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【宗次郎アルバムレビュー③】1991~1993年『木道』『風人』『水心』(自然三部作※レコード大賞企画賞受賞作)

オカリナ奏者・宗次郎さんのオリジナル・アルバム作品のレビュー記事。
第3回の今回は、1991~1993年に発表の、宗次郎さんの代表作にしてレコード大賞企画賞を受賞した自然三部作『木道』『風人』『水心』を紹介します。
(↓前回・第2回の記事や、宗次郎さんのCD総目録も、ぜひご参照ください)


◎第10作『木道(キドウ)』(1991)

ポリドール移籍&初のセルフ・プロデュース・アルバム。“木”をテーマにした、自然三部作第1弾。

発売日:1991.10.10(ポリドール)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:坂本昌之

①故郷の原風景
『木道』以降の、宗次郎さんセルフ・プロデュース作品の中で、高い人気を誇る代表曲。コンサートでも、必ず演奏曲として取り上げられている。
以前聴きに行ったコンサートのMCで、宗次郎さんが、この曲は藁葺き屋根の民家があるような、そんな美しい日本のふるさとの情景を表現したいと思って作った曲、と話されておられたのが印象に残っている。
5音音階(ドレミソラという5つの音を使った音階)の、わかりやすい覚えやすいメロディーの曲で、1度聴いたら耳にしっかりと残る、親しみやすい名曲である。

②星降る夜に
イントロ(前奏部)のウィンド・チャイム(キラキラと音色を出す打楽器)の音と、まるで流星を連想させる、流れるようなオカリナのメロディーが印象的。
パーカッション(打楽器類)の音を効果的に使った軽快なアレンジ・編曲も秀逸。
オカリナの主旋律も、速いパッセージから流麗なメロディーへの流れと、スタッカート(音を短く切って跳ねるような感じを出す演奏法)のサビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーとの対比が見事で、作曲家としての宗次郎さんの力量の素晴らしさを感じとることができる。

③月の下で
イントロがちょっと演歌っぽいwシンコペーション(リズム・拍の強弱に変化をつける技法)が連続するサビのメロディーが秀逸。
ちなみに、この曲のAメロ(主旋律で1番初めの部分)の出だしを、ゆっくりめのテンポでレガート(滑らかな感じの演奏法)に奏でると、「道」(アルバム『フォレスト』の曲)っぽくなる。
“木”がテーマのアルバム『木道』だが、序盤に星や月の曲が連続しているのは、夜の星明りの下での、森の木々の姿を描いているのかもしれない。

④森を歩きながら
クラリネットやファゴットといった、木管楽器の音が印象的なアレンジで、生楽器の音=アコースティックな響きを楽しめる良曲。
ストリングス(ヴァイオリン類、弦楽器のアンサンブル)のピチカート(弦を指ではじく演奏)の音が、森を楽しく歩いているような気分を与えてくれる。
オカリナ・ソプラノ管(高音域の笛)の音色と、スタッカートを多用したメロディーとが、とてもマッチした素晴らしい作品。アレンジも見事。

⑤木道

マリンバ(木琴)による、ミニマル的なフレーズ(短い音型を繰り返すタイプのフレーズ)を使ったアレンジが素晴らしい。すくすくと伸びて行く“木”の姿を連想させる。
この曲のメロディーは、このアルバムの中では、わりと覚えにくい感じのメロディーラインなので、一度聴いただけだと印象が残りにくいかもしれないが、聴けば聴くほどに味が出てくるタイプの曲。(いわゆるスルメ曲)
何度も聴いていると、“木の道”のドラマチックな物語を描いた曲だと感じられるようになってくる。

⑥大気
傑作。個人的にはもっとこの曲を、コンサートで取り上げてもらえたらと願っている。日本的なニューエイジ音楽の傑作。(もしコンサートで演奏されるとしたら、和太鼓を取り入れて演奏されたら、素晴らしいだろうなとイメージしている)
この曲からは、“侘び寂び”を感じられる。特にイントロ部のオカリナ・ソロが好き。
宗次郎さんのオカリナの音色は、この曲のように、日本的な美しいメロディーを演奏する時、最も強い魅力が発揮されると言える。

⑦無垢
イントロが昭和の歌謡曲っぽいw
Bメロ(主旋律の構成の中で2番目の部分)のオカリナのハモリが印象的。
イ短調のメロディーではあるが、暗さはなく、6拍子系のリズムで、わりと動きを感じられる旋律の曲。
(一般的に、短調のメロディーは、哀しい感じやほの暗い印象を与える)

