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【宗次郎アルバムレビュー②】1987~1991年『フォレスト』『ハーモニー』『ヴォヤージ』『イメージス』『フレッシュ・エアー』

オカリナ奏者・宗次郎さんのオリジナル・アルバム作品のレビュー記事。
第2回の今回は、1987~91年に発表の、初期サウンドデザイン所属時の後半アルバムを取り上げます。
(↓前回・第1回の記事や、宗次郎さんのCD総目録も、ぜひご参照ください)


◎第5作『フォレスト FOREST』(1987)

ストリングスなどアコースティック(電子音ではない生楽器の音)な響きをふんだんに取り入れた、癒し度満点の、アコースティック・ニューエイジ路線の傑作アルバム。

発売日:1987.11.25(サウンドデザイン)

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和、蓮沼健介(⑧)(JASRAC作品データベース表記による)

①朝の輝き
ギターやストリングス(ヴァイオリン類の弦楽器のアンサンブル)といった、アコースティック・サウンドが心地よく響き、このアルバムの特徴を印象付け、よく物語っている。
『グローリー・幸福』以来の、シンセサイザーではなくアコースティック・サウンドがメインとなるアルバムの、トップを飾る良曲。

②精霊の森
野村證券CM曲。イ短調(短調のメロディーは、哀しい感じやほの暗い印象)のメロディーは、4曲目「道」とよく似ているが、この曲の最大の魅力は、イ長調(長調のメロディーは、明るい感じや爽やかな印象)に転調してからの展開。
秀逸なメロディーとアレンジで、森に木漏れ日が差しているような情景が、目に浮かんでくる。とても美しい曲。
南里高世さん作曲による、サウンドデザイン時代の宗次郎作品としては、「道」とこの「精霊の森」の2曲が最高傑作。

③ハーモニー
次作のアルバムのタイトルが「ハーモニー」だが、それとは無関係。
「ハーモニー」というタイトルは、音楽の和声のことではなく、森や大自然の調和を意味していると思われる。
ストリングスの対旋律がとても美しく魅力的で、まさにオカリナとストリングスが調和し、至高のハーモニーを奏でている秀逸なアレンジの作品。

④道
初期のサウンドデザイン時代の代表曲で人気曲。
比叡山の過酷な修行“千日回峰行”を2度に渡り、満行を達成された高僧・酒井雄哉大阿闍梨に捧げられた曲。
「道」というタイトルは、この修行の道を表しているのだろうと思うが、この曲を聴く、一人一人の人生の“道”を、優しくそして強く勇気付けてくれるような、感動的なメロディーとサウンドが印象的な傑作。

⑤春風のささやき
これまでのアルバムにも必ず、1曲は入っていた“さわやか系”の曲。特に本作の場合、アコースティックな響きで奏でられているので、音にやわらかな優しさも加味され、まさに春風に包まれているような感覚の曲。

⑥白嶺
雄大な広がりを感じさせる美しい曲。
本アルバムでは、ストリングスをアメリカ・ロサンゼルスで録音しているが、そのストリングスの広がりのあるサウンドを、十二分に堪能できる曲。
登山で山頂にたどりつき、眼前に広大な風景が広がったときに、もしこの曲が流れれば(実際には流れてきたりはしませんが…)登頂の感動が倍増しそうな気がする。

⑦悲しみの果て
出だしのメロディーが、のちの『ヴォヤージ』の「エアー」の出だしと似ている。
高校生の頃、宗次郎さんの音楽にそれほど詳しくない友人が、なぜかこの曲を知っていて、不思議に思ったのだが、友人の話から、志村けんさんの番組で使われていたらしいと知った。
自分自身、お笑い番組は見ない人間なので、詳しくはなかったのだが、番組内のシリアス無言劇のBGMで使われていたらしい。

⑧ムーン・ライト
夜想曲という言葉がぴったりの、静かで叙情的な美しい曲。
オカリナとピアノのみという非常にシンプルなアレンジ。後年の『オカリーナの森から』の「森に還るⅡ」を彷彿させる雰囲気の曲。
ちなみに、このアルバムには、キーボードで蓮沼健介さんが参加されておられる。先述の『オカリーナの森から』の他、最近の作品や現在のコンサート活動で、ピアノ・キーボードや編曲を担当されておられるお方である。

