【ビート詩12編】
◾️はじめに
ビート文学と深層心理学は僕の血に滔々と流れてます。
ビート風の詩を編みました。
ビートの火種を絶やさないために。
もっとビート詩を描きたいなあ。
◾️「ペリカン」
砂漠にさまよう
年老いた少年の
麦わら帽子
ちぎれたサンダルを
ぶら下げながら
親指を突きだす彼女
メキシコの国境線
地平線まで広がる
トウモロコシ畑
俺は亡霊を抱きしめながら
透明のバス停で
バスが来るのを待っている
◾️「視えない男」
休日に何をしているのかって?
言葉と格闘しているのさ
いいかい?
読書や執筆する姿を
人前に晒すんじゃないぜ。
視えない男でいること
それこそが
才能の在り処さ。
◾️「ガチョウの羽」
花も水もいらないぜ
それなら
くそでもぶっかけてくれよ。
俺の墓には
ガチョウの羽だけでいい。
人生とは詩と散文さ。
その女の腕に
抱かれて眠るんだ。
セクシーな
白鳥の夢を見ながら。
◾️「言葉」
言葉なんて
糞を垂れるのと
おんなじ
俺の脳みそが
捻り出したもの
魂が吸いこんだ後の
養分の残り滓
発酵して
肥やしにもなる
庭に撒いとけよ
よく芽吹くぜ
◾️「春をひさぐ」
俺の言葉は
女に貢ぐもの
文学の素養がいるかって?
いらないね
種は
土に蒔けば芽が出る
恋は理屈じゃない
直感で
花弁が開く
◾️「コメディアン」
お前のヒールで
踏みつけられたい。
俺の顔に唾を吐いて
思いつく限りの
汚い言葉で
俺を罵ってくれ。
そして、
軽蔑した目で
俺を見下してほしい。
もう二度と
立ち直れなくなるほど。
その後で
優しく俺に
口づけを
せがんでくれないか。
それくらいがちょうどいい。
こんな夜更けに
お前をくすりとも笑わせられない
惨めなコメディアンには。
◾️「ホーボー」
どこにもない国境に続く
ハイウェイを
とぼとぼと歩く。
ネオンが切れそうな
モーテルの
軋んだベッド
天井を見上げながら
古ぼけた写真を
ポケットから取り出す
初恋の面影を
探していた少年は
いつしか
無精髭と皺を刻んだ
ホーボーになっていた。
◾️「夜明け前」
今にも崩れそうな
オンボロ車に乗って
海に向かう
おまえの幽霊に会いに
下手くそな替え歌と
返しそびれたエロ本を
助手席に
乗せて
俺の調子っぱずれの
DJは
夜更けまで続く
お前は海を見つめ
黙ったまま
◾️「夜の都会のクジラ」
夜の都会の
クジラを探している
カフェやバーや路地裏を
うろつき回ると
ふと水面を掠める。
咄嗟に銛で突くが
すぐに逃げられてしまう。
その残された痕跡を
スケッチするのさ。
しかし長年追い続けて
気づくことがある。
この夜の都会が
丸ごと飲み込まれている。
この幻影こそが
クジラの胎の中であり
夜な夜な、俺たちは
カンテラを手に
その中を彷徨ってる
亡霊なんだ
◾️「ヘアーの話」
雨の降りしきる夜だった
いかがわしいネオン街で
可愛いゴーストに出会った
俺から声をかけた
名前を尋ねると
ベティ(仮)と言った
何とはなしにホテルへ行った
ふたりずぶ濡れだったから
髪はピンク色で
ショートボブ
後ろは刈り上げてた
まだあどけなさの残る
ロリータフェイスに
ぼんやり開き気味の唇
俺は惚れるしかなかった
すべすべした素股に茂る
ヘアーを撫でながら
色々なことを話した
なぜか自分のことばかり
夢中で話していた
ベティの話は
ぼんやりとしか覚えていない
足先にキスをして
ふたりで転げるほど笑った
途中、会話に間(ま)があくと
何度もキスを交わした
いつしか俺は眠っていた
すね毛を剃り忘れた
シンデレラみたいに
目が覚めると
ベティの姿はなかった
俺の空っぽの財布が
床で気絶していたぜ
彼女のことは何も知らない
部屋に残されたのは
シーツの染みと
彼女の縮毛だけ
雨の都会の
夜のフラミンゴさ
◾️「象徴と表現のはざまで」
男は、夜毎
小さなモーテルで
女を呼ぶ。
あやしいネオンの
路上に潰れた
カエル
寝息を立てて眠る
女の横で
椅子に座り
魚のシンボル図鑑を眺める
象徴と表現のはざまで
男は生きる
サングラスの奥では
別の自分を演じながら。
◾️「リサイタル」
焼きたてのパイのような
詩と散文を
ポケットに詰め込んで
リサイタルを開く。
俺がお前に
そっと語りかけると
足元を照らす
スポットライト。
光に煙る靄(もや)の向こうで
揺れるお前の影。
お前はいつも
小さな拍手をくれた。
涙なんて似合わないって
窓際でそっと
カーテンがゆれている。
今日も俺は
誰もいない舞台に立ち
ポケットをまさぐる。
今はもう
空っぽのベッドには
小さな猫が一匹
静かに佇んでいる。