⑧森に生きるものたち
コンサートなどで演奏されることはなく、宗次郎さんの代表曲とみなされることもまずないが、素晴らしい名曲。ニューエイジ音楽の傑作。個人的には、アルバム『木道』の中で、この曲が一番好きだったりする。
小鳥のさえずりのSE(シンセによる効果音)から始まるイントロも秀逸。坂本昌之さんによるシンセサイザー・アレンジが素晴らしい。
シンプルだが力強いメロディーラインが、“森に生きるものたち”の息吹や生命の鼓動を伝えてくる、見事な傑作。

⑨感謝の歌
弦楽やピアノといったアコースティックな響きにのせて、宗次郎さんのオカリナが軽やかなメロディーを奏でる。
このアルバムの中では、4曲目と並ぶアコースティック路線の曲となっている。

⑩安堵の風景
比較的長めの曲。ゆったりとしたメロディーが、落ち着いた安らかな雰囲気を醸し出す。
後半は、ドラムやエレキギターも加わり、一層の盛り上がりを見せる構成となっている。
どうやら、宗次郎さんご自身、この曲がお気に入りのようで、コンサートで演奏されることが多い曲である。

⑪大地に生きる
オカリナのみの多重録音で構成された曲。
前曲が盛り上がった後で、エピローグ的にこの曲が配され、静かに落ち着いた雰囲気で、アルバムが終わるように構成されている。
オカリナのみの曲にも関わらず、どこか力強さも感じさせるようなメロディーである。大地に生きる(植物も動物も)すべての生命に捧げられた賛歌のように感じる。

<総評>
宗次郎さんがサウンドデザインから独立し、ポリドール移籍後初の、セルフ・プロデュースによる作品となった記念すべきアルバム。

発売日も、宗次郎さんの37歳の誕生日に発売するなど、深い思い入れを感じることができる。

宗次郎さん自身の作曲による曲を聴けるという点では、『心KOKORO』以来となる。宗次郎さんがずっと温めてきたアイデアやメロディーを、大切にカタチにした作品であると思われ、まさに結晶という言葉がピッタリの珠玉の名作である。

編曲も『心KOKORO』以来のタッグとなる、坂本昌之さんが担当している。また、ストリングス・アレンジを、大河ドラマ『真田丸』など数々の映像音楽等で知られる服部隆之さんが担当したことで、楽曲の洗練度も増している。

「故郷の原風景」など、現在のコンサート活動でも頻繁に演奏されている名曲が収録されており、のちの『風人』『水心』とともに自然三部作を構成し、宗次郎さんの代表的なアルバムの一つとなった。

個人的にも、『木道』は、初めて買った宗次郎さんのアルバムであり、思い入れや想い出も深い作品である。

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『木道』全11曲・再生リスト

「故郷の原風景」(1曲目)

「大気」(6曲目)

「森に生きるものたち」(8曲目)

「大地に生きる」(11曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
レコチョク


◎第11作『風人(フウト)』(1992)

“風”をテーマにした、自然三部作第2弾。

発売日:1992.9.21(ポリドール)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:坂本昌之

①凪
オカリナのテナーG管(メーカーによってはアルトG管と呼ぶ。やや低めの中音域の笛。ソの音で始まるドレミでできた笛)によるソロ曲。
短い曲ながら、凪の静寂や空気感を見事に表現した曲。
宗次郎さんのオカリナ演奏は、どちらかと言うと、ソプラノ管(高音管)やアルト管(中音管)を使うことが多いので、低い音色を聴けるこの曲は、ある意味、貴重であると言える。現在でも、コンサートでよく取り上げられている
コンサートではF管(ファの音で始まるドレミでできた笛)を使っておられるが、この初出のアルバムバージョンでは、G管による演奏となっている。

②風の神
民族音楽調・エスニックな感じのミニマル・フレーズ(短い音型を繰り返すタイプのフレーズ)が印象的な前奏部・イントロに続き、宗次郎さんのオカリナの音色が、風のように駆け抜けていく。
坂本昌之さんのアレンジの特色の一つとして、はっきりと強調させたベース・サウンドが挙げられるが、この曲はまさに、その典型で、メロディックなフレーズをベースが格好良く奏でている。(ベースは、一番低い音域で鳴っている楽器。曲を低音で支えている)
この曲は、数ある宗次郎さんの作品の中で、特にスタイリッシュでクールな曲となっている。

