しかし、量産採用はまだ確認できていない。
今回の記事では、この現在地を整理したい。
Q2’25 → Q3’25 → Q4’25 → Q1’26
・売上高:$14.5M → $10.1M → $7.3M → $8.6M
Q1’26はQoQ +18%、YoY -39%。まず大事なのは、QoQでようやく反転したことだ。Q2’25からQ4’25までは、$14.5M、$10.1M、$7.3Mと急速に縮小していた。これは旧モバイル・低価格コンシューマー事業を切り離す過程で起きた減収だったと見るべきだと思う。Q1’26で$8.6Mまで戻したことは、Navitas 2.0の底打ち確認としては明確にポジティブ。ただし、前年同期比ではまだ大幅減収であり、復活宣言ではない。Q2’25は10-Qで$14.490M、Q3’25は$10.112M、Q4’25は会社リリースで$7.3M、Q1’26は$8.598Mと確認できる。
・GAAP粗利率:-11.8% → -2.0% → -17.2% → -9.3%
GAAP粗利率はまだかなり歪んでいる。Q1’26も-9.3%。これは取得関連無形資産の償却などの影響もあり、会社を見るうえではnon-GAAP粗利率を併せて見る必要がある。Q4の-17.2%からは改善しているが、GAAPベースで高収益体質が見えたわけではない。Q1’26のGAAP粗利率-9.3%は会社リリースで確認できる。
・non-GAAP粗利率:38.5% → 38.7% → 38.7% → 39.0%
ここは今回の改善点。non-GAAP粗利率は39.0%まで上昇した。Q4の38.7%からは30bp改善。小幅ではあるが、高出力市場の構成比上昇がミックス改善として出始めている。Q2ガイダンスでもnon-GAAP粗利率は39.25%中央値とされており、会社は緩やかな粗利率改善を見込んでいる。
ただし、ここはまだ過大評価しない。39%という数字は改善しているが、AI電力インフラ企業として高バリュエーションを正当化するには、40%台への上昇、さらに売上拡大時にも粗利率が崩れないことを確認する必要がある。
・GAAP営業損失:-$21.7M → -$19.4M → -$41.4M → -$27.8M
営業利益率:-149% → -192% → -567% → -323%
Q4はリストラ・減損費用の影響が大きく、GAAP営業損失は-$41.4Mまで悪化した。Q1は-$27.8Mに改善したが、それでも売上$8.6Mに対して営業損失-$27.8Mなので、P/L上の赤字は非常に大きい。会社のフェーズとしてはまだ「売上成長で固定費を吸収する前」の段階だと思う。
・non-GAAP営業損失:-$10.6M → -$11.5M → -$12.1M → -$11.7M
non-GAAP営業損失はQ4の-$12.1MからQ1は-$11.7Mへ小幅改善した。Q2のnon-GAAP OpExガイダンスは$14.5M〜$15.5Mで、ほぼ横ばい。売上が伸び、OpExが横ばいなら、損益分岐点への距離は縮まる。ここは経営陣が伝えたいポイントだと思う。
・GAAP EPS:-$0.25 → -$0.09 → -$0.14 → -$0.15
・non-GAAP EPS:-$0.05 → -$0.05 → -$0.05 → -$0.04
non-GAAP EPSは-$0.04まで改善した。前四半期の-$0.05からは小幅改善。ただし、まだ黒字化は遠い。今回の決算ではEPSの改善よりも、売上反転、粗利率改善、Q2ガイダンス、AIインフラ売上の伸びを見るべきだと思う。
・営業CF:-$11.2M → -$10.0M → -$8.1M → -$16.4M
営業CFマージン:-77% → -99% → -111% → -190%
ここは弱い。Q1は売上が反転した一方で、営業CFは-$16.4Mまで悪化した。小型赤字半導体企業として、売上立ち上げ前のキャッシュバーンはある程度避けられない。しかし、投資家としては、売上反転だけを見てはいけない。Navitas 2.0が本物なら、今後は高出力市場の売上拡大によって営業CF赤字が薄まっていく必要がある。Q1’26の営業CFは10-Qで-$16.362Mと確認できる。
