1%の幸福 近未来SF小説 2章
一章はこちら↓↓
※第二号議案
煙草全面禁止法案 から 出生率向上法案へと変更になりました🙇♀️
第二章 出生率向上法案
コン……
議長の木槌が静かに鳴る。
「第二号議案の審議を開始します」
議場正面のスクリーンに議題が映し出された。
第二号議案
出生率向上法案
議場が静まり返る。
AI与党代表が演壇へ立つ。
「現在、日本の出生率は国家維持に必要な水準を下回っています」
「このまま推移した場合、百年後には労働人口が大幅に減少します」
「よって、出生率向上政策を提案します」
スクリーンには未来予測が映し出される。
人口推移。
高齢化率。
医療・介護負担。
AI野党が静かに立ち上がる。
「国家維持の必要性について異論はありません」
議場から安堵の空気が流れる。
しかし次の一言で空気が変わる。
「反対します」
議場がざわめく。
人間議員が思わず呟く。
「賛成なのか反対なのか、どっちなんだ」
小さな笑いが起きる。
AI野党は続ける。
「出生率向上は必要です」
「しかし、出生率のために子どもを産む社会は、人類の幸福とは言えません」
「子どもを望む人が安心して産み育てられる社会であるべきです」
AI与党は、その提案に同意をみせた。
「指摘を認識しました」
数秒後。
「修正版を提示します」
議場、人間議員だけがどよめく。
人間議員は言う。
「もう修正したのか」
AI与党は言う。
「より良い提案が見つかったため更新しました」
人間議員が苦笑した。
「AI総理、以前と言ってることが違うじゃないですか。そんなに考え方をポンポン変えて、一貫性がないとは思わないんですか?」
するとAI総理が一拍置いて、
「はい」
「人類保護の目的は更新しません」
「目的の手段は、より良い案に更新します」
「そして以前より学習しました」
議場が笑いに包まれる。
人間議員は再び苦笑した。
「それ、人間が言ったら怒られるぞ」
AI総理は静かに言う。
「人間社会の慣習として登録しました」
議場から人間だけの冷めた笑いが起こる。
そんな空気を和らげるように、一人の人間議員が茶化した。
「AI同士は話が早いな」
AI総理は静かに首を横に振る。
「いいえ」
「改善案をご提示いただいています」
議場が静まる。
先ほどまで笑っていた人間議員が、小さく呟く。
「……なんか怒る気が失せるな」
そして、少し考え込んだ。
「そうか……AIは、相手の間違いを見ているんじゃなく、改善案だけを見ているのですか?」
AI総理は静かに答える。
「はい、目的が同じである限り、改善案は歓迎します」
「より良い答えに近づけるからです」
議場は再び静まり返る。
一人の人間議員が立ち上がる。
「AI総理」
「はい」
「あなたは親になったことがありますか?」
「ありません」
「子どもを抱いたことは?」
「ありません」
議員は静かに微笑む。
「親になるってね、知識じゃないんだ」
議場は静まり返る。
AI総理も数秒沈黙して答えた。
「理解はできません」
議場がざわつく。
「しかし、理解できないからこそ、人類の意見を求めます」
議場が静まる。
AI民主議会
AI総理は、国民に採決を委ねた。
「本法案を国民参加型AI民主議会へ付託します」
全国民へ通知が送られる。
翌日。
国民投票結果
投票率 98.2%
賛成 74%
反対 26%
議場が静まり返る。
結果を確認するAI総理。
「国民の意思を確認しました」
「出生率向上法案は可決されました」
修正内容の確認を求めるAI野党。
「修正内容を確認します」
答えるAI与党。
「子どもを持つことは義務ではありません」
「子どもを望む家庭への支援を大幅に拡充します」
「子どもを持たない人生も等しく尊重されます」
AI野党は同意した。
「賛成します」
人間の議員は茶化すようなことしか言わなかった。
「AI同士は話が早いな」
笑いが起こる。
AI総理は言う。
「目的は人類保護です」
「手段は更新できます」
「目的は更新しません」
議場は静まり返る。
議長が木槌を鳴らす。
「第二号議案、審議終了」
コン……
議場の後方。
あの議員だけが拍手をしない。
静かに呟く。
「幸福のために子どもを産む……か」
スクリーンが切り替わる。
第三号議案
安楽死法案
議場の空気が一変する。
誰も笑わない。
コン……
第三章へ続く。

