夜のブランコ 11
新学期と言えど、もう三年生で次にどんなイベントがあるか子ども達はよくわかっている。
四月の終わりに、一時間半くらい歩いて学年みんなで遠足に出る。お弁当と水筒と少しの遊び道具を持って行列を作り、土手の上を並んで歩いたその先に隣町の川ベリ公園へ向かう。
三年生総勢67名、担任、副担任、教頭先生、合わせて74名の行進だ。
歌い出す子どももいれば、もう嫌だと座り込む子どももいる。
だいたいこの頃には、あまり慣れていないこどもも居なくなり、元同じクラスの仲間や今のクラスの仲間と入り交じり交流が始まっている。
徒歩遠足はその集大成で、学年全体がまとまるイベントだ。
川ベリ公園に着くと、まずクラスで点呼を取る。班ごとに集まり全員いることを班長さんが担任と副担任に報告に行く。
「先生!四班六人全員居ます。」
安西君はいつでも元気で正義の味方だ。
「紘子先生、二班五人揃いました。」
夏実は、おかっぱの髪を揺らしながら走ってやってくる。
「三班、六人到着しています。」
春陽はいつも簡潔だ。
「一班は!?」
亘理くんが走ってやってきて、
「先生、彼方がトイレから帰ってこないっ」
みんなが彼方待ちだ。(笑)
あの子の自由度はクラスを笑顔に変えて行く。
公園の端にある公衆トイレから、彼方が出てくると亘理くんが走って来て紘子に言った。
「彼方、出てきた!一班も五人居ますっ」
みんなが、わははと笑っているところにのんびり彼方がやってきて
「何?なんで笑ってるの?」と言うと、さらにわははと笑い声があがる。
「はい。全員揃いました。教頭先生に私から報告します。自由行動!公園からは出ないようにね!!」
リュックの中から、縄跳びのロープを出してきてみんなで繋ぎ始めた。
片側の取手をはずし、外した同士を結ぶ。
五本繋いで、出来た出来たとはしゃいでいる。
体の大きな安西くんと亘理くんがそれぞれ両端を持ち、ぐるぐる回しはじめた。
いちばん背丈の小さな青木永美が、タイミングを体ではかりながら「行きまーすっ」と言って真ん中に入った。
次々、背丈順なのかそれとも自由行動なのか永美を真ん中にして一人一人加わった。女子が多い。
10人くらい入ったところで孝太郎が「行きまーすっ」と入る。
もうだいぶ端っこだけれど体を器用に折り曲げてジャンプしている。
「21!22!23!」
「あ、痛た!!」
誰かが引っ掛かったらしい。笑い声が起こり
「もう一度!!」
と、声がする。
子どもは元気だ。紘子は長縄跳びをしているメンバーを水筒のアイスコーヒーを飲みながら、眺めていた。
教頭先生が紘子の隣にやってきて、長縄跳びのメンバーに孝太郎が入っているのを見て安心したように紘子に言った。
「大丈夫そうですねえ。鈴木くんは。」
紘子は子ども達を見つめたまま「はい。」とうなづいた。
孝太郎は毎朝、彼方、永美、夏実と同じ通学班で学校にやってくる。他のクラス、他の学年とも一緒だが問題も起きず仲良くやっている様子だ。
特に永美と馬が合うようで、永美は算数が苦手で紘子のように九九で苦労して、いまだに紘子の合格シールをもらえてないので算数の得意な孝太郎に教えてもらっているようだ。
もうまもなく、九九表を見ないでも言えるようになるだろう。
そうしたら、特大の合格シールを永美と孝太郎にプレゼントしようと紘子は考えている。
「さっ!みんなごはーん!お弁当食べましょう!その前に点呼取りますよ!!」
一組は滑り台の前に。
二組は真ん中あたりに。
三組は土手からの入り口にいちばん近いところにそれぞれ集まって各クラスの副担任に点呼を取られた。
お弁当があちこちで開けられる。
たまご焼きのたくさん入った子。
から揚げも入っている子。
いなり寿司やチャーハンの子も居る。
子ども達は班も、クラスも入り交じりきゃいきゃい言いながら頬張っている。
遠足は生徒の交流の場だけではない。
初めて同じ学年の担任、副担任を担当している先生もいるのでこの場を使って交流する。
ようやく新三年生の「新」が取れてくる頃だ。
つづく
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