・CapEx:$0.7M → $0.7M → $0.05M → $0.4M
NVTSはfabless、つまり自社工場を持たず外部製造パートナーを活用する半導体企業なので、CapEx自体は軽い。ここはVRTや大規模クラウド企業とは違う。AIインフラ投資を直接背負う会社ではなく、そのインフラの中に入る電力変換チップ・モジュール側の会社だ。
・FCF:-$11.9M → -$10.7M → -$8.2M → -$16.8M
FCFマージン:-82% → -106% → -112% → -195%
FCFもまだ弱い。Q1のFCFは概算で-$16.8M。営業CF-$16.4Mから有形固定資産取得$0.4Mを差し引いたものだ。現金は十分あるが、現時点ではFCFで自走できる会社ではない。つまりNVTSは、利益やFCFで評価する成熟企業ではなく、2026年から2027年にかけて高出力市場の売上ランプを確認する“変化率の銘柄”だと思う。
・SBC:-$0.9M → $0.5M → $8.0M → $10.3M
SBC / 売上比率:-6% → 5% → 109% → 120%
SBC、つまり株式報酬はかなり重い。Q1’26のSBCは$10.3Mで、売上$8.6Mを上回っている。これは小型赤字成長企業を見るうえで軽視できない。会社の成長と既存株主の1株価値は別物だ。SBCが重く、さらに過去に増資もしている以上、NVTSを見るときは売上成長だけでなく、発行済株式数と希薄化を必ず確認する必要がある。Q1のSBCは10-Qで$10.338Mと確認できる。
なお、Q2’25のSBCがマイナスに見えるのは、LTIP関連の戻し・過去費用の反転が入っているためで、通常の収益性改善として見るべきではない。
・現金及び現金同等物:$161.2M → $150.6M → $236.9M → $221.0M
Q4末に現金が増えているのは、2025年11月に実施したPIPEによる資金調達の影響が大きい。10-Kでは、2025年11月に約14.8M株を$6.75で発行し、約$100Mのグロス調達を行ったと開示されている。
Q1末の現金は$221.0M。会社はno outstanding debtと説明している。ただし、貸借対照表上はリース負債やearnout liabilityなどの負債項目はあるため、ここは「有利子負債に依存している状態ではない」と見るのが正確だと思う。
現在のキャッシュバーンを考えても、すぐに資金繰りが問題になる状態ではない。一方で、資金調達は既に希薄化を伴っている。だから「現金があるから安心」だけで終わらせず、「その現金で高出力市場の売上をどれだけ伸ばせるか」を見る必要がある。
・Q2’26ガイダンス:売上$10.0M ± $0.5M、non-GAAP粗利率39.25% ± 75bp
Q2ガイダンス中央値は$10.0M。Q1の$8.6MからQoQ +16%以上となる。ここは今回の決算でかなり重要。Q1だけの一時反発ではなく、Q2も連続成長を見込んでいるからだ。ただし、前年Q2の$14.5Mと比べると、まだYoYではマイナス。つまり、会社は「底打ちからの回復局面」ではあるが、「前年比で本格復活」にはまだ到達していない。
数字だけを丁寧に見ると、今回のNVTSはかなり分かりやすい。
売上は底打ちした。
高出力市場へのシフトは進んでいる。
non-GAAP粗利率も小幅改善した。
Q2も連続成長を見込んでいる。
一方で、営業赤字は大きい。
営業CFとFCFはまだ弱い。
SBCは重い。
NVIDIA 800VDC関連の量産採用はまだ確認できていない。
だから今回の決算は、「NVTSがAI電力インフラの勝者になった決算」ではない。
正確には、Navitas 2.0が数字に出始めた最初の決算だと思う。
■ NVIDIA 800VDCにおけるNVTSの現在地
今回の決算でも一番整理したいのは、NVIDIAとの関係だ。
NVTSを見るうえで、NVIDIA 800VDCは極めて重要なテーマだ。AIファクトリーが高密度化し、ラック当たりの電力が200kW、さらにMW級へ向かうと、従来の54VDC電力供給では物理的な限界が出る。NVIDIAも公式に、次世代AIファクトリーでは800VDCが必要になると説明している。