<総評>
宗次郎さんの初期サウンドデザイン時代の後半の作品となる、この『フォレスト』から『フレッシュ・エアー』までは、宗次郎さんは作曲には携わらず、主にプロデューサーの南里高世さんが作曲を手がけておられる。

宗次郎さんはオカリナ演奏者としてアルバムに参加し、オリジナル・アルバムではあるものの、事実上は“南里高世featuring宗次郎”と言った方が正確かもしれない。(次に宗次郎さん自身の作曲作品が聴けるのは『木道』を待たねばならない)

とは言え、この『フォレスト』はサウンドデザイン時代の中で、ずば抜けて大傑作のアルバム。

全曲を通じて、心地よいアコースティック・サウンドがあふれ、まさに“音の森林浴”ができる、癒し度満点の作品。

アレンジ(編曲)も、普遍性を感じられるアレンジなので、時代性や流行性を超越し、古さは微塵も感じられない。

前作『心』とこの『フォレスト』が、サウンドデザイン時代の宗次郎作品の最高峰。

次作『ハーモニー』以降は、やや“クセ”があるので、初期の頃の宗次郎さんのCDで、静かで優しいオカリナの音色に癒されたいという方は、『心』と『フォレスト』の2枚を聴けば間違いはない。

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「フォレスト」試聴動画

「道」(4曲目)
※注:CD収録版とはアレンジが異なる、ライブ演奏版の動画です。

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
レコチョク


◎第6作『ハーモニー HARMONY』(1988)

ドラム&ベースに海外アーティストが参加し、リズム・セクションを今まで以上に強化したポップ路線の作品。

発売日:1988.10.25(サウンドデザイン)

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和、柴田敬一(JASRAC作品データベース表記による)

①プロローグ
次曲「サマルカンド」のAメロ(主旋律で1番初めの部分)を、宗次郎さんのオカリナ・ソロを中心にしたアレンジで構成した曲。時間も短く、タイトル通りプロローグ的な曲。

②サマルカンド
プロローグからそのまま続く感じで始まる。シンセサイザーのコード弾き(和音をチャチャチャという感じで、分散させずに弾いている)から、ドラムがビート感のあるサウンドを叩き始める頃には、聴いている人は、このアルバムが、これまでの宗次郎作品とは趣が異なるものだと強く印象付けられる。“ポップ系”作品の一つ。
ちなみに、サマルカンドは、中央アジア・ウズベキスタンの古都。

③めぐり逢い
ニューエイジ音楽で「めぐり逢い」という曲名を見ると、どうしても、カナダのピアニスト、アンドレ・ギャニオンの名曲を思い浮かべてしまうが、この曲はそれとは全く無関係。
とてもメロディアスで美しい曲。前向きな気持ちになれる良い曲であるが、こういう曲調ならば、無理にドラムやベースを入れずに、アコースティックな(静かめな)感じでアレンジした方が、宗次郎さんのオカリナにもよく合うのでは?という感じもする。
せっかく海外アーティストに演奏参加してもらったので…ということだろうか。

④ヒマラヤン・シーダー
2曲目と同じく、ポップ系のアレンジがされた曲。
これは、南里高世さんが作曲したメロディー全般に共通して言えることなのだが、南里高世さんが作曲するメロディーは、どちらかと言うと、必ずしも洗練された、作曲技法的にも“上手い”メロディーというわけではなく、けっこう素人っぽいメロディーラインだったりすることが多々あると思う。(もちろん、全部がそうというわけではないのだが)
なので、この曲のようなタイプのアレンジだと、人によっては、安っぽい印象の曲と感じてしまうこともあるかもしれない。
前作『フォレスト』のような、格調のあるタイプのアレンジならば、その辺りの短所を補完できて、バランスがとれるのだが…。

