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入稿明けの編集者が、ドSな鍼灸師の「酸素カプセル」と「深部鍼」で強制再起動された夜。【真面目マッサージ】


序章:フリーズ寸前のポンコツPC人間

私の体は、処理落ちしてカーソルが動かなくなった旧型のパソコンみたいだ。

四十歳、雑誌編集兼DTPオペレーター。

締め切り前は編集部に泊まり込み、パイプ椅子を並べて仮眠を取り、エナジードリンクで脳を騙しながらマウスを握り続ける。

私の右手は、もうマウスの形に形状記憶されていて、指を伸ばす方法を忘れてしまった。

手首から肘にかけては、常に高熱を持った鉄板が入っているように痛むし、モニターへのめり込みすぎで肩は内側に巻き込まれ、呼吸は浅い。

部屋は散らかり放題、私の体もバグだらけ。

「一度、電源を切りたい……」

そんな私が、藁をもすがる思いで予約したのは、業界人の駆け込み寺と噂される鍼灸院だった。

第一章:身体の編集長、現る

鍼灸院の扉を開けると、そこは消毒液と新しい畳の匂いがする、静謐な空間だった。

「……予約の佐々木さんか。顔色がCMYK全部抜けたみたいな色してるぞ」。

現れたのは、白衣を着た五十代くらいの男性。整えられた白髪交じりの短髪、鋭い眼光。

優しそうなヒーラーというよりは、締め切りを守らない作家を追い込む「鬼デスク」か「編集長」といった雰囲気だ。

「部屋、汚いだろう。体が散らかってる人間は、部屋も散らかるんだよ」。

初対面で図星を突かれ、私はぐうの音も出ない。

「今日はそのデタラメなレイアウト、俺が全部赤字(修正)入れてやるから覚悟しろ」。

その厳しくも頼もしい言葉に、私は「はい、お願いします。もう煮るなり焼くなりしてください」と、ボロボロの原稿(体)を差し出した。

第二章:【酸素カプセル】高気圧で脳のキャッシュをクリアする

「まずはその酸欠の脳みそに、酸素を叩き込む。話はそれからだ」 先生に促され、部屋の奥に鎮座する白いカプセル型の装置へと案内された。

まるでSF映画に出てくるコールドスリープ装置だ。

「入って。気圧上げるから耳抜きしろよ。60分、外界との通信は遮断だ」

カプセルの中に横たわると、プシューッという音と共に蓋が閉められた。

密閉された空間。でも、不思議と閉塞感はない。

柔らかいマットの感触と、小さな窓から見える天井。 機械が低い唸りを上げ始めると、飛行機が離陸する時のような、鼓膜が内側に押される感覚が襲ってきた。

これが「気圧が上がる」ということか。

言われた通りに唾を飲み込み、耳抜きをする。 シュコー、シュコーという吸排気音だけが響く世界。

最初の数分は「締め切り大丈夫かな」「メール返したっけ」なんて思考がノイズのように走っていた。

しかし、気圧が安定し始めると、変化が訪れた。 血液の中に、直接気体が溶け込んでいくような感覚。

ドロドロに淀んでいたインク(血液)が、サラサラの溶剤で薄められていくようだ。

指先や足先が、じんわりと温かくなってくる。 何より、脳がクリアになる。

締め切りのプレッシャーでパンク寸前だった脳内のメモリが、強制的に解放され、キャッシュが削除されていく。

泥のように重かったまぶたが、自然と閉じる。 私は、深い深い海溝へと沈んでいく潜水艦の中で、久しぶりに「何もしない時間」という贅沢な眠りに落ちていった。

第三章:【下肢への鍼】土台のレイアウト崩れを修正する

一時間の酸素浴を終え、カプセルから出ると、視界の解像度が一段階上がっていた。 「顔色が少し戻ったな。

だが、本番はここからだ」 先生は私を施術台へと誘導し、うつ伏せになるよう指示した。

「手首が痛いからって、手だけ診るヤツは三流だ。