この流れの中で、NVTSはNVIDIAの協業パートナーリストに入っている。Navitas自身も、NVIDIAの次世代800V HVDCアーキテクチャに協業すると発表している。
ただし、ここを過大評価してはいけない。
パートナーリストに載ることは、量産採用とは違う。
NVIDIAの800VDCエコシステムには、Navitas以外にも複数の半導体企業や電源・インフラ企業が並んでいる。800VDCは1社の部品ベンダーで完成するものではない。AIファクトリー全体の電力アーキテクチャであり、電源、配電、変換、冷却、ラック設計、コネクター、標準化、PSU、DC-DC、SSTまで広く関係する。
つまり、NVTSは外野ではない。
しかし、独占的な勝者でもない。
ここをはっきり書くべきだと思う。
NVTSは、NVIDIA 800VDCの候補群に入った。
しかし、量産設計で勝ったとはまだ言えない。
その中でNVTSが狙うのは、GaNとSiCを使った電力変換の領域だ。
GaN、つまり窒化ガリウムは、高周波・高密度の電力変換に向く。ラック内部やGPU近傍で高密度に電圧を落とすDC-DC変換では、GaNの高速スイッチングが効きやすい。
SiC、つまり炭化ケイ素は、高電圧・高耐久の電力変換に向く。AC-DC PSU、グリッド、SST、より高電圧のインフラ側ではSiCが重要になる。
NavitasはこのGaNと高電圧SiCの両方を持つことを、自社の競争優位としている。10-Kでも、NavitasはAIデータセンター、エネルギー・グリッド、性能コンピューティング、産業電化に集中し、GaNとSiCの両方を持つことが高出力市場で重要だと説明している。
この構造は面白い。
AIファクトリーをNVDAのGPUだけで見ると、NVTSは見えにくい。
しかし、AIファクトリーを「演算密度」「電力供給」「変換効率」「冷却」「グリッド接続」まで広げて見ると、NVTSの狙う場所が見える。
NVDAが演算の中心。
VRTが冷却・電力設備。
GEVや電力インフラ企業がグリッド側。
その間で、電力を効率良く変換する部品・モジュールの候補にNVTSがいる。
この位置取りは面白い。
ただし、面白いことと、今すぐ大きく持つことは違う。
■ AIインフラがQ1反転の中心だった
今回、もう一つ重要なのは、単に全社売上がQoQ +18%だったことではない。
決算コールで経営陣は、AI infrastructure、つまりデータセンター+グリッドの組み合わせがQ4からQ1で約50%成長したと説明している。
これはかなり重要だと思う。
なぜなら、全社売上のQoQ +18%だけを見ると、単なる小型株の反発にも見える。しかし、その中でAIインフラが+50%伸びているなら、Navitas 2.0の中心テーマである「AIデータセンターと電力グリッドの接続」が、数字として立ち上がり始めている可能性があるからだ。
ここは前回の仮説を強める材料になる。
前回、私はNVTSを単なるスマホ充電器企業ではなく、AIファクトリーの電力変換ピースとして見ていた。今回のQ1では、少なくともその方向に会社が進んでいることは確認できた。
ただし、ここでも注意が必要だ。
AIインフラ売上の絶対額は開示されていない。
データセンターとグリッドの内訳も開示されていない。
どの顧客に、どの製品が、どれだけ売れたのかも未開示だ。
したがって、+50%という数字は強いが、まだ「絶対額の大きな売上ランプ」とまでは言えない。
ここも次回以降の確認ポイントになる。
■ 何が確認されれば、NVTSは本物に近づくのか
今回、ストレートに整理したい。
NVTSに必要なのは、NVIDIA 800VDCエコシステムの「名前」ではなく、量産採用の証拠だ。
具体的には、以下の順番で見たい。
まず、NVIDIA / MGX / Kyber / Rubin世代のリファレンス設計において、NavitasのGaNまたはSiCが特定の電力変換ブロックに入ること。
