運動学とエネルギーの因果関係 -2-
まえがき
微分積分をはじめとする高等数学を踏まえて、様々な物理学に対する見方をテーマを決めて、連載形式で発信します。
今回は「運動学と仕事の関係」を考えます。物体を動かすとき、その物体には何かしらの「力」が加わります。そこで生じる運動を数学的に定量化した指標のひとつが「仕事」です。
似た意味を持つ物理量に「エネルギー」があります。物理学で扱うエネルギーとは、仕事を行うための能力(可能性)を表す物理量です。単位はジュール(J)が用いられます。
力学を扱うので、物理法則は「ニュートンの運動法則」に従うことは、これまでと同様です。
仕事・エネルギーの定式化
ポテンシャルエネルギーの安定性 →【今回】
エネルギーの保存則
エネルギーと運動方程式の変換
♦️前回記事(再掲)
前回は仕事(エネルギー)の基本的な定義を示しました。また、エネルギーとして一般的に用いられる「運動エネルギー」や「位置エネルギー」の定式化も示しました。
位置エネルギーは別称で「ポテンシャルエネルギー」と呼ばれています。これは、物体がある位置に存在することで自ずと蓄えられるエネルギーのことです。すなわち、物体が仕事を行うための潜在的能力を意味します。
今回はポテンシャルエネルギーについて、物理学の視点で深掘りします。

力と仕事の相互関係
力の存在は、単純に仕事(エネルギー)を変化させます。例えば、坂道を転がる物体を考えてみます。重力を介したポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)は物体の標高yに比例します。
$${U=mgy}$$
物体が斜面を転げ落ちるほど、ポテンシャルエネルギーは低下します。すなわち、力(ここでは重力を指します)はポテンシャルエネルギーの低下を埋めるように作用します。
$${F(y)=-\frac{dU}{dy}=-mg}$$
つまり、力FはポテンシャルエネルギーUに対する傾き(微分係数)を意味します。

また、散逸エネルギー(物体の運動に伴い消費されるエネルギー)が存在しないとするならば、ポテンシャルエネルギーの低下は直に運動エネルギーに変換されます。
$${K=\frac{1}{2}mv^2=mg(H-y)}$$
前回も説明した通り、仕事(エネルギー)は物体に作用する力を積分した結果です。これは、先述した内容とも相違しません。

力のつり合いと力学の安定性
ポテンシャルエネルギーの傾き(微分係数)がゼロということは、前述から分かる通り、その場の全体として均衡が取れた状態を意味します。
物体に加わる力の総和(合力)はゼロであり、力のつり合いが成立するということです。そのような状態を指して「平衡点」と呼びます。
例えば、坂道の最も低い地点に球を置くと、球はその場で静止します。そこから球を押しても、すぐに元の位置に戻ります。この状態を「安定」のつり合い状態と言います。一方、坂道の頂上に球を置くと、僅かに揺らぎに対しても球はすぐに転がり落ちます。この状態を「不安定」のつり合い状態と言います。
どちらも静止状態という点は同じですが、物体のその場の安定感は根本から異なります。物体が平衡点からズレた時の戻る力の有無こそが、ポテンシャルエネルギーが本質なのです。

物体の平衡点における安定性は、数学的にはポテンシャルエネルギーの2次微分係数の符号で決まります。
$${\frac{\partial^2 U}{\partial x^2}>0}$$ → 安定
$${\frac{\partial^2 U}{\partial x^2}<0}$$ → 不安定
ポテンシャルエネルギーをグラフにします。ここでは、2次微分係数の正値は下方に凸状態、負値は上方に凸状態を意味します。すなわち、グラフの谷底は安定、山頂は不安定に対応します。

保存力の定義と性質
1次元問題において、力Fは座標xによる1変数関数と仮定します。任意の基準点に対するポテンシャルエネルギーを規定します。
$${U=-\int_{x_0}^x{F(x)dx}}$$
上記の通りにポテンシャルエネルギーを定義できる力を「保存力」と言います。また、上記の通りに定義できない力を「非保存力」と言います。
保存力とは、ポテンシャルエネルギーから自ずと決まる力です。つまり、位置関係だけで力が決まり、それは運動経路に依存しません。

重力やバネの弾性力はこの典型で、どのような経路を通過しても、同じ位置に戻ればエネルギーの変化も同じになるのです。摩擦のように、運動経路に影響される力は保存力ではありません。

おわりに
今回は運動学と仕事の関係をテーマにお送りします。2回目はポテンシャルエネルギーと力学的な安定性について説明しました。
ポテンシャルエネルギーはマクロな領域の運動に留まらず、ミクロな領域の運動にも登場します。力のつり合いも含めて、ポテンシャルエネルギーから運動を考えることが大切です。
次回は高校物理で頻出のエネルギー保存則について扱います。合わせて、エネルギー散逸についても考えます。
仕事・エネルギーの定式化
ポテンシャルエネルギーの安定性
エネルギーの保存則 →【次回】
エネルギーと運動方程式の変換
仕事やエネルギーに関する考え方は、高校物理でも頻出に分野です。基本的な高校の知識に留まらず、少しながらも発展的な考え方を加えられたらと思います。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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