⑤チチカカ湖
チチカカ湖は、アンデス山脈のペルーからボリビアにまたがる湖。
アンデスということで、メロディーがフォルクローレ調(南米アンデスの民俗音楽・コンドルは飛んで行くが有名)で、宗次郎さんもかなりケーナ風のサウンドを意識して、演奏されておられるのがわかる。
ケーナとは、アンデスの民族楽器の縦笛。
ただ、アレンジ自体はフォルクローレ風というわけではなく、シンセやベース・ドラムをメインにした、ポップなアレンジとなっている。このアルバムの中では一番のお気に入りの曲。

⑥アップル・トゥリー
柴田敬一さんが作曲。
まるで抒情的なミュージカル・ナンバーやラブ・バラード、ゆったりとした抒情歌を思わせるような美しい曲。宗次郎さんのオカリナとピアノ伴奏のみというシンプルなアレンジで、美しいメロディーを歌いあげている。
ドラム・サウンドが続いた後なので、ホッと一息つける、ゆったりとした曲。

⑦ブータンの夢
ヒマラヤの国ブータンの名がタイトルに入った曲。
曲調もエスニック・民族調な雰囲気で、このアルバムの中では、独特の個性を放っている曲。宗次郎さんのオカリナの音色は、この曲のような民族音楽っぽい曲調に、よくマッチする。

⑧虹のかけ橋
柴田敬一さんが作曲。
とても物悲しい雰囲気の曲。内向的に物思いにふけっているかのような曲調。
このアルバム前半の、ポップ路線の曲とは対照的で、エピローグ的な意味も込められているのかも。

<総評>
『心』『フォレスト』の作風を捨てて、ポップなアレンジの路線に入った“南里高世feat.宗次郎”2作目。(このfeat.は、宗次郎さんが作曲に参加されていないという意味で)

ネーザン・イースト(ベース)、マイク・ベアード(ドラム)と、リズム・セクションに海外アーティストに参加してもらい、非常に気合の入ったポップなアレンジにしようとしているのが分かる。

ただ、前作までとは作風も音楽性も、がらりと変わっているので、人によっては好みが分かれるかもしれない。

宗次郎さんのオカリナの音色の、持ち味や特色を活かした、透明感のある静かな癒し系の作品を好む方や、ポップな路線のアレンジが苦手な方には、『ハーモニー』は少し不向きかもしれない。(6曲目「アップル・トゥリー」ならば楽しんでいただけるとは思うが)

ただ、「チチカカ湖」と「ブータンの夢」は良曲。こういうエスニック・民族音楽色を感じられる曲ならば、宗次郎さんのオカリナの音色の持ち味が、活き活きとしているように思われる。

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「ハーモニー」試聴動画
(※この動画では、1曲目の「プロローグ」は収録されておらず、2曲目「サマルカンド」からスタートします)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
レコチョク


◎第7作『ヴォヤージ VOYAGE』(1989)

前作『ハーモニー』から進化し、ロックな風味も感じさせる意欲作。

発売日:1989.10.25(サウンドデザイン)

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和(JASRAC作品データベース表記による)

①ヴォヤージ
プロローグ的なシンセサイザー曲。
喜多郎さんばりの、風のSE(効果音)や広がりを感じさせるパッド音(包みこむような広がりのある音)が心地よい。途中、高音の笛っぽい音が効果音的に入るが、宗次郎さんのオカリナではなく、シンセのホイッスル系の音と思われる。
幻想的・瞑想的な雰囲気の曲。

②風の大地
1曲目の静寂を打ち破るかのようなエレキギターの音に、初めて聴いた時は、飛び上がるくらいにびっくりしたのを覚えている。
スピード感のある激しいドラムのビートに乗って、宗次郎さんのオカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)の高く澄んだ音が、吹き抜ける風を思わせるようなメロディーを奏でる。
『大黄河Ⅱ』のレビューの際、「水舞竜」を宗次郎POPと表現したが、この曲はまさに、宗次郎ROCKと言うべきか。
宗次郎作品全曲の中でも、「風の大地」は最も激しいタイプの曲と言える。宗次郎=癒し系音楽と思っている方は、この曲を聴けば、間違いなくイメージが変わるだろう。
メロディーの出だしの所が、のちの「水心」とちょっと似ている。