次に、Delta、Flex、LiteOn、Megmeet、VertivなどのPSUメーカーや電源システム企業が、NVIDIA 800VDC対応の量産電源にNavitas製品を採用すること。
さらに、Navitas側でAIインフラ売上の絶対額、バックログ、顧客採用、または高出力市場の継続的な売上拡大として確認できること。
最終的には、売上、粗利率、営業CF、FCFに出ること。
ここまで来て初めて、NVTSは「イベント待ち銘柄」から「業績で確認できるAI電力インフラ銘柄」へ進む。
この線引きは非常に重要だ。
Navitas自身も、customer pipelineやdesign winについて、注文、顧客予測、バックログ、将来売上の代理指標ではないと明記している。実際の売上化には、顧客がNavitasを選ぶこと、dual source / multiple sourceの中でどれだけ配分を取るか、顧客qualificationを通過すること、量産開始、量産ランプが必要になる。
つまり、会社自身が「設計案件やパイプラインを、そのまま売上と見てはいけない」と言っている。
だから、今回の記事の結論はかなり明確だ。
NVTSは、NVIDIA 800VDCの候補群に入った。
しかし、NVIDIA 800VDCで量産採用されたとはまだ言えない。
Q1で確認できたのは、Navitas 2.0の売上反転であって、NVIDIA関連売上の本格ランプではない。
ここを曖昧にしない方がいいと感じる。
■ もう一つの重要論点:2027年の供給移行リスク
今回、追加で見ておきたい論点がある。
それは、TSMCからGlobalFoundriesへのGaN製造移行だ。
Navitasは歴史的にGaNウェハーをTSMCに依存してきたが、TSMCが2025年7月1日に、2027年7月にGaN生産を停止する意向を示したと開示している。Navitasは、TSMCからのバッファ在庫確保、Powerchipとの協業拡大、さらに2025年11月に発表したGlobalFoundriesとの長期戦略パートナーシップでリスクを緩和しようとしている。
これはポジティブにもネガティブにも見える。
ポジティブに見れば、GlobalFoundriesとの米国GaN製造は、AIインフラや電力インフラの国策性と相性がよい。米国ベースの供給網を持つことは、NVIDIA、ハイパースケーラー、データセンター電力インフラ向けには競争優位になり得る。
一方で、リスクも大きい。
2027年は、NVIDIA 800VDCの本格量産タイミングと重なる可能性がある。そのタイミングで、GaNの製造移行、8インチ化、供給網の再構築が重なる。もし歩留まり、品質、コスト、認定、量産能力でつまずけば、せっかく設計採用に近づいても、供給責任を果たせない可能性がある。
つまり、NVTSを見るうえでは「NVIDIAに採用されるか」だけでは足りない。
採用された後に、安定供給できるか。
TSMCからGlobalFoundriesへの移行を遅延なく進められるか。
米国製造を強みに変えられるか。
ここも、次回以降の重要な確認ポイントになる。
■ 非線形なコンテンツ増加は本当に起きるのか
もう一つ、今回の決算コールで面白かったのは、経営陣が電力密度の上昇に対して、SiCコンテンツが非線形に増えると説明した点だ。
CEOは、AC/DC PSUが従来の5〜10kW級から、NVIDIAの18.5kW、さらに他のハイパースケーラーでは25〜30kW級へ上がると、電力が約2倍になった時にSiCコンテンツは約5倍になるという趣旨の説明をしている。
これは重要だ。
なぜなら、NVTSの売上成長は単純に「ラック数が増える」だけではない可能性があるからだ。ラックあたり電力が上がり、PSUの電力密度が上がり、変換段が高度化すると、1システムあたりに入るGaN / SiCの金額が増える可能性がある。
つまり、AIインフラの電力密度が上がるほど、NVTSのcontent per systemが非線形に増える可能性がある。
ただし、これもまだ経営陣の説明であり、数字として完全に確認されたわけではない。