あんたの場合、土台の足からガタガタなんだよ」 先生の大きく温かい手が、私のふくらはぎに触れた。

先生は、アルコール綿で私の足首周辺をサッと拭いた。

ひんやりとした感触。

「いくぞ」 トントン、という軽いタッピングのあと、スッと何かが入る感覚があった。

痛みはない。

髪の毛ほどの細さの鍼だというが、刺されたことさえ気づかないほどだ。

しかし、次の瞬間。 ズゥーーーン……。 足の奥底から、重く鈍い響きが湧き上がってきた。

これが、鍼特有の「響き」か。

「冷えてるな。血流のポンプが錆びついて止まってるぞ」 先生は、刺した鍼を指先で微かに回転させた。 すると、その響きが波紋のように広がり、冷え切っていた足先へと電流のように走った。

私の足は、立ち仕事ではないけれど、座りっぱなしで圧迫され、血流という情報の伝達が途絶えていたのだ。

先生は、アキレス腱の近く、膝の裏、そして太ももの裏側へと、リズミカルに鍼を打っていく。

鍼が打たれるたびに、私の体の中でバラバラになっていたパーツが、一本の線で繋がれていくような感覚を覚える。

「足首が固いと、その歪みが腰にきて、最終的に首を絞める。まずはここを緩めないと、原稿(体)は完成しないんだ」

先生の言葉通り、足に鍼を打たれているだけなのに、なぜか呼吸が少し楽になっていくのが分かった。

第四章:【背面の鍼】巻き肩という「誤植」を正す

脚への施術が終わり、いよいよ背中から肩へのアプローチだ。

DTPオペレーターの職業病、「巻き肩」。 モニターに顔を近づけ、キーボードを叩く姿勢は、背中を丸め、肩を内側へと巻き込ませる。

「ひどいな。肩甲骨が背中に埋没してる。これじゃあ肺が圧迫されて息も吸えんわ」

先生の手が、私の肩甲骨の内縁(背骨との間)をグイグイと探る。

「ここだ」 狙いを定めた場所に、鍼管(しんかん)が当てられる。

トン。 スッ。 ズドーーーン!

「うっ……!」

思わず声が出る。

足とは比較にならない、強烈な響き。 まるで、錆びついたボルトに潤滑油を差し込み、レンチで回されたような衝撃だ。

「効いてるな。そこが諸悪の根源、菱形筋(りょうけいきん)だ」

先生は容赦ない。響きが逃げないように、鍼をそのまま留め置く(置鍼)。

背骨の両脇に沿って、等間隔に鍼が並んでいく。 それはまるで、乱れた背骨のラインに、正しい位置を示すための「トンボ(印刷の合わせマーク)」を打たれているようだ。

鍼が刺さった状態で、先生は私の肩を軽く揺らした。

すると、凝り固まっていた筋肉が、鍼を異物として認識し、排除しようとして収縮し、その反動で一気に緩む現象が起きた。

バリバリッ、と背中の強張りが剥がれ落ちるような錯覚。

「よし、これで背中が開いた。やっと酸素が入るスペースができたぞ」 呼吸をするたびに、背中の皮膚が上下に大きく動くのが分かる。

縮小コピーされていた私の背中が、A3サイズへと拡大された気分だ。

第五章:【腕への深部鍼】マウス腱鞘炎の「バグ」を修正

「さて、メインディッシュだ。その使い物にならない右腕を出せ」

私は右腕を横に投げ出した。

先生は、私の肘から手首にかけての筋肉(前腕伸筋群)を、指の腹で丁寧に触診する。

「パンパンだな。常に力が入って、筋肉が窒息してる」

特に痛むのは、肘の外側から手首にかけてのライン。 クリックするたびに酷使される、短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)だ。

「ここに打つ。ちょっと響くぞ、我慢しろ」

トン。

皮膚を貫く感触。そこから、先生は鍼をミリ単位で深く進めていく。

筋肉の層を分け入り、痛みの震源地である深層のコリ(トリガーポイント)を探り当てる。

ビクッ!

