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表向きは回ってる ―でも、余白はもう0だった ‖ #14-仕組み屋の記録帖

谷川です。

3年かけたシステム導入も無事、稼働成功。
アクアパステルも形になり
これから一歩を踏み出そうとしていました。

2つの道が交わり、
自分の中で手応えを感じ、
ようやく自信を持って進めそう!

そう思った矢先、
人生で最も大きな喪失の1つが始まります。

読み進める方は
そっと心の準備をして、お進みください。



※今回の登場人物は
すべて仮名&当時の雰囲気からつけています。
どうか広い心でお許しください。


🧑‍🤝‍🧑登場人物紹介はこちら 


👇️前回のお話はこちら


📝マイ・ストーリー(パステルアート編)

パステルアートのブログにも当時の内容を掲載しています。
よかったらどうぞ。



📝今回のお話について
さて、前置きが長くなってしまいましたが
今回の話について。



📞 そして、帰社要請

T社さんのシステム導入は無事完了。

今回もやり切った。
ちゃんと、届いた。

そう思えた瞬間でした。
けれど、その直後。

再三のスラップ社から
「帰社要請」に応じることになります。
「とうとう来たか」って。

……正直、いやな予感しかしませんでした。

別れ際、ナビスさんから
こんな言葉をもらいました。

「今までありがとう。
スラップ辞めたら、うち来いよ。笑。」

「こちらこそ。今までお世話になりました。
また一緒に仕事ができたら嬉しいです。」

そして、私はスラップ社に戻りました。


🏢 そこは、知っている会社ではなかった

5年ぶりの帰社。
社内は、ほとんど別会社のようでした。

もう、大阪マネはいない。
薔薇リーダーもいない。
U博士もいない。

ERP事業の新任のマネージャーが
配属先のプロジェクトを案内。

1年前に帰社した「番頭さん」が
率いるプロジェクト。

「番頭さん」は
かつてのERP事業の花園班のリーダー。
その後、10年越しの常駐後の帰社だそう。

依頼先は大手企業の関連会社。
ちょうど基本設計から
開発へ切り替わるタイミングでした。

「まず久しぶりの社内ですよね?
まず慣れてもらうために
軽めの開発タスクを振りますね。」

そう聞いていたのですが――



❄️ 冷え凍える空気

テレビ会議越しに聞こえてくる
客先からの厳しい声。

冷たい。
とにかく、冷たい。
冬のような凍える空気が流れている。

……あれ?

さっきまでいた
「一緒にいいものを作ろう」という
ナビスの熱量を帯びた
あたたかい空気とあまりにも違ってる。

正直、思いました。
なんとなく嫌な雰囲気だな……と。

ここは「対話型の現場」ではなく
「監査型の現場」だと。



🧾 担当は「自動仕訳」

今回の要件説明は
設計を担当した入社2年目の川宮さん。

そして告げられた担当タスク。

債権の自動仕訳。

はい?マジで?!
軽めのタスクじゃなかった?

話を聞くと
要件自体は理解できる。
基本設計は数行だけなのもわかる。
工数感も一ヶ月。
ギリギリできそうなくらい。

でも――

「これ、影響範囲、どこまで見てます?」

「ブリラントの詳細設計を
できる限り、確認して書きました。
あっ、問題ありそうですか?」

……

川宮さんは一生懸命やってる。

でも、この処理は
設計書に書いてない事が多く、
コードまで深く見ないと
正確に影響範囲が掴めない。

フォローする人もレビューする人も
このプロジェクトはいない。
なんで彼女一人に担当させるの?

……

嫌な予感が、確信に変わりました。

――設計の責任を取れる人がいない。
実装者に負荷が来るパターンだ。



🧩 設計書に「書いてないこと」の山

実装に入ると、案の定…

  • パターン分岐の漏れ

  • 例外処理の未定義

  • 設計書に書いていない前提条件

「この取引の場合、どうします?」

「えっと、クライアント様に確認しないと……
設計変更書にこの旨、
書いてもらえませんか?」

え。これから?
しかも変更承認まで数日?


おまけに設計書変更後、
開発再開できるの1週間前後かかるの?
え、え、工数余裕ないのに?

設計変更書が出来上がり、
プロジェクトリーダーの番頭さんに
「申し訳ないのですが…
設計変更を先方にお願いします。」と提出。

その後、社内に設置された
ビデオ通話の端末で番頭さんが客先に確認。
そして、厳しい言葉を受ける。

「基本設計で、なんで見てないんですか?」

……

正直、めちゃくちゃ怖い。

実装を進めるたびに
また、変更が必要なところが。

ーまた、あのやりとり?ー

このやりとりが繰り返されるたび、
開発工数は静かに削られていきました。
 
 


🌫️ 胃にくる現場

このプロジェクトは
常に緊張感がありました。

遅れもミスも理由を問われる。

ドキュメントは
一字一句正しいか徹底チェック。
しかも変更申請書と理由説明の資料作成。
(コレ意味あるの?って思っていました。)