実際に見るべきは、今後の高出力売上の伸びだ。売上が$10M、$15M、$20Mへ伸びる中で、粗利率が改善し、AIインフラ売上が加速するなら、この非線形コンテンツ増加の仮説は強まる。
逆に、売上は伸びても粗利率が上がらない、または競合との価格競争で押し返されるなら、この仮説は弱まる。
ここは、NVTSが単なるテーマ株で終わるか、業績銘柄へ移行するかを分ける重要な論点だと思う。
■ 損益分岐点までの距離感
NVTSを見るうえで、もう一つ冷静に置いておきたいのが、損益分岐点までの距離だ。
コールで経営陣は、現在の粗利率とOpEx水準であれば、売上が高い$30M台に乗ると黒字化が見えるという趣旨の説明をしている。
これはかなり分かりやすい。
Q1売上は$8.6M。
Q2ガイダンス中央値は$10.0M。
黒字化が見える水準は、高い$30M台。
つまり、まだかなり遠い。
ただし、Q2以降もQoQ +15〜20%の成長が続くなら、2027年中に損益分岐点が見えてくる可能性はある。逆に、Q2の$10M到達後に成長が鈍化するなら、黒字化時期は大きく後ろにずれる。
ここで重要なのは、売上の水準だけではない。
粗利率が39%台から上に向かうか。
OpExを横ばいに近い形で管理できるか。
SBCと希薄化を抑えられるか。
営業CF赤字が縮小するか。
売上成長だけでなく、固定費吸収とキャッシュバーン改善がセットで出て初めて、NVTSは「夢の銘柄」から「業績で評価できる銘柄」へ進むと思う。
■ 前回の仮説はどこまで確認できたか
前回、私はNVTSについて、Xに記載したのだが、いくつかの買い増しトリガーを置いていた。
①高電力比率の上昇 → non-GAAP粗利率改善
②QoQ成長が2四半期連続で確認
③NVIDIAの次世代ラック設計においてNVTSのGaNが標準採用
今回のQ1で確認できたのは、①の一部と②の一部だ。
高出力市場は売上の大部分となり、YoYで約35%成長した。non-GAAP粗利率も38.7%から39.0%へ小幅改善した。
また、売上はQ4からQ1でQoQ +18%。Q2ガイダンスもQoQ +16%以上の連続成長を見込む。つまり、2四半期連続成長の1本目は確認できた。次にQ2実績で$10M前後に乗り、さらにQ3ガイダンスでも成長が続くなら、底打ちの信頼度はかなり上がる。
一方で、③は未確認だ。
NVIDIAの次世代ラック設計において、NVTSのGaNが標準採用されたとはまだ確認できない。NVIDIAの公式エコシステムに名前はある。NavitasのGTCでのデモもある。しかし、標準採用、量産採用、受注、バックログという証拠はまだ出ていない。
だから、前回の判断を更新するならこうなる。
NVTSは監視対象から、再購入候補に一段戻った。
ただし、買い戻し条件はまだ完全には満たしていない。
これは、かなり大事な整理だと思う。
売った後に上がった銘柄を見ると、どうしても心は揺れる。
しかし、投資判断を悔しさで歪めてはいけない。
NVTSは面白い。
今回の決算で、さらに面白くなった。
しかし、まだ大きく持つだけの条件はそろっていない。
■ NVTSはコアではなく、条件付きサテライト候補
私のポートフォリオの考え方では、コア銘柄に求めるものは「不可逆にモートが拡大していること、またはその可能性が高いこと」だ。
NVDAであれば、CUDA、GPU、NVLink、ラックスケール、AIファクトリー全体に入り込む構造がある。RBRKであれば、AI時代のサイバーリスクに対して「侵入後の復旧」という不可欠なポジションがある。
ではNVTSはどうか。
現時点では、コアにはなれない。
理由は明確だ。
売上規模が小さい。
YoYではまだ減収。
営業CFとFCFは赤字。
SBCは重い。
NVIDIA 800VDCでの量産採用は未確認。
競合も強い。
何よりもモートがまだ浅い。
一方で、サテライト候補としてはかなり面白い。
理由は、AIファクトリーの電力ボトルネックというテーマに対して、NVTSがかなり鋭い位置にいるからだ。AIデータセンターの高密度化が進めば、電力変換の効率、密度、熱、信頼性は重要になる。ここでGaNと高電圧SiCの両方を持つNVTSには、構造的な勝ち筋がある。