私の意思とは関係なく、中指が勝手に跳ねた。

「ヒットだ」

その瞬間、肘から指先まで、稲妻が走ったような感覚が突き抜けた。

痛い。

けれど、それは「傷つけられる痛み」ではない。

「そこ! そこが痒かったの!」と叫びたくなるような、核心を突かれた快感に近い痛み。

「筋肉が短縮して、骨を引っ張ってるんだ。この緊張をリセットする」

先生は鍼を上下に動かし(雀啄術)、凝り固まった筋肉に微細な傷をつけていく。

この傷を修復しようとして、血流が一気に集まってくるのだという。

ジワジワジワ……。

冷たく乾いていた私の右腕に、熱いお湯が通ったように血が巡り始める。

それは、インク切れで擦れていたプリンターのヘッドに、新しいインクが充填されていくような感覚だった。

「次は親指の付け根だ」 スマホやマウスのホイール操作で酷使される母指球。

ここにも、容赦なく鍼が入る。

手のひらは感覚が鋭いので、チクリとした痛みが走る。

しかし、刺さってしまえば、あとはジンジンとした温かさが広がるだけだ。

カチカチに固まっていた親指の付け根が、鍼の周りから溶けるように柔らかくなっていく。

形状記憶合金のように固まっていた私の右手が、本来の「肉と骨の手」に戻っていく。

第六章:【置鍼と休息】強制シャットダウン

全身に鍼を打った状態で、そのまま15分ほど放置される。 「置鍼(ちしん)」の時間だ。

部屋の照明が落とされ、遠くで静かなピアノ曲が流れている。

全身に20本以上の鍼が刺さっているのに、痛みはもうない。

むしろ、鍼というアンテナを通して、体の中に溜まっていた静電気が空中に放電されていくような感覚だ。

体は重力に逆らうのをやめ、ベッドに深く沈み込んでいる。

酸素カプセルの効果も相まって、意識がまた遠のいていく。

まどろみの中で、私は自分の体が「再構築」されているのを感じていた。

乱れたレイアウトが整えられ、誤字脱字が修正され、色調補正が行われていく。

バラバラだったデータが、一つの美しい入稿データとして統合されていく……。

「……よし、終わりだ」

先生の声で、現実へと引き戻された。

鍼が一本ずつ、丁寧に抜かれていく。

抜かれるたびに、体の留め金が外され、自由になっていく気がする。

終章:再起動完了、バージョンアップした私

施術台から起き上がると、世界が明るい。

肩が軽い。首が回る。 何より、右手が軽い。

恐る恐る右手を握ったり開いたりしてみる。 指先まで神経が通い、滑らかに動く。

痛みというノイズは完全に消去されていた。

「……部屋、片付けろよ。そうすれば再発は防げる」

帰り際、先生はぶっきらぼうにそう言って、ミネラルウォーターを渡してくれた。

その顔は、無事に入稿を終えた部下を見送る上司のように、少しだけ優しかった。

外に出ると、夜風が美味しい。

肺の底まで空気が入ってくる。

私は深く深呼吸をした。

私の体は今、最新のOSにアップデートされたばかりの新品のマシンのようだ。

これなら、次の締め切りも、もっと良い仕事ができる気がする。

まずは帰って、散らかった部屋の「編集」から始めよう。

私は軽くなった右手でカバンを握り直し、足取り軽く駅へと向かった。

😴他のマッサージのお話(小説タイプ)😴

これまで自分が受けてきたマッサージなどのリラクゼーション系の施術をヒントに、深いリラックス効果を得られるような文章を目指していけたらと思っています。

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真面目マッサージで、あなたの眠りが良いものになりますように…😴

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