③ハイランド
前曲「風の大地」で興奮した精神を、鎮静するかのようなバラード。
サビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーがとても印象的。“ハイランド”は、高原とか山岳地方という意味だと思うが、割りと低音が強めのアレンジで、重厚感がある。

④季節の詩
3曲目と雰囲気が似ているので、たまに聴くと、どっちが「ハイランド」でどっちが「季節の詩」だったか、忘れてしまうことがある。
この曲も、サビのメロディーが中々キャッチーな曲である。
シンセのパーカッション(打楽器)音が効果的に配されたアレンジ・編曲となっている。

⑤オータム・ウィンド
このアルバムで一番のお気に入りの曲。なおかつ、南里高世さんが作曲された宗次郎作品の中では、この曲が一番好きだったりする。 
タイトル通り、まさに風をイメージできる名曲。6拍子系のメロディーが印象的で、秋の哀愁を感じさせつつも、天空へと吹き抜けていくようなサビのメロディーが秀逸。

⑥エアー
オカリナとアコースティック・ギターをメインにしたアレンジなので、シンセ系サウンドが多いこのアルバムの中で、清涼剤的な役割を果たしている。このアルバム『ヴォヤージ』の曲は、サビのメロディーが印象的な曲が多いが、「エアー」もそのタイプ。
オカリナの音色の持ち味を、とてもよく活かした良曲。

⑦フォーリング・スター
このアルバムの中では、割りと平凡な感じのメロディーなので、印象が弱い。
アレンジは個性があってユニークなのだが、サビのメロディーは別として、Aメロ(主旋律で1番初めの部分)が南里高世さん特有(?)の、素人っぽいメロディーラインの曲と言える。

⑧セイリング
この曲の方が、7曲目と比較して“星空”や“宇宙”をイメージできるような曲調なので、こちらを「フォーリング・スター」のタイトルにした方が、良かったのではなかろうか?と、聴く度に思う。
きらびやかなピアノ系の音が、何となく星を連想させるので、そう思ってしまうのかもしれない。ゆったりとしたメロディーが、広大な夜空をイメージさせる。
ラストはエピローグ的に、1曲目「ヴォヤージ」が流れて終わる。航海の終わりが、また新たな航海の始まりにつながる…そんな、ループするような世界観を、感じさせる構成となっている。

<総評>
前作『ハーモニー』のポップ路線を受け継ぎつつ、よりロックな作風に進化させた作品。

ある意味、突き抜ける所まで突き抜けてしまった感がある、“南里高世feat.宗次郎”3作目。

宗次郎さんが作曲を手がけていないオリジナル・アルバムという意味で、“南里高世feat.宗次郎”と表しているが、その中では『フォレスト』に次いで魅力的な作品。

ただ、それなりに“クセ”がある作品なので、宗次郎さんのオカリナの音色やアコースティック(生楽器)な響きに癒されたい…と考えているリスナー・聴衆には不向きな作品。(そういう方には『フォレスト』の方が良いと思う)

『ハーモニー』に続き、アメリカのベーシスト、ネーザン・イーストがレコーディングに参加しており、「風の大地」では華麗なベース・ワークを披露している。

ちなみに、このネーザン・イースト。来日した際には、“寧山 東”という名前の名刺を差し出すらしい。なかなかお茶目な方のようだ。

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「ヴォヤージ」試聴動画
(※この動画では、1曲目の「ヴォヤージ」は収録されておらず、2曲目「風の大地」からスタートします)

「風の大地」(2曲目)
※注:CD収録版とはアレンジが異なる、ライブ演奏版の動画です。

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
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◎第8作『イメージス IMAGES』(1990)

オカリナとシンセサイザーを中心にしたシンプルな作品。ニューエイジ路線回帰作。

発売日:1990.10.25(サウンドデザイン)

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和、南里元子(⑤)(JASRAC作品データベース表記による)

