雨の果て_虹の向こう
皆様、こんにちは。
アップルティーでございます!
早いもので、「雨シリーズ」も
いよいよ最終話となりました。
ここまで読んでくださった皆様、
本当にありがとうございます。
前回のお話はもう読んでいただけましたでしょうか?
まだの方は、ぜひ先にそちらをどうぞ。
今回も「雨」をテーマにしていますが、
これまでよりも少し壮大に、
そして美しく描くことを意識しました。
読んでくださるあなたの心に、
大切な人の面影がそっと浮かぶような
——そんな物語になれば嬉しいです。
それでは、どうぞ。
雨の果て_虹の向こう
降り続いていた雨がようやく弱まり、
アスファルトの上に水たまりが
いくつもできていた。
信号の光がその水面に映り込み、
ゆらゆらと揺れている。
僕はその光の中を、ただ歩いていた。
傘も持たず、濡れるままに。

行くあてもないまま、気づけば駅の方へ向かっていた。
昨日、彼に別れを告げた。
悠真は、来週から関西の支社に転勤する。
「遠距離でも、大丈夫だよ」
そう言われたけれど、僕には
どうしても信じられなかった。
彼のことを疑っていたわけじゃない。
ただ……
“離れても平気なふりをする自分”が、怖かった。
何かを失っても笑ってしまうような
自分になりたくなくて、
僕は先に手を離した。
「ごめん。俺、たぶん無理だ。」
その言葉を言った瞬間、
悠真の目がほんの少しだけ揺れた。
けれど彼は、いつものように穏やかに笑った。
「そっか。……そしたら、またいつか。」
――またいつか。
その“いつか”が来ないことを、僕らは知っていた。
ホームのベンチに座り、濡れた靴を見下ろした。
ポケットの中には、今日拾ったばかりの文庫本。
表紙が濡れて少しよれている。
たぶん誰かが置き忘れたのだろう。
けれど、手放す気にはなれなかった。
タイトルも知らないその本の重さが、
なぜか心を落ち着かせた。
電車の到着を知らせるアナウンスが流れる。
構内に吹き込む風が、どこか冷たい。
視界の端がにじむ。
僕は袖でそれを拭った。
そのとき――
「……こんなとこで何してんの。」
聞き慣れた声がした。
ゆっくり振り向くと、
そこに悠真が立っていた。
スーツの肩口が少し濡れて、
髪に雨粒が光っている。

「行ったんじゃないの?」
「行くつもりだった。
なのに……ホームに立ったら、動けなくなった」
呆れたように笑うその顔が、
懐かしくて胸が痛んだ。
「傘も差さずに、ずっとここに?」
「うん。……たぶん、まだ
言えてないことがあるんだと思う。」
悠真は一歩近づき、僕の目をまっすぐ見つめた。
「俺さ、遠くに行っても、毎日お前のこと考えると思う。」
「……そんなの、ずるい。」
「ずるくても、言いたかった。
俺、まだお前のことが好きだよ。」
空気が震える。
駅のざわめきも、雨の匂いも、
すべて遠くに霞んでいく。
彼の声だけが、世界の中心に残った。
「……俺だって、好きだよ。」
ようやく、それだけが言えた。
胸の奥が熱くて、息が詰まりそうだった。
悠真は少し笑って、
「ほら、やっぱり。」と言いながら、
濡れた指先で僕の髪をそっと撫でた。
その瞬間、袖口から覗いた銀の指輪が、
かすかに光った。
言葉にはしなかったけれど、
その輝きが“過去を赦した”ように見えた。
雲の隙間から光が差した。
雨粒が金色に変わって、
ホーム全体が淡い光に包まれる。
「……虹、出てるよ。」
「うん。」
しばらく黙って見上げていた。
雨がやんだあとの空って、こんなに広かったんだ。
悠真が小さく笑った。
「なあ……もう少しだけ、隣にいていい?」
「うん。」
手をつないだ。
もう何も言わなくても、伝わる気がした。
電車がホームに滑り込む。
車体に映る虹の光が、ゆっくりと揺れている。
――雨の果て、虹の向こう。
そこに続く道を、僕らは静かに歩き出した。

あれから、季節はいくつか巡った。
悠真は関西で忙しく働き、
僕はこの街で静かな日々を続けている。
連絡を取り合うことは少なくなったけれど、
月に一度、決まってメールが届く。
件名はいつも「空」。
添付された写真には、
どこかの街の空が映っている。
雨上がり、夕暮れ、夜明け前――
どれも、少しだけ僕の街と似ていた。
僕も短く返信する。
「こっちも、今日は晴れたよ。」
それだけの言葉で、なぜか心が満たされる。
離れていても、同じ空の下にいる。
その確かさが、日々の支えになっていた。
今日も、雨がやんだ。
風が頬を撫でていく。
冷たさの奥に、どこか懐かしい匂いが混じっていた。
信号の水たまりが揺れ、光がきらめく。
ポケットの中でスマホが震える。
「――こっちも、虹が出てる。」
その文字を見た瞬間、
頬を撫でた風が少しだけ温かくなった。
遠い空の下で、僕らは今も同じ風を感じている。

最後に
いかがでしたでしょうか。
物語の最後には、虹を登場させました。
長く降り続いた雨がようやく止み、
空が晴れていく様子に、
二人の関係の変化を重ねています。
「止まない雨はない」という言葉の通り、
この世に永遠に続くものはありません。
それは、雨だけでなく——
意味のない争いも、どうしようもない不安も、
悲しみから流れる涙も、
すべてはいつか、静かに終わりを迎えます。
争いは、いつか解けてゆく。
不安は、いつか消えてゆく。
涙は、いつか枯れてゆく。
この物語を通して、あなたの心にも
小さな虹がかかりますように。
そして、いつでも帰ってきてくださいね。
私はここで、あなたを待っています。
☔️ちなみに、この「雨シリーズ」はまだ少しだけ続きます。
それぞれの物語の“その後”を描いたアフターストーリーを、
来週から順にお届けする予定です。
どうぞ、お楽しみに。🌈
来週からは、新シリーズが始まります!
また新しい世界でお会いしましょう。
頑張るぞ〜〜〜♪
まったね〜〜〜♪
Xでも、イラストの練習を投稿したりしてます。
是非、そちらも覗いてみてねん♪
Geminiとイラスト練習中!!!イメージ通りのイラスト作るのって難しいなぁ!!
— アップルティー (@appleteasweet77) November 4, 2025
こんな感じのイラストを使ってBL短編小説書いてます!もし、気に入ったら遊びに来てください。只今、雨シリーズ執筆中!明後日には、もう1話更新するぞぉーー!!💪( `ω´ 💪) https://t.co/ENMnjOeoJL pic.twitter.com/ITJJhYXT2v
