運動学とエネルギーの因果関係 -3-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回は「運動学と仕事の関係」を考えます。物体を動かすとき、その物体には何かしらの「力」が加わります。そこで生じる運動を数学的に定量化した指標のひとつが「仕事」です。
似た意味を持つ物理量に「エネルギー」があります。物理学で扱うエネルギーとは、仕事を行うための能力(可能性)を表す物理量です。単位はジュール(J)が用いられます。
力学を扱うので、物理法則は「ニュートンの運動法則」に従うことは、これまでと同様です。
仕事・エネルギーの定式化
ポテンシャルエネルギーの安定性
エネルギーの保存則 →【今回】
エネルギーと運動方程式の変換
♦️前回記事(再掲)
前回は仕事(エネルギー)のひとつ「位置エネルギー」または「ポテンシャルエネルギー」の物理的意味を確認しました。
今回は高校物理で頻出の「エネルギー保存則」について考えます。エネルギーの保存や逸脱という事象は、言葉ではイメージが難しいです。
ここでは、エネルギーの変化を微分積分の観点から考えてみます。これまでの流れを踏まえて、高校物理から大学初期の一般力学の範囲に繋げていきたいと思います。

エネルギー保存則の物理的意味
様々なエネルギーを総和したものを「力学的エネルギー」と呼びますが、力学的エネルギーの保存を思考実験的に考えてみます。
例えば、ボールを前上に高く投げると、ボールが上がるに連れて徐々に減速します。また、頂上から再度落下するときは、徐々に加速が付きます。
運動エネルギーは単純に速度(2乗)に比例するため、ボールが頂上に近づくほど減少します。また、位置エネルギー(重力によるポテンシャルエネルギー)はボールの高さに比例するため、頂上に近づくほど増加します。
この事例で登場する「運動エネルギー」と「ポテンシャルエネルギー」については、基本的にトレードオフの関係にあると言えます。

すなわち、両者の総和に相当する「力学的エネルギー」はエネルギー散逸の要因が存在しない限り、常に一定値を取るのです。
以上がエネルギー保存則の物理的意味です。物体の運動は時間で変化しますが、エネルギーについては関係する物理量(集団)の中で、お互いに授受し合う関係が成り立つのです。

エネルギー保存則の数学的意味
今度は、運動エネルギーと位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)を数学で捉えてみます。
1次元問題を想定して、物体の速度vから導かれる運動エネルギーとポテンシャルエネルギーUを設けます。ここで、速度とポテンシャルエネルギーはいずれも時間tの関数です。
$${E=\frac{1}{2}mv^2+U}$$
左辺に相当する力学的エネルギーEについて、これが保存されるということは、時間に対して一定値を取ることを意味します。すなわち、力学的エネルギーの時間微分はゼロとなります。
$${\frac{dE}{dt}=0}$$
続けて、物体に働く力Fについて考えます。エネルギー散逸(因子)を考えないならば、この力は保存力と言えます。これより、力Fを運動方程式とポテンシャルエネルギーのそれぞれの観点から記述します。
$${F=m\frac{dv}{dt}}$$ , $${F=-\frac{dU}{dx}}$$
上記は力Fを通じて等式的に結ばれます。
$${m\frac{dv}{dt}+\frac{dU}{dx}=0}$$
時間tの関数である速度vを両辺に掛けます。
$${mv\frac{dv}{dt}+v\frac{dU}{dx}=0}$$
両辺を時間tで積分します。すると、左辺は力学的エネルギーEの形が導かれます。また、右辺は任意の定数Cに変形できます。
$${\frac{1}{2}mv^2+U=C\,(=const.)}$$
以上より、冒頭で示した「力学的エネルギーの時間微分はゼロである」ことは数学的にも証明できるのです。高校の授業ではあまり言及されない話ではありますが、物理学を数学(方程式)で捉えることは、理解を深めるときに非常に大切なプロセスだと思います。

エネルギー保存則の不成立要件
先程までは、物体に働く力は保存力であることを前提としていました。しかしながら、現実の物理現象には、摩擦や空気抵抗など「非保存力」が基本的に存在します。
前章までは、運動エネルギーの低下は直接的にポテンシャルエネルギーに渡されるとしていました。非保存力を伴う場合は、運動エネルギーの低下が音や熱など散逸(因子)のエネルギーに置き換わります。
力学的エネルギーEを起点に記述するならば、次の通りになります。
$${\frac{dE}{dt}<0}$$
前述したボールの投げ上げ運動を再掲します。ボールを投げ上げると、重力に伴う減速と同時に、非保存力(空気抵抗)による減速も発生します。空気抵抗が散逸(因子)となり、力学的エネルギーは徐々に減少します。

重力やバネの弾性力などの保存力については、仕事は物体の位置だけに依存します。一方で、非保存力による仕事は物体の位置だけでなく、物体の運動経路にも依存します。
非保存力に対するエネルギー散逸は全体からの差引ですので、負符号で記述します(本来のベクトル表記で表記します)。
$${W_R=-\int{\bm{F_R}\cdot\bm{dx}}}$$
すなわち、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーで構成される力学的エネルギーは、非保存力の影響で一定を維持できない。これが、エネルギー保存則の不成立の意味することです。
ただし、エネルギー散逸を物理的に説明するならば、散逸(因子)はあくまで熱や音などに変換されて周囲に広がるだけであり、実態が消えた訳ではありません。
つまり、力学的エネルギーは散逸を通じて減少したとしても、その場の全体という意味では、エネルギーは常に保存されます。それは、自然界の基本原則とも言えます。

おわりに
今回は運動学と仕事の関係をテーマにお送りします。3回目はエネルギー保存則について、物理と数学の双方の観点から意味を示しました。
散逸を考慮しないエネルギー保存則では、総和(力学的エネルギー)の時間微分がゼロであり、常に一定値を取ります。散逸(非保存力)の影響を加味すると、エネルギー保存則は崩れます。
次回はエネルギー保存則を利用して、前回の機械振動の話など、運動方程式に変換するまでの流れを示してみたいと思います。
仕事・エネルギーの定式化
ポテンシャルエネルギーの安定性
エネルギーの保存則
エネルギーと運動方程式の変換 →【次回】
仕事やエネルギーに関する考え方は、高校物理でも頻出に分野です。基本的な高校の知識に留まらず、発展的な考え方を加えたいと思います。
-------------------------
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
-------------------------
⭐︎⭐︎⭐︎ 谷口シンのプロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎
⭐︎⭐︎⭐︎ ロードマップ ⭐︎⭐︎⭐︎