①春・せせらぎ
このアルバムで一番のお気に入りの曲。ゆったりとしたメロディーながら、まさに小川のせせらぎを思わせるかのような、シンセサイザーのアレンジ・編曲が秀逸。
春の日差しの中で、川面がキラキラと輝いているような情景が、目に浮かんでくる。
正直なところ、自分はこの「春・せせらぎ」と、6曲目「花の精」を聴くためだけに、『イメージス』を聴くことが多い。

②冬の雲
メロディーもアレンジも、それほど個性がなく、あまり印象には残らない曲。
1曲目が傑作なので、そこからの落差を感じてしまう。(リスナー・聴衆の好みにもよるとは思うが…)

③そよ風
ピアノの音が印象的なアレンジの曲。サビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーがキャッチーで親しみやすい。

④秋桜
さだまさしさんの曲とは無関係。
ただ、どことなくフォークソングっぽい感じのメロディーの曲だと思う。
もし、さだまさしさんと宗次郎さんがコラボしたら、どんな風になるだろうと、勝手に想像したりする。

⑤朝日の中で
アルペジオ(分散和音)が印象的なアレンジ。
南里高世さんの奥さん、南里元子さん作曲による曲。
…だが、う~ん。このお二人、南里高世さん元子さんご夫妻は、本当に素晴らしいプロデューサーだと思うし、喜多郎さんと宗次郎さんを人気アーティストに育て上げた功績も素晴らしいし、深い敬意も感じるのだが、いざ作曲家として聴いた時には、曲にもよるが、全体的に素人っぽいメロディーラインだなあと思ってしまうことも多い(特にこの曲のようなタイプ)。大変失礼な言い方かもしれないが、“芋くさい”感じのメロディーだなあと…。
(南里夫妻のファンの方が、もしこの記事を読んでおられるとしたら、本当にごめんなさい。もちろん、名曲「道」や「精霊の森」など、南里高世さん作曲の作品でも素晴らしい名曲ももちろんあります。ただ、全体的な印象としてはそういう感想を抱く作品も多いという話です)

⑥花の精
宗次郎さんのオカリナはごく一部のパートのみで、大部分がシンセサイザーの曲。
だが、ヒーリング系のシンセサイザー音楽として素晴らしい傑作。1曲目の所にも書いたが、「春・せせらぎ」とこの「花の精」を聴くためだけに、このアルバムを聴くことが多い。
これまでの宗次郎作品では、幻想的な曲調はあったものの、この曲のようなメルヘンチック・ファンタジックなヒーリング曲は無かった。隠れた名曲と言える。

⑦雨
ピアノの音が印象的。まるで雨粒を表現しているかのよう…。
オカリナの対旋律(主旋律に対して寄り添うような、もう一つのメロディー)をピアノが奏でるアレンジが秀逸。

⑧旅の終わりに
シンセサイザーの音によるアルペジオ(分散和音)が印象的なアレンジ。
英語のサブタイトルでは、“The Sunset”となっているが、どこか寂しげな感じもする曲である。

<総評>
『ハーモニー』『ヴォヤージ』と、ポップ・ロックな作風への志向を強めてきた“南里高世feat.宗次郎”。

この4作目『イメージス』では大きく方向転換し、原点のヒーリング・ニューエイジ路線に回帰…したのは良かったのだが、傑作と言えるのは、1曲目「春・せせらぎ」と6曲目「花の精」のみで、他の曲は全体的に個性が弱く、強烈な印象はあまり残らないアルバム。

聴いた際の、高揚感や満足感がもう一つな感じがする。(あくまで好みによるものかもしれないが…。もし『イメージス』が大好きな方がこの記事を読んでおられたら、こんな意見もあるのか…程度で読み流して下さい)

これはあくまで推測なのだが、宗次郎さんはこのアルバムの頃から、サウンドデザインから独立して、セルフ・プロデュースすることを模索しておられたのではないかと思う。

元々、宗次郎さんが行いたかった活動は、自分で作曲した曲を演奏することだと思う。(『グローリー・幸福』のように)

