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80年代前半の粗野と艶

まだ日本が元気だった80年代に異彩を放ち、隆盛を極めた角川映画を振り返るシリーズ。今回は1981年の名作「スローなブギにしてくれ」の記憶と魅力についての2日目。

夏のある日にひとり人の女とふたりの男(浅野温子さん演じるさち乃、山崎努さん演じるムスタングの男、古尾谷雅人さん演じるゴロー)が出会って始まった物語が秋へと向かう頃には、浅野さんが乱暴に扱われるシーンが増えていきます。いらだつゴローに嫌なこと言われて押し倒され、離婚という現実に娘を奪われた失望で荒れるムスタングの男にキスされ押し倒され。

当時の映画は濡れ場が売り物だったのは事実ですが、この映画では全て必然の欲情に感じますし、浅野さんが濡れ場を通してどんどん艶を増して色っぽくなっていくのも事実。ただ、現在のジェンダー意識の中では性的搾取となるでしょうし、男尊女卑の世相は時代遅れに感じたのもまた事実。

しかし、濡れ場を通して浅野さんだけでなく古尾谷さんと山崎さんの色気も増し、物語はより味わい深く人間模様を深めていきます。ともに傷つきながらも、素直に女性に甘えられない男の弱さがいいんですよね。

とりわけ、衝動的で粗野なゴローを全力の演技で見事に表現した古尾谷さんが素晴らしく、やたらとモテる山崎さんと浅野さんの絡みが中心になった映画中盤でも存在感が薄れません。オカマの店長ともめて吉野家クビになるシーンはゴローの性格が過剰にではなく生々しく伝わってきました。

あと余談なんですが、ムスタングの男と離婚する奥さんとの間の子でピアノの発表会で演奏し、父である山崎さんに演奏を録音したテープを渡した女の子は、のちに「おしん」で国民的大ブームを起こすことになる小林綾子さんだったのですね!

さすが角川映画、子役やちょっとした役でも確かな実力者やのちの大物ばかりが出演されていて気が抜けません。ちなみにムスタングの男と離婚する奥さんの間に座っていた弁護士を演じたのは伊丹十三さんとのことです。

物語の中盤からはゴローの紹介でさち乃が働き始める「クイーンエリザベス」もまた多士済々の魅力的な俳優さんが目白押しとなります。味のあるマスターは室田日出男さん、常連客に鈴木ヒロミツさんや岸部一徳が登場し映画に華を添えています。

しかし、この店で際立つのは何といっても、ゴローとムスタングの男との関係の中でさらに洗練されて磨きのかかった浅野さんの華ですね。美しいのはもちろんのこと、ぷくっとほっぺたを膨らませるシーンの可愛らしさも絶品、いよいよ浅野さんのための映画であることが鮮明に印象付けられていきます。

長くなりましたので続きは次回に。


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