自転車バナー

デザインとDTP

〜感性と技術と経験と〜

 周囲を見回してみるとデザインに無関係なものなんてないような気がします。人工的なものであれ、自然の産物であれ、形あるものには必ずデザインの要素があります。果ては形のないものにまでデザイン的な発想が活かされるのであり、普段、意識しているかどうか。ただ、それだけの違いではないでしょうか。そう言う意味では特別なものではないとも言えるでしょう。
 デザインと言うと感情的、あるいは感覚的なイメージを抱くかもしれません。 でも、デザインには「設計」という意味もあるんですね。DTPやデザインの仕事に関わった方ならご存知だと思いますが、デザインやDTPの専門ソフトでは0.001ミリ単位での調節が可能です。印刷物の場合は、印刷で表現できる限界がありますのでそこまで細かい設定は必要ないとも思えます。けれど、文字間や行間の設定は僅かな違いが全体として大きなズレに繋がるので無視できないのです。

 あ、そうそう。DTPっていうのは、Desktop Publishingの略なんだそうです。大きな意味ではパソコンで印刷用の編集する作業を指していると思います。DTPソフトと呼ばれる特定の専用ソフトが精密なレイアウトコントロールを可能にしています。会社によって職種の呼称は様々かもしれません。DTPオペレーターとDTPデザイナーを分類している場合もあります。

 さて、紙面をレイアウトする際には気をつけなくてはならない点がいくつもあります。
 日本語と英語は性質が違うため、扱いも違います。アルファベットを半角にしておけば、フォントによる違いはあるもののパソコン上で自動的に文字間調節されることもあるので便利です。全角の場合は日本語として扱われるために正方形のマスに配置されたように間延びした英文になってしまいます。
 気づかないでいることが多いのは数字の全角と半角。どちらかに統一されていればまだ良いですが、数字が連続していると全角と半角が混在しているのは読み難くもあり不格好でもあります。無論、連続した数字が全角の場合はアルファベット同様間延びした配置になってしまいます。数字の場合は単独で使用する場合がありますので、その都度、適切な選択が必要となります。
 日本語でも漢字の場合は正方形として扱うにしてもひらがなやカタカナは敢えて字詰め処理をすることがあります。インパクトの大きなタイトルなどの場合です。そのまま一文字ずつを正方形として扱うと英数字同様に間延びした感じに見えてしまうからです。そこでデザイナーは文字間を詰めてぎゅっと引き締まった印象にするのです。ここで初めてバランス感覚や感性が問われるひとつの腕の見せ所があるのだと思います。ボクはDTP出身ですが、知り合いのデザイナーさんのお手伝いをした時に「そこまで詰めるの?」と驚いたことがありました。ただ、文字を入力したりテキストデータを流し込むばかりだったボクは目からウロコが落ちた想いでした。デザイナーは、そういう細かい作業を当たり前にこなしているわけです。

 他にも書籍の背表紙の厚さは使用する紙の厚さとページ数に依存します。それを計算して背表紙をデザインしないと表紙の幅が余ったり足りないことになってしまいます。当たり前のことなのですが、細かい数字の積み重ねを考慮しなければならないわけです。ボクはそれが少し苦手でした。製本では定番の折丁というのもよく解っていません。チラシや広告などの1ページ物ではなく複数のページがある印刷物にする場合、一回で複数のページを一枚の大きな紙に印刷しておいて裁断・製本して行くためのものです。製本工程の手間を少なくするため…と認識していますが、パソコン上で各ページを基に上下左右を考えながら配置して行くと言うのは、混乱したり不安だったりするのでボクはあまりやりたくない作業だったのです。今はどうなんでしょう?パソコンが自動的にやって欲しい仕事だなぁと思っていました。
 もともとイラストレーターの募集に応募したものでしたからDTPをやることになると思ってませんでしたし、専門学校の経験どころか印刷の経験もありませんでした。それで印刷物が何たるかということが解っていなかったのです。もっとも、未だに解っているとは思えませんが…。

 その後、ボクは転職をしています。

 ある時、デザイン事務所の面接試験に出かけました。
 そこで合同面接となったのですが、ボクはDTP経験済みなのに対して一緒に面接したのは専門学校を出たばかりの若い人です。作品を提出することになっていて、その人は学校で勉強した文字詰めの課題を提出していました。ボクが提出したのは仕事ではなく自分が好きで作っていた作品でした。そこで使用していたのはパソコン任せの文字詰めで特に調節もしていないものだったのです。
 ところが、先にお話ししたように半角で入力したアルファベットはパソコンが自動的に文字間調節をします。面接官にはデザイン事務所の社長さんが同席していましたが、「パソコンで作ったものの方がいいんじゃない?」と一刀両断。勉強しながら制作した課題を切り捨ててしまいました。少しモヤモヤした気分が残りましたが、ほんの僅かなことが人生まで左右してしまうのです。ボクはいくらかの経験がありました。でも、将来のことを考えると若い彼の方が可能性が大きいのではないかと思えました。少なくても、門前払いのように不採用になってしまえば、いつまでたっても経験などできないのです。結局、ボクは不採用でした。待遇面が良かったので多くの人が面接に詰めかけていましたから誰が採用されたのか定かではありません。

 こんな風に感性の賜物と考えられがちなデザインの仕事は技術や知識によって支えられ、非常に神経を使う作業をまるでツルの機織りのように人知れず取り組んでいるわけです。資格試験がある位なものですから、このお話はほんの一部に過ぎません。問題は、その技術も知識も職種としての評価が必ずしも高くはないことから、極一部の人の知識として培われているということです。たしかにパソコンが普及し、インターネット網が張り巡らされた現代ではちょっとしたチラシやポストカード程度のことは自分で出来るのであり端がとやかく言うことはないのです。ただ、多くの人が目にすることのある文書までが体裁を無視し、美的感覚など無用と言った風情で通用してしまっていることには正直な所、落胆しています。
 学校でも美術や音楽など芸術関係の科目は軽視されがちです。受験対策とは言え、社会でほとんど使うことのない知識を深めるのであれば、少しは芸術分野の時間に回してはどうかと思ったりするのです。コンテンツ産業を伸ばしたいなら尚のことではないでしょうか。

もくじ |  随想 


以下に有料エリア検討中のレイアウト版を掲載します♪



いいなと思ったら応援しよう!