なので、『フォレスト』以降の本作『イメージス』に至るまで、南里高世さんが作った曲しか演奏させてもらえず、いくら自分を育て上げてくれた恩義があるとはいえ、自分で曲を作りたい、自分の曲を吹きたいという不満が、溜まっていったのではないかと思う。(その心情は、自分自身も曲作りをする身として、痛いほどわかるし、その気持ちは想像できる)

実際のところ、オカリナの音色の魅力を、最大限に引き出したメロディーを作るという点では、南里高世さんよりも、宗次郎さんの方が作曲能力は上だと断言できる。(サウンドデザイン時代のアルバムと、『木道』以降のアルバムを聴き比べれば、一目瞭然と思う)

宗次郎さんは、自分ならこんなメロディーにする、自分ならこんな曲を書くと思いながら、南里さんが作った曲を演奏されていたのではないだろうか。

この辺りの、宗次郎さん独立に至るまでの経緯は、宗次郎さんのホームページにも、サウンドデザインのホームページにも載っておらず、調べても情報は出てこないので、わりと触れてはいけない、タブーなことなのかもしれない。

ただ、この『イメージス』からは、『心』や『フォレスト』の頃のような、モチベーションの高まりを曲からは感じられないので、もしかしたら、そのような背景があったのではないだろうかと、聴く度に考えてしまう。

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「イメージス」試聴動画

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
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◎『フレッシュ・エアー』のレビューの前に触れておきたい、宗次郎さんの幻のアルバム『組曲・日本の四季』

宗次郎さんの9作目のアルバムとなる『フレッシュ・エアー』。

実はこの『フレッシュ・エアー』と全く同じ曲収録のアルバムが存在する。タイトルは『組曲・日本の四季』。

サウンドデザインは、1990年に『イメージス』と並行して、『日本のうた こころのうた』『世界のうた こころのうた』という、宗次郎さんのカバーアルバムを制作した。

タイトル通り、日本や世界の名曲を、宗次郎さんのオカリナによるカバー演奏を収録、CDとして発売したものだ。

これとは別に、『こころのうた』CD10枚組セットとして、全161曲収録の完全版BOX商品を、日本音楽教育センター(現ユーキャン)から、通信販売限定商品として売り出した。(市販品の『日本のうた こころのうた』『世界のうた こころのうた』は、この通販商品からの一部ということになる)

この10枚組通販商品『こころのうた』の第10集が、『組曲・日本の四季』というアルバムである。

この通販BOXの解説書には、こう書いてあった。

“第10集『組曲・日本の四季』は、この企画のために新たに作られたオリジナル・アルバムである”

市販では入手できないという、プレミアム性を匂わせるような文面と言える。

ところが、1991年8月25日に、宗次郎オリジナル・アルバム『フレッシュ・エアー』として、サウンドデザインより一般発売される。

収録曲は、『組曲・日本の四季』と全く同じで、1曲目と10曲目のタイトルを変更し、別アレンジで市販されている。

『組曲・日本の四季』1曲目の「序章」を「インディゴ・ブルー」に、10曲目「終章」を「フレッシュ・エアー」というタイトルで。

また、『組曲・日本の四季』ではシンセサイザーをメインにしたアレンジだったのが、『フレッシュ・エアー』では、ピアノやギターといったアコースティック楽器(生楽器)をメインにしたアレンジで、レコーディングされている。

作品のレコーディングに関しては、『組曲・日本の四季』が先だったのか、『フレッシュ・エアー』が先だったのか、はっきりとは分からない。だが、アレンジが少し違うという点を除けば、曲のメロディーや構成は全く同じであり、少なくとも、通販BOX版『こころのうた』解説書の、“この企画のために作られた”という触れ込みは、嘘だったことになる。

また、『フレッシュ・エアー』発売日の1991年8月25日という時期は、同年10月10日に発売が迫っていた、初のセルフ・プロデュース・アルバム『木道』の完成に向けて、宗次郎さんは制作に集中しておられたはずで、すでにサウンドデザインからは独立し、ポリドールへの移籍契約を済ませていたものと推測できる。

つまり、『フレッシュ・エアー』は、宗次郎さんご自身が関わっていない、ノータッチのところで発売されたアルバムなのではないだろうか?

