運動学とエネルギーの因果関係 -4-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回は「運動学と仕事の関係」を考えます。物体を動かすとき、その物体には何かしらの「力」が加わります。そこで生じる運動を数学的に定量化した指標のひとつが「仕事」です。
似た意味を持つ物理量に「エネルギー」があります。物理学で扱うエネルギーとは、仕事を行うための能力(可能性)を表す物理量です。単位はジュール(J)が用いられます。
力学を扱うので、物理法則は「ニュートンの運動法則」に従うことは、これまでと同様です。
仕事・エネルギーの定式化
ポテンシャルエネルギーの安定性
エネルギーの保存則
エネルギーと運動方程式の変換 →【今回】
♦️前回記事(再掲)
前回はエネルギー保存則について扱いました。例えば、保存力場では運動エネルギーとポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)の総和を指す「力学的エネルギー」は一定に保たれることを示しました。
これまで、力と運動は主に「運動方程式」を起点に考えました。一方で、力と運動を「エネルギー」を起点に表現する方法として「ラグランジュの運動方程式」の考え方が知られています。
ラグランジュの運動方程式は、学術的には「解析力学」に属する内容で、大学レベルの科目になります。今回は本連載の最後に、エネルギーの記述の応用編として、ラグランジュの運動方程式を扱います。

ラグランジュの運動方程式
ラグランジュの運動方程式とは、力の定式化の代わりにエネルギーの定式化を踏まえて、物体の運動を導く方法です。
数学的な要素が強く、導出過程は長いですが、座標系の取り方を自由に決められるという利点があり、標準的な手順のひとつでもあります。
力はベクトル量であるため、運動方程式を立てる時は個別にベクトルを分解する必要がありました。一方で、エネルギーはスカラー量ですので、ベクトルの分解という行程は実質的に省略可能と言えます。
ラグランジュの運動方程式の導出は、運動エネルギーKとポテンシャルエネルギーUの差分を出発点とします。
$${L=K-U}$$
関数Lを「ラグランジアン」と言います。1次元問題(x軸を指定)の場合は、次式を計算することで、運動方程式を導出します。
$${\frac{d}{dt}\Big(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\Big)-\frac{\partial L}{\partial x}=0}$$
ここでは、変位$${x}$$と速度$${\dot{x}}$$をそれぞれ異なる関数と仮定します。
双方の偏微分を通して、運動方程式を導くことになります。整理すると、次の5ステップで成り立ちます。
変位$${x}$$と速度$${\dot{x}}$$を定義
ラグランジアン$${L}$$を導出
ラグランジアン$${L}$$を速度$${\dot{x}}$$で偏微分
ラグランジアン$${L}$$を変位$${x}$$で偏微分
手順3と手順4の結果をそれぞれ代入
上記のように、ニュートンの運動方程式とラグランジュの運動方程式を同等とした流れで計算を行います。

運動方程式の導出例題
今回は、以前に取り上げたバネと連結した質点運動を例題に、ラグランジュの運動方程式の手順を実演してみます。
バネと連結した質点(小球)を引き伸ばし、静かに手を離すと、質点は往復運動(単振動)を始めます。これらは保存力であり、バネの弾性力によるポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)と運動エネルギーは交換し合う関係にあります。
すなわち、総和(力学的エネルギー)は常に一定に保たれ、状況は変化しても「エネルギー」という物理量は変化しません。
こうした調和状態が振動現象の本質です。その根底には、ラグランジュの運動方程式の導出過程があります。

運動エネルギーKと弾性力によるポテンシャルエネルギーUは、それぞれ次の通りです。
$${K=\frac{1}{2}mv^2}$$ , $${U=\frac{1}{2}kx^2}$$
変位と速度の関係$${v=\dot{x}}$$を踏まえて、ラグランジアンLを計算します。
$${L=K-U=\frac{1}{2}m(\dot{x})^2-\frac{1}{2}kx^2}$$
これより、ラグランジュの運動方程式を偏微分の計算から導きます。
$${\frac{d}{dt}\Big(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\Big)-\frac{\partial L}{\partial x}=m\ddot{x}+kx=0}$$
これより、単振動の運動方程式が導かれました。このことから、力の定式化を踏まえずとも、エネルギーの定式化から運動方程式を導出することも可能と言えるのです。

おわりに
繰り返しになりますが、ラグランジュの運動方程式の強みは、力のベクトルの分解を経ずとも、エネルギーの差分関係を記すことで、同じく運動を規定できることにあります。
これは、解析力学で特に言われている「最小作用の原理」に基づいた考え方になります。
ラグランジアンの時間微分(作用)が最小になるような運動こそが、現実に発生する運動と規定される。
つまり、物理現象は「エネルギーが最も自然に保たれる運動経路」を選択することを、大自然の原則として示しているのです。バネの振動現象に関しても、ひとつの最適な形として、前述した内容が展開されると言えます。
ラグランジュの運動方程式について、今回は簡単な導出例題を取り上げました。より複雑な問題を「特別編」と題して、別途掲載します。
大学レベルの標準的な問題の取り扱いを知ることで、基礎知識も含めてステップアップして頂ければと思います。
今回のテーマはこれで終わりです。このマガジンでは様々な物理的に問題を数学を交えて、伝えていきたいと考えています。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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⭐︎⭐︎⭐︎ プロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎
