子犬のような男性セラピストのアロマ施術:営業女子の再生ログ【真面目マッサージ】
外回り営業女の宿命
午後7時、駅のホーム。 冷たいビル風が吹き抜ける中、私は電車の到着を待っていた。 43歳、不動産営業。 私の足元は、今日も「戦闘靴」である10センチのピンヒールだ。
「こちらの物件、駅から少し歩きますが、その分静かで環境が良いんですよ」 「南向きのリビングは、休日のブランチに最高です」
今日一日で、何軒の物件を案内しただろう。 お客様の前では、常に「明るく、頼れるプロ」の顔。 階段の上り下り、坂道の多い住宅街の往復、そして契約へ向けてのプレッシャー。 今月のノルマという見えない重石が、肩と背中にズッシリと乗っかっている。 笑顔でハキハキと喋りながらも、パンプスの中では、足の指が悲鳴を上げ、ふくらはぎはパンパンに膨れ上がり、ストッキングが肌に食い込んでいた。
電車に乗り込み、窓に映る自分の顔を見る。 口角は下がっていないけれど、瞳の奥に「ドッ」とした疲れが沈殿している。 呼吸はいつの間にか浅くなり、鎖骨のあたりで止まっているようだ。
「……はぁ」 誰にも気づかれないように、小さく息を吐く。 40代。キャリアは積んだけれど、その分、弱音を吐ける場所は減った。 「疲れた」なんて言えば、「だから女性は」と言われそうで怖かった。
私はスマホを取り出し、以前から気になっていた隠れ家サロンの予約画面を開いた。 「今夜だけは、誰も知らない場所で、ただの肉体に戻りたい」 そんな逃避願望が、私をその場所へと突き動かした。
子犬のような男性セラピスト
駅からタクシーでワンメーター。 都会の喧騒を離れた路地裏に、そのサロンはひっそりと佇んでいた。 重厚な木の扉を開けると、そこは別世界だった。 ふわりと漂う、イランイランとオレンジの甘く切ない香り。 照明は極限まで落とされ、揺れるキャンドルの炎だけが足元を照らしている。
「お待ちしておりました。〇〇様ですね」
現れたのは、驚くほど整った顔立ちの青年だった。 名前は、ハルさん。 サラサラの茶髪に、少しタレ気味の大きな瞳。 まるでホストクラブのナンバーワンのような華やかさがありながら、纏っている空気はどこまでも柔らかく、清潔感に溢れている。 「はじめまして。今日は、たくさん歩かれたんでしょう? お足元、辛そうですね」 彼はそう言って、屈託のない笑顔を向けた。 その笑顔の破壊力たるや。 普段、ピリピリした業界で「戦う男たち」を見慣れている私にとって、彼のような「無防備な優しさ」は、ある種の劇薬だ。
「ええ、もう……足が棒のようで。背中もバキバキなんです」 「お任せください。僕の手で、その棒をマシュマロにして差し上げますから」 キザな台詞なのに、彼が言うと不思議と嫌味がない。 むしろ、今の私にはその甘さが心地よかった。
案内された個室は、完全なプライベート空間。 高級ホテルのような設えの中に、温められたベッドが鎮座している。 私はバスローブに着替え、フットバスに足を浸した。 「まずは、温めていきましょう」 ハルさんが、跪いて私の足を洗ってくれる。 大きな手が、冷え切った私の足を包み込む。 恥ずかしいくらい浮腫んだ足を見られるのが嫌だったけれど、彼は「頑張った証拠ですね」と、愛おしそうに撫でてくれた。
アロマの洗礼、強圧の快・感
ベッドにうつ伏せになり、顔をタオルに埋める。 「まずはアロマトリートメントで、溜まった老廃物をガツンと流しますね。僕、見た目より力持ちなんで、覚悟してくださいね」 耳元で囁かれる声に、ドキリとする。 背中に垂らされたのは、ジュニパーとサイプレスの、デトックス効果の高いブレンドオイル。 人肌よりも少し温かいオイルが、背中全体に広げられていく。