一度は、宗次郎さんは、『組曲・日本の四季』のシンセサイザー・アレンジ、もしくは『フレッシュ・エアー』のアコースティック・アレンジのどちらかの伴奏で、オカリナの演奏を録音したはずだが、宗次郎さんのオカリナ・パートの音をそのまま残して、どちらかのアルバムは伴奏部分を再録音し差し替えた上で、CD化されて売られた物であると思われる。(たぶん『フレッシュ・エアー』の方が後ではないかと推測している)

その辺りのことを考えると、アルバム『フレッシュ・エアー』には、どうしても“大人の事情”が見え隠れする。

『イメージス』のレビューの総評にも書いたが、宗次郎さんがサウンドデザインから独立し、ポリドールに移籍した際の経緯は、調べても情報が見つからず、触れてはいけないタブーなことなのかもしれないので、書くのはこれくらいにしておこうと思うが、アルバム『フレッシュ・エアー』もしくは『組曲・日本の四季』は、少なくとも前作『イメージス』よりもクオリティーは高く、良曲が収録されているので、多くの人に聴かれることなく、埋もれて行ってしまったことは不憫である。(さらに言うと、『フレッシュ・エアー』のアレンジよりも、『組曲・日本の四季』のシンセサイザー・アレンジの方がクオリティーが高い)

その後、『フレッシュ・エアー』を除く、サウンドデザイン時代のアルバムは、ジャケットをリニューアルした上で再発売されたが、『フレッシュ・エアー』は再発売されることはなかった。

『組曲・日本の四季』に関しても、現在ではオークションなどで見つけるか、運よく中古店などで見つける他には入手方法はない。

『フレッシュ・エアー』のレビューは、『組曲・日本の四季』でのアレンジとの比較・相違も含めて、書きたいと思う。


◎第9作『フレッシュ・エアー FRESH AIR』(1991)

おだやかな作風のアルバム。サウンドデザイン時代最後の作品。
通販BOX商品『こころのうた』第十集「組曲・日本の四季」と同じ曲目・構成のアルバム。

発売日:1991.8.25(サウンドデザイン)

プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和

①Indigo Blue(『組曲・日本の四季』では「序章」)
オカリナ・ソロ(独奏)で始まる曲。ニ短調のシンプルだが力強いメロディーが印象的。
『フレッシュ・エアー』版のアレンジは間奏が長くやや冗長な印象。『組曲・日本の四季』版「序章」の方が、はるかにクオリティーが高いアレンジとなっている。そちらのアレンジでは、シンセサイザーのパーカッション音(打楽器音)を非常に効果的に使い、幻想的な仕上がりとなっている。
『フレッシュ・エアー』版と『組曲・日本の四季』版とで、最もアレンジが異なるのは、この曲である。

②木漏れ日
この曲も1曲目と同じく、『組曲・日本の四季』版のシンセサイザー・アレンジの方が良い。
曲の後半、短調から長調に転調してからのメロディーが、印象的で美しい。(あくまでざっくりとした説明だが、短調のメロディーは哀しい感じやほの暗い印象、長調のメロディーは明るい感じや爽やかな印象を与える)

③望郷
この曲を聴いて、思わず「も~~い~くつね~る~と~」と口ずさんでしまった人は多いかもしれない。何度聴いても、滝廉太郎の曲にそっくりなメロディーである。もっとも、似ているのはAメロ(主旋律の最初の部分)だけではあるが…。

④春の想い
郷愁感あふれる美麗な曲。
美しい3拍子系のメロディーが秀逸で、耳を傾けていると、じんわりと心にしみていく感じがする。この曲を聴いていて、幾度か涙ぐんでしまったことがある。

⑤陽春
この曲を聴くと、散り際の桜をイメージする。
ハラハラと花びらを散らしていく、桜の古木…そんな無常観を感じさせるメロディーと、オカリナの音色がとてもマッチした曲。