もちろん品質は大事です。

でも、余白のない状態で
それを積み上げると、
現場はどんどん消耗していきます。

大企業。
立場。
責任の重さ。

――胃にきます。

リーダーが謝り続ける姿を見ながら
私は思っていました。

こんな現場、私には無理だ。



🔁 終わらないループ

「〇〇パターンとは違うんですか?」
「……いいえ、違うんです。
この伝票の〇△パターンでして」

何度も、何度も、
同じような説明を繰り返す日々。

説明するたびに期日は削られ、
工数は削られ、
でも「遅れ」の責任だけは残る。

説明すること自体が消耗戦でした。

無限ループ。
終わる気がしない。

期日は迫る。

……はい、残業確定。

遅れを取り戻すため、休日出勤も。
心も体も休まらない。



🌗 表向きは回っていた。でも、実態は限界だった

夜時間と土日はパステルの時間。

ちょうどその頃、
新しい講座を立ち上げようと
1年以上、時間をかけて楽しみつつ
研究したテーマがありました。

やっと形になってきて…
もうちょっとしたらリリースできそう!
あと少し!とワクワクしていました。

なんと、同じテーマを取り扱う先生が…
テーマ自体は私のほうが先行していました。

「一緒に共同研究できたら素敵ね」と
声をかけてくださっていたのですが。

けれど――

本職のシステムのお仕事で、
失敗・遅れが許されない雰囲気。
深夜残業。
休日出勤。
体力も、気力も、時間もない。


とてもではないけど…
この時、私にパステルを
続けられる余裕はありませんでした。

「お先にどうぞ。」

私は引く判断をしました。

「譲った」というより
これ以上抱えられなかった。
このまま続けたら
誰かの刃になるとわかっていたから。

「なんで?」と
ずっと見守ってくださった方から
そっと聞かれたけど…
黙ってこらえるのが精一杯。
 

誰も悪くない。
でも、時期が悪かった。

仕方がない。

今を守るため
「一緒に創作を楽しむ未来」を手放す。

これまでの時間を無にし
そっと降りる決断。

自然と涙が出て、
心の中はぽっかりでした。


あの時は喪失の一面しか
見えなかったけど…

でも、今、振り返ると、
「私が全部抱えなくていい」と
教えてくれた出来事でした。
 
※今はこのテーマも
「そんな時期もあったね」と
思える位置にいます。どうかご心配なく。



🧯 余白ゼロの状態

当時の状態を整理すると、

  • 本業:責任が重く、逃げ場がない

  • 創作:回復源のはずが負担に転じていた

  • 人間関係:調整とフォローが増えていく

すべてが同時進行。

完全に余白ゼロでした。



🏥 体が先に限界を出した

「まだ大丈夫」
「もう少し頑張れる」

そう思おうとしていました。

「風邪かな」と思った症状は悪化し、
咳と発熱が続き、眠れない夜。

それでも、開発は止まれず。

限界で病院に行った結果――
マイコプラズマ肺炎で即入院。

今振り返ると
気持ちが折れたのではありません。

免疫が落ちた。

心より先に体がブレーキをかけた形でした。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
入院が決まった電話で
後輩に自動仕訳の
開発の引継ぎを行いました。

ーできたはずの機能を落とす。ー
そのとき、自分の中で何かが静かに割れました。


当時は気づきませんでした。
でも、今ならわかります。

あのとき――
私は、一度壊れました。


技術者としての誇りも。
創作の純粋な楽しさも。
積み上げてきた時間も。
将来に対するワクワクした可能性も。

音を立てて崩れたわけではありません。

ガラスのように
もう元には戻らない形で
ひびが入っていたのだと思います。
 


✍️ 当時は言語化できなかったこと

あの頃、なぜこんなに苦しいのか。
何が問題なのか。

うまく言葉にできませんでした。

誰かを責めたいわけでもなく、
自分が弱いとも思っていなかった。

ただ一つ
今ならはっきり言えます。

あの時の私は…
個人の努力では
どうにもならない配置にいました。
逃げ場のない中に、
私は立たされていました。

止まる判断ができなかったのではなく、
止まれる余白が
私にはもう残っていなかったのです。

…こんな思いは
二度としたくないし、
させたくはないと思っています。

〜今だから、振り返れた記憶〜


この時に感じた
自分の「余白が残っていない感覚」に
正直になれたことが
今の私を守っています。

 


▶【体制面を見た追記】 2026.05
今の視点から
あらためて振り返った記事を書きました。

当時は「自分が弱かった」と
思っていました。

でも、今、振り返ると…

謝るしかないリーダー
見切れない設計を抱えた若手
受けるしかない開発者が
同じ構造の中で苦しんでいた現場でした。



▶【創作の立場からの追記】 2026.05
この時期の経験を
今のアクアパステルの視点から
あらためて振り返った記事を書きました。

「人の余白を守ること」と
「創作の境界線を守ること」は
つながっている。

そんな今の整理です。




🔜 次回予告

そしてこの状態のまま、
私は最後の「プロジェクト」に
入っていくことになります。

次の話で起きることは、
原因ではなく、結果でした。

そっと心の準備をして、お待ちください。


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