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夜のブランコ 13

遠足、連休が終わり、皆通常業務で動き始めた5月7日月曜日。
紘子は今日の四時間目の学級会で週末にある授業参観の科目をみんなで決定してみようと提案した。
皆で決めた科目なら、宿題を忘れたり授業中ふざけたりして笑われたりすることがないかも知れないと思ったのだ。
朝の会の時紘子は教壇に立ち子ども達に言った。

「今週の金曜日は五時間目に、授業参観があります。先生考えてみたんだけどなんの授業にするかみんなで決めませんか。今日の四時間目、学級会の時に話し合いしたいと思っています。みんな!考えておいて下さいね。」

教室の中がざわざわした。
あっちでも、こっちでもうれしそうな顔をして話をしている。
紘子も少しそれを眺めて「はいっ一時間目。国語!教科書出して!」と言った。


「教科書13ページ。今日から詩の授業です。」
連休前木曜日の三時間目が国語だった。
その授業終わりに紘子は休み中に13ページから始まる、金子みすゞの「わたしと小鳥と鈴と」の朗読の練習を休みの間にやってくるように子ども達に言っておいた。

「音読の練習、おうちをでやった人!」

あ、忘れてた!
しまった!!
覚えてたけどやってない!!
しっかりやった♥

いろんな顔がある。
紘子は一人一人顔を見ていって、「手を上げて!」と、言ってみた。

案の定、班長さんになっている四人。
青木永美、は手をあげた。
そしてあと一人、鈴木孝太郎が小さく、ほんとにこれ以上ないくらい遠慮しながら、手を上げている。
練習はしたが、自信がないのだろう。

「あれれ?困ったなあ。次の国語は明日の五時間目ですよ。明日の五時間目までにはきちんと音読練習してきて下さいね。」
紘子が言うと子ども達が返事をした。

「最初は私が読みます。よく聞いて読み方がわからない漢字にふりがなふって下さいね。」

紘子は教科書を左手に持ち子ども達の机の間を歩きながら13ページからの詩を読み始めた。


わたしと小鳥とすずと。

金子みすゞ

わたしが両手を広げても
お空はちっともとべないが
とべる小鳥は わたしのよやうに
地面を速く走れない。

わたしがからだをゆすっても
きれいな音は出ないけど
あの鳴るすずは わたしのやうに
たくさんな唄は 知らないよ。

すずと小鳥とそれからわたし
みんなちがって みんないい。


「さ!なにかわからないところがありましたか?周りの人と話し合ってみて下さい。」
子ども達がわいわい話をしている間に、紘子は板書した。
なるべく大きく、はっきりと。
漢字には大きくルビをふり、習っていない漢字はピンクのチョークでまるをつけた。
両、速、このふたつだ。

「やうってなに!?」

はいはい、それから?

「唄って歌と違うの?」

それでそれで?

「ゞってなに!!」

それね!

「まず、みんなのギモンに答えますね!」
紘子は「やうに」を2ヵ所ピンクのチョークで線を引いた。
まず、「やうに」は「ように」と読むこと。
日本語は何年も、何百年も使われていくうちにみんなが使いやすいように少しずつ変わってきた。と言うこと。
「やうに=ように、を使って後でなにかおしゃべりしてみましょうね!」
みんながノートを書いているうちに、黒板の空いているところに「歌」「唄」「詩」と3つの漢字を書いた。
「歌」は二年生のときに習った漢字だ。ちゃんと覚えているか確認したら、言い答えが帰ってきた。
「センセー!唄って、うちのばあちゃん、長唄やってるの。唄の字こっちだよ!」

お、居た居た♥

「そう!長唄の唄はこっちね!この漢字は学校では習いません。でも、みんなのおじいちゃん、おばあちゃんは民謡や長唄、三味線や詩吟、やってたりするでしょう?
日本の昔からある音楽に関してこの唄という漢字を使っている場合があるの。
歌、という漢字とまた持ってる意味が少し違うのよ。またお勉強しましょう。」

最後に「詩」と書いたのはこの授業から習う漢字なのもあったが、歌うように詩を読んで欲しかったし、詩を読むように音楽の時間に歌って欲しかったからだ。

最後の「ゞ」をどう説明しようかと思っていた。昨年度も本年度も二年生を教えている佐々木先生の「ノマテン」を説明し始めた。

「去年、佐々木先生のクラスだった人!」

五人が手を上げた。

「佐々木って、真ん中の字どんな字だか書ける?」

手を上げた生徒に空中で「ノマテン」を書かせてみた。

「そうね!その通り!」

紘子は黒板に「ノマテン」を書いて、その上に佐々木の「佐」を、下に「木」を、キイロのチョークで書いた。

「佐々木先生の々もみすゞのゞも前の字と同じです。と言う意味です。ただみすゞの最後の字には『す』と同じだけれど、点々がついてるでしょ?々だと『みすす』になっちゃう。点々を付けて同じ、という意味のゞを使ったのね。」

「みすずって最初からすればよかったじゃん!」

そら来た!


子ども達から出るであろう質問を想定して、答えを準備する。
毎日戦いだ。
特に国語は。
言葉に敏感になる年齢なのかも知れない。
覚えなければならない漢字も増え、語彙が増え
「なんで」と「どうして」を解決したい子ども達に応えていかなければ。
なんでも、ひとつひとつ解決していく。
解決できたときの喜びを分かち合えるように。


つづく

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#三年生国語
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#ゞ
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