⑥夏草
このアルバムで一番のお気に入り。宗次郎作品での“さわやか系”の曲の典型だが、とても清々しい曲で、青々と風に揺れている草原が、目の前に広がるかのよう…。
シンコペーション(リズム・拍の強弱に変化をつける技法)を使ったサビのメロディー(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)が秀逸。
この曲も『フレッシュ・エアー』版より『組曲・日本の四季』版のアレンジの方が良い。『組曲・日本の四季』版では、パーカッションをうまく使ったアレンジだったが、『フレッシュ・エアー』版のアレンジでは、パーカッションが省略されている。

⑦入江のほとり
ゆるやかな6拍子系の曲。タイトル通り、夏の昼下がりに、入江のほとりで寝そべって、海に浮かぶ船やヨットをのんびりと眺めているようなイメージの曲。とても牧歌的な雰囲気の曲。

⑧浮雲
7曲目とは打って変わって、物悲しい雰囲気の曲。
秋の高い空を流れていく雲を、憂いをこめて見つめているような…そんな哀愁を感じさせる曲。

⑨晩秋
この曲のイメージは、まさに晩秋の夕暮れ時に、真っ赤に色づいた紅葉の下にたたずんでいるような、静かに沈思するかのような曲調が印象的。
またまた『フレッシュ・エアー』版より『組曲・日本の四季』版のアレンジの方が良い。特に『組曲・日本の四季』版では、シンセサイザーによる間奏部のアレンジが秀逸。

⑩Fresh Air(『組曲・日本の四季』では「終章」
8曲目、9曲目と短調の哀しげな曲調が続いた後なので、この長調のラストの曲には、どこか解放感がある。優しいメロディーラインが印象的。
曲の後半は、宗次郎さんのオカリナは入らず、オカリナ以外の楽器で余韻を残しつつ幕を閉じる。
このエピローグの部分では、『フレッシュ・エアー』版ではオカリナっぽい音が入るが、これはシンセによる音と思われる。ちなみに『組曲・日本の四季』版にはこの音はない。
もし宗次郎さんが、『フレッシュ・エアー』制作時にサウンドデザインに在籍していたならば、わざわざシンセの音でオカリナの疑似音を入れずに、宗次郎さん自身により録音すれば済む話で、その辺りからも、『フレッシュ・エアー』が『組曲・日本の四季』よりも後に作られたものであると推測している。

<総評>
上述(『フレッシュ・エアー』のレビューの前に触れておきたい、宗次郎さんの幻のアルバム『組曲・日本の四季』)の通り、『組曲・日本の四季』と『フレッシュ・エアー』は、アレンジ・編曲が異なること以外は、ほぼ同じ内容なのだが、両作共に言えることは、デビュー作『グローリー・幸福』の作風に回帰しているということである。

静かで優しく、あたたかさが感じられる作品に仕上がっている。

サウンドデザイン時代の宗次郎さんのアルバムは、『グローリー・幸福』から始まり、次第にスケール・アップして行き、ポップ・ロック路線を経て、再び原点回帰をして、この『フレッシュ・エアー』が最後の作品となった。

宗次郎さんにとって、この初期・サウンドデザイン時代は、ある意味、南里高世さんの元での修行の時代であったと言えるかもしれない。

この時代に培ったアーティストとしての活動を基礎にしつつ、サウンドデザインからついに独立し、さらに発展をとげて行く。

そして次作『木道』からは、いよいよ、宗次郎さんセルフ・プロデュース作品の幕開けとなる。

☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより
※「フレッシュ・エアー」の曲に関しては、YouTubeでは一切公開されていない。また、配信などでも取り扱いはない。
そこで、曲紹介の代わりに『オカリナ 宗次郎 【コンサートの舞台裏】1987~1990』という動画を紹介しようと思う。宗次郎さんの初期の活動を支えた、南里元子氏・南里高世氏が映っている貴重な動画である。


次回の<宗次郎アルバムレビュー>の第3回目では、宗次郎さんの代表作にしてレコード大賞企画賞を受賞した自然三部作、1991~1993年『木道』『風人』『水心』を紹介します。
どうぞお楽しみに!


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