特別編 : ラグランジュの運動方程式の適用例題
まえがき
今回のテーマでは「運動学と仕事の関係」を扱いました。物体の運動学について、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを引用した「エネルギー保存則」を示しながら、物理的な成り立ちを考えました。
上記の過程で、仕事(エネルギー)と運動方程式の関係性を「ラグランジュの運動方程式」を踏まえて説明しました。
♦️当該記事(再掲)
ラグランジュの運動方程式は「解析力学」に属する内容であり、複雑な物理現象を数学的手法を用いて表現するものです。
前回はあくまで取り扱う手順の説明でした。今回は特別編と題して、レベルアップした「円錐バネ振り子」の問題を取り上げます。
力はベクトル量であるため、力の分解から問題を解こうとすると、ベクトルの整理が非常に大変です。今回はエネルギーの表現を利用して、ラグランジュの運動方程式の導出過程を示します。

円錐バネ振り子の概要
天井にバネが固定され、一方には質量mの質点が配置されています。質点運動は円軌道であり、天井に対する鉛直方向とバネのなす角は一定に保たれるものとします。
質点の円運動はx軸とy軸が交わる平面で行われると仮定します。また、同平面の垂直方向をz軸とし、垂線と天井が交わる位置を直交座標系の原点と見做します。
発生する力(保存力)は、質点に発生する重力とバネの弾性力(バネの張力に相当)であり、それらの合力は円運動の向心力に相当します。

一般化座標は$${l(t)}$$と$${\phi(t)}$$に絞られ、これらは時間の関数です。
直交座標系$${(x,y,z)}$$について、次の関係が成り立ちます。
$${x=l\textrm{sin}\theta\textrm{cos}\phi}$$
$${y=l\textrm{sin}\theta\textrm{sin}\phi}$$
$${z=l\textrm{cos}\theta}$$
上記を踏まえて、ラグランジュの運動方程式の導出過程を示します。

各種エネルギーの算出
運動エネルギーとポテンシャルエネルギー(重力と弾性力の両者によるエネルギーの総和)をそれぞれ計算します。
直交座標系$${(x,y,z)}$$について、時間$${t}$$で微分します。
$${\dot{x}=\dot{l}\textrm{sin}\theta\textrm{cos}\phi-l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta\textrm{sin}\phi}$$
$${\dot{y}=\dot{l}\textrm{sin}\theta\textrm{sin}\phi+l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta\textrm{cos}\phi}$$
$${\dot{z}=\dot{l}\textrm{cos}\theta}$$
スカラー量に変換した質点の速度の2乗値$${|v|}$$を計算します。
$${|v|^2=(\dot{x})^2+(\dot{y})^2+(\dot{z})^2=\dot{l}^2+(l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2}$$
以上より、質点の円運動に伴う運動エネルギーは次の通りになります。
$${K=\frac{1}{2}m|v|^2=\frac{1}{2}m\Big\lbrace{\dot{l}^2+(l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2}\Big\rbrace}$$
重力によるポテンシャルエネルギーについて、垂直方向(z軸)の方向を踏まえると、次の通りに計算されます。
$${U_1=-\int_0^z{{mg}dz}=-mgz=-mgl\textrm{cos}\theta}$$
同様に、バネの弾性力よるポテンシャルエネルギーについて、バネの伸縮量から次の通りに計算されます。伸縮量は$${u=l-l_0}$$です。
$${U_2=-\int_0^u{{-ku}du}=\frac{1}{2}ku^2=\frac{1}{2}k(l-l_0)^2}$$
以上より、質点におけるポテンシャルエネルギーは次の通りになります。
$${U=U_1+U_2=\frac{1}{2}k(l-l_0)^2-mgl\textrm{cos}\theta}$$
ラグランジアン$${L}$$は次の通りです。
$${L=K-U=\frac{1}{2}m\Big\lbrace{\dot{l}^2+(l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2}\Big\rbrace+mgl\textrm{cos}\theta-\frac{1}{2}k(l-l_0)^2}$$
ラグランジアン$${L}$$を踏まえて、引き続き、運動方程式を導きます。

運動方程式の導出と深掘り
変数$${l(t)}$$に対して、ラグランジュの運動方程式を導く際の基礎方程式を示します。
$${\frac{d}{dt}\Big(\frac{\partial L}{\partial \dot{l}}\Big)-\frac{\partial L}{\partial l}=0}$$
変数$${l(t)}$$と時間微分$${\dot{l}(t)}$$の偏微分をそれぞれ計算します。
$${\frac{\partial L}{\partial \dot{l}}=m\dot{l}}$$
$${\frac{\partial L}{\partial l}=ml(\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2+mg\textrm{cos}\theta-k(l-l_0)}$$
冒頭に示した基礎方程式に上記を代入します。
$${m\ddot{l}-ml(\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2-mg\textrm{cos}\theta+k(l-l_0)=0}$$
以上より、円錐バネ振り子の運動方程式を導出します。
$${m\ddot{l}=ml(\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2-k(l-l_0)+mg\textrm{cos}\theta}$$
変数$${l(t)}$$に関する運動方程式は以上の通りですが、さらに問題を深掘りしてみます。
ラグランジアン$${L}$$を再掲します。変数$${\phi(t)}$$は時間微分の項が残ります。
$${L=K-U=\frac{1}{2}m\Big\lbrace{\dot{l}^2+(l\dot{\phi}\textrm{sin}\theta)^2}\Big\rbrace+mgl\textrm{cos}\theta-\frac{1}{2}k(l-l_0)^2}$$
先述と同様の手順を辿り、変数$${\phi(t)}$$に関する運動方程式を導きます。
$${ml^2\ddot{\phi}\textrm{sin}^2\theta=0}$$
$${l(t){\ne}0}$$であることは前提であり、$${\ddot{\phi}=0}$$が自ずと導かれます。これは、等速円運動を表しています。
$${\dot{\phi}=\omega_c=const.}$$
また、$${k/m={\omega_0}^2}$$と置き、運動方程式を書き直します。
$${\ddot{l}=({\omega_c}^2\textrm{sin}^2\theta-{\omega_0}^2)l+{\omega_0}^2{l_0}+g\textrm{cos}\theta}$$
下記の不等式を満たすことで、運動方程式はバネの単振動(非減衰振動)の問題に帰着することが分かります。
$${{\omega_0}^2-{\omega_c}^2\textrm{sin}^2\theta>0}$$
これにて、円錐バネ振り子の運動方程式の導出を締めます。こうした「一般化座標」と「エネルギー」を組み合わせたプロセスこそが、解析力学の基本的所作と言えます。

おわりに
今回は特別編と題して、ラグランジュの運動方程式の手順を利用した「円錐バネ振り子」の問題に取り組みました。
力の問題として捉えて運動方程式を立てるとなると、傾斜したバネの弾性力を分解したり、円運動の向心力を極座標的に考えたりなど、整理に苦労することになります。
ラグランジュの運動方程式の方法は、上記の問題を概ね解消できるため、利便性の高いツールと言われています。
現実の理工学的な問題は、複雑な機械または分子運動、電磁力場などを扱います。ただ、いずれも基本は「ラグランジアンを求めて、基礎方程式に代入する」というシンプルな過程です。
取り扱う物理現象の性質次第ですが、今回の内容を活用して物理を捉え直してみると、面白い発見があるかもしれません。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事が、何か皆さんの未来を変えるキッカケになれたら幸いです。
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