ただし、サテライト枠は夢の総量を増やす場所ではない。
限られた資本を、最も時間軸と確度が合う場所に置くための枠だ。そしてコア銘柄を買いますキャッシュマシーンとして機能させる必要がある。
PL、MRVLのような時限的モメンタムサテライトと比較した時、NVTSは現時点ではまだ「イベント待ち」の性質が強い。「イベント待ち」にポートフォリオを寄せすぎないことは、ABUSの機会損失リスクでも深く学んだ。
NVTSはQ1で売上反転は確認できたが、NVIDIA 800VDCの量産採用証拠はまだ出ていない。
だから、私にとってNVTSは、今すぐ大きく買い戻す銘柄ではない。
ただし、ウォッチリストの優先順位は明確に上がった。
Q2で売上$10M前後を達成し、Q3でも連続成長が見え、さらに800VDC関連で量産採用の証拠が出るなら、NVTSは再びサテライト候補として検討する価値がかなりある。
ただ、そこまで待って見極めるのが正しいかは分からない。可能性と時間軸を考慮して、角度の高いサテライトとして早期に判断して投資する可能性は常に残しておく銘柄だと思う。
■ 今回の結論
今回のNVTS決算は、かなり重要だった。
Q4が死の谷の底だった可能性は高まった。
Q1で売上は反転した。
高出力市場へのシフトも進んだ。
AIインフラはQ4からQ1で大きく伸びた。
non-GAAP粗利率も小幅改善した。
Q2も連続成長を見込んでいる。
ここまではポジティブ。
しかし、NVIDIA 800VDCの文脈では、まだ「候補」から「量産採用」へ進んだとは言えない。
NVTSは、NVIDIA 800VDCエコシステムの中に名前がある。これは重要だ。
しかし、その名前が売上、受注、バックログ、FCFに変わるには、まだいくつもの段階がある。
さらに、2027年に向けてはTSMCのGaN生産停止とGlobalFoundries移行という供給サイドの実行リスクもある。NVIDIA 800VDCの量産期と製造移行が重なる可能性がある以上、これは見逃せない。
今回の決算を一言でまとめるなら、こうだと思う。
NVTSは、死の谷を越え始めた。
しかし、AI電力インフラの勝者になったわけではない。
NVIDIA 800VDCの候補群には入ったが、量産採用はまだ確認できていない。
だから、私の判断は変わらない。
追う価値はある。
ただし、今すぐ大きく持つ必要はない。
NVTSは、監視対象から再購入候補に戻った。
しかし、買い戻す理由は株価上昇への悔しさではない。
Q2、Q3でNavitas 2.0が本当に売上、粗利、キャッシュフローへ変わると確認できた時だ。
投資では、面白い銘柄を全部持つ必要はない。
大事なのは、どの銘柄を、どのフェーズで、どのロットで持つかだ。
NVTSは今、再び面白くなった。
だが、まだ大きく持つ銘柄ではない。
■ 次回チェックポイント
* Q2売上が会社ガイダンス中央値の$10.0M前後に乗るか
* Q3ガイダンスでもQoQ成長が続くか
* non-GAAP粗利率が39%台から40%台へ向かうか
* 高出力市場の絶対額または構成比が追加開示されるか
* AIインフラ売上のQoQ成長が継続するか
* NVIDIA / MGX / Kyber / Rubin関連でNavitas採用の具体的証拠が出るか
* Delta、Flex、LiteOn、Megmeet、VertivなどPSU・電源システム企業経由の量産採用が確認できるか
* customer pipeline / design winではなく、受注・バックログ・売上として確認できるか
* 800VDC関連で「サンプル」から「qualification」「量産設計」「量産ランプ」へ進むか
* CEOが示した高い$30M台の売上水準、つまり損益分岐点への距離が縮むか
* 営業CFとFCF赤字が縮小に向かうか
* SBCと発行済株式数の増加が抑えられるか
* TSMCのGaN生産停止に対するGlobalFoundries移行が遅延なく進むか
* 現金$221Mを使って、希薄化ではなく売上成長を生めるか
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