「失礼します」 次の瞬間、ハルさんの親指が、私の背骨のキワ(脊柱起立筋)に、深々と突き刺さった。 「……っくぅ!」 思わず声が漏れ、シーツを握りしめる。 痛い。けれど、たまらなく気持ちいい。 「ここ、自律神経のスイッチです。気が張ってると、ここが鉄板みたいになるんですよ」 ハルさんの指は、私の背中の鎧を一枚一枚剥がすように、強烈な圧でスライドしていく。 ただ押すだけではない。筋肉の繊維を捉え、コリの芯を粉砕するような、的確すぎるアプローチ。 可愛い顔をして、指先はゴリラのように力強い。そのギャップに、脳がクラクラする。
肩甲骨の内側。営業スマイルで固まった菱形筋に、彼の拳(ナックル)が入り込む。 ゴリゴリ、ジャリジャリ。 体の中から、砂利を踏みしめるような音が響く。 「うわぁ、音すごいですね。これ全部、我慢の塊ですよ」 「ハルさん……そこ、効きます……!」 「もっと流しますよ。呼吸、止まってますよ。吐いてー」 彼のリードに合わせて息を吐くと、背中の緊張が嘘のように解けていく。
そして、問題のふくらはぎへ。 「これは……すごい。パンパンですね」 ハルさんの大きな手のひらが、私のふくらはぎを鷲掴みにする。 オイルをたっぷりと塗り込み、足首から膝裏に向かって、一気に押し流す。 「い、痛いっ!」 「痛いですよね。でも、ここを通さないと、明日歩けなくなっちゃいます」 彼は容赦しない。 親指の腹を使って、ふくらはぎの中心ラインを、下から上へと削り上げる。 まるで、彫刻刀で余分な木を削ぎ落とすような作業。 血管の中で滞っていた古い血液が、強制的に心臓へと送り返されていく。 痛みの波が来るたびに、足先がカッと熱くなり、血流の奔流を感じる。
太ももの悲鳴と、甘い励まし
「さて、ここからが本番です。太もも、いきますよ」 ハルさんの手が、太ももの外側、大腿筋膜張筋と呼ばれる部分に置かれた。 ここは、立ち仕事やヒールで重心が外に逃げている人が、最も硬くなる場所だ。
ググッ……! 「ぎゃっ!!!」
今度は本当に悲鳴が出た。 「痛い! ハルさん、そこ、骨!? 骨を削ってるの!?」 「骨じゃないですよー。筋肉とセルライトが固まってるんです。ここをほぐさないと、足のライン綺麗にならないですよ」 ハルさんはニコニコしながら、体重を乗せてグイグイと押し込んでくる。 激痛。まさに激痛。 太ももの肉を雑巾絞りにされ、さらにその上からアイロンをかけられているような感覚。 営業ノルマのプレッシャーよりも、この痛みの方が数倍強烈だ。
「痛い……もう無理……」
「頑張って。あと少し。〇〇さんなら耐えられます。あんなに仕事頑張ってるんだもん、これくらい余裕ですよ」
甘い声で励まされながら、容赦ない激痛を与えられる。 このアメとムチの状況に、私の理性が崩壊していく。 「ううぅ……」 涙目になりながら耐えていると、ふと痛みがフッと軽くなる瞬間が訪れた。 「あ、抜けた」 ハルさんが呟く。 岩のように硬かった太ももの筋肉が、ついに降参して柔らかくなったのだ。 その瞬間、ドッと汗が吹き出し、全身の力が抜けた。
ロミロミの海、とろける魂
「よく頑張りました。偉い、偉い」 ハルさんは、子供をあやすように私の背中を優しく撫でた。 「ここからはご褒美タイムです。ハワイのロミロミで、全部溶かしますからね」
タッチが変わる。 指先の鋭い刺激から、腕全体を使った「面」の圧へ。 ハルさんは、自分の肘から下を私の肌に密着させ、波が打ち寄せるようなリズムで、全身を包み込み始めた。
太ももの裏からお尻、そして背中へ。 途切れることのない、長く、ゆったりとしたストローク。 「ザザザー……ザザザー……」 まるで、私の体が波打ち際になったような錯覚。 さっきまでの激痛が嘘のように、今はただ、温かいオイルの海に漂っている心地よさだけがある。 ハルさんの体温と、オイルの滑らかさが混ざり合い、私の肌と彼の腕の境界線が消えていく。
「力、抜いていいですよ。全部、僕に預けて」 その言葉に甘えて、私は完全に脱力する。 ロミロミ特有の、ダイナミックな揺らぎ。 それは、母親の胎内にいた頃の記憶を呼び覚ますような、根源的な安らぎだ。 強張っていた背中の筋肉が、オイルを吸い込んでふっくらと柔らかくなっていく。 呼吸が、自然と深くなる。 吸って、吐いて。 お腹の底まで酸素が行き渡り、細胞の一つひとつが歓喜しているのが分かる。
「気持ちいい……」 無意識に言葉が漏れる。 「ふふ、とろけてますね。いい顔してますよ」 ハルさんの腕が、私の首筋から肩を通り、指先までを流れるように撫で抜ける。 その動きに合わせて、私の中にあった焦りや不安、孤独感が、指先から黒い煙となって出ていくようだった。 ノルマも、上司の顔も、明日のアポイントも。 今はもう、どうでもいい。 ただ、この温かい波に身を任せていたい。 意識が、黄金色の蜜の中に沈んでいく。
脱ぎ捨てた鎧、新しい私
「……おはようございます。ゆっくり、こちらの世界に戻ってきてくださいね」
ハルさんの優しい声で、私は深い微睡(まどろみ)から浮上した。 目を開けると、キャンドルの炎が優しく揺れている。 「私……寝てました?」 「ぐっすりでしたよ。寝顔、可愛かったです」 ドキッとする言葉をサラッと言ってのける彼に、少しだけ頬が熱くなる。 でも、それ以上に驚いたのは、体の軽さだ。
起き上がって、ベッドから足を下ろす。 「えっ……?」 足が、軽い。 重りを外したなんてレベルではない。足が羽になったみたいだ。 床を踏みしめると、足の裏全体がしっかりと地面を捉えている感覚がある。 背筋が自然と伸び、呼吸が胸のつかえなく、スゥーッと入ってくる。
着替えを済ませ、パンプスに足を入れる。 「嘘……」 来る時はあんなにキツくて痛かったパンプスが、今はカパカパと隙間ができている。 指先が自由に動く。ふくらはぎの張りは完全に消滅し、足首がキュッと引き締まっていた。 鏡を見ると、そこには疲れ切った「おばさん」ではなく、血色が良く、目がキラキラと輝く「いい女」がいた。 憑き物が落ちたような、スッキリとした表情。
待合室に戻ると、ハルさんがハーブティーを用意してくれていた。 「お疲れ様でした。パンプス、緩くなりました?」 「ええ、もうビックリ。魔法みたい」 「魔法じゃないですよ。〇〇さんの体が、本来の力を取り戻しただけです。でも、無理しすぎないでくださいね。辛くなったら、また僕がいつでも受け止めますから」 彼は最後に、子犬のような笑顔で手を振ってくれた。
サロンを出て、夜の街を歩く。 空気は冷たいけれど、体の中はポカポカと温かい。 ヒールの音も、行きよりもずっと軽快に響く。 「カツ、カツ、カツ」 そのリズムは、自信に満ち溢れていた。
明日、またこの街を歩き回るだろう。 理不尽なこともあるし、プレッシャーに押しつぶされそうになることもあるかもしれない。 でも、大丈夫。 私には、この「隠れ家」がある。 そして何より、今の私は、鎧を脱いでも十分に強く、美しい。
「よし、明日も頑張ろう」 夜空を見上げると、ビルの隙間に一番星が光っていた。 私は深く息を吸い込み、家路についた。 今夜は、泥のように眠るのではなく、幸せな夢を見ながら、深く、穏やかに眠れそうだ。
ありがとう、ハルさん。 その甘いマスクと、ゴリラのような強烈な指圧、そして海のようなロミロミに、最高の愛を込めて。
😴他のマッサージのお話😴
これまで自分が受けてきたマッサージなどのリラクゼーション系の施術をヒントに、深いリラックス効果を得られるような文章を目指していけたらと思っています。
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真面目マッサージで、あなたの眠りが良いものになりますように…😴