③風に揺れる木々たちと 
ズバリ名曲!なぜかコンサートではあまり演奏されないが、もっと取り上げてほしいと思える素晴らしい曲。
シャッフル・リズム(スウィング=思わず体を揺らしてしまうような、楽しい感じのリズム感が味わえる)にのって、タイトルのイメージ通りの、木々が爽やかな風に揺れている情景を感じさせる、楽しい曲である。それも、ただ楽しいだけではなく、抒情性もたたえたメロディーが美しい。“さわやか系”の宗次郎作品の傑作。
この曲を聴くと、初夏の瑞々しい新緑の季節の、青々とした森の木々をイメージする。

④鳥たちの森で
オカリナのソプラノC管(ピッコロ・高音管)は、実に、小鳥のさえずりを表現するのにピッタリな笛だと、痛感させてくれる名曲。
同様の曲としては、『グローリー・幸福』の「小鳥の歌」があるが、楽曲の完成度・クオリティーは「鳥たちの森で」の方が高いと言える。
この曲では、これまでにあまり無かった、クラシック調の曲調を、間奏部などに取り入れたアレンジとなっているのが特徴的。思えば、宗次郎さんの作品で、このようなクラシカルな西洋音楽の曲調は『木道』以前のアルバムにはなく、この曲が初めてとなったと思われる。
とても可愛らしい雰囲気で、メルヘンな感じもする作品。ヨーロッパの古い街並みの風景とかにも、よく合いそうな曲となっている。

⑤風が谷間を降りて来る
6拍子系の流麗かつ哀愁を帯びたメロディーが印象的。
このアルバム『風人』では、音楽による情景描写が見事なのだが、この曲もタイトル通り、風が谷間を静かに降りて、吹いてくる情景を見事に表現している。その風を、あたかも肌で感じているかのような、心象風景を生み出す音楽である。

⑥林をくぐりぬけて
5曲目は風を受けて感じる側だったのが、次の「林をくぐりぬけて」では、自らが風となり、林を吹き抜けていくかのようなイメージを与えてくれる。アコーディオン奏者のcobaさんのアコーディオンと、宗次郎さんのオカリナの音色が見事にマッチした、リズム感のある良曲。メロディーもキャッチーで覚えやすく、一度聴いたら忘れられないような親しみやすさがある。

⑦流れる雲に
ストリングス(ヴァイオリン類、弦楽器のアンサンブル)のアレンジが印象的。
この曲の曲調からは、秋の空をイメージする。
秋の夕暮れの赤く染まった空を流れて行く、雲を眺めているような、そんな風景を連想する曲。

⑧風の祭り
この曲は、大きく分けて2部構成となっている。
ゆっくりとしたテンポの前半部と、踊りの曲のようなアップテンポな後半部からなる。
全音階的なメロディーが多い、宗次郎さんの作品の中では珍しく、半音階を多用しているのが特徴的。(全音階とは、簡単に言うと、いわゆるピアノの白い鍵盤の音。同じく半音階はピアノの黒い鍵盤の音)
後半の間奏部の、アコーディオンとギターのパートがかっこいい。

⑨朝
坂本昌之さんによるシンセサイザー・アレンジが秀逸。
ミニマル・ミュージックの手法を用いながら、夜明けから朝の、生命の鼓動を感じさせる曲に仕上げられている。(ミニマル音楽とは、短い音型を繰り返すタイプの音楽。イメージとしては『風の谷のナウシカ』の音楽のような感じ)
宗次郎さんのオカリナの主旋律も非常に美しく、オカリナの音色があたかも、朝日の光を表現しているかのようにも聴くことができる。
個人的には、宗次郎さんの作品の中でも特筆すべき傑作と考えているが、なぜかこの曲もコンサートでは演奏されることがない…。

⑩風人
アルバムのタイトル曲であるが、「木道」の時と同じく、聴けば聴くほどに味が出てくるスルメ曲。
自然三部作を発表した頃に、NHK-FMの番組に宗次郎さんが出演された際、番組DJの方が“風人”という曲名を見て、宮沢賢治の『風の又三郎』を連想すると語っておられた。うまいこと言うなあと、感心したのをよく覚えている。

⑪光に向かって
フォルクローレ(南米アンデスの民族音楽)を思わせるようなメロディーとリズムに富んだ良曲。宗次郎さんはフォルクローレがお好きなようで、度々、フォルクローレ風の曲を作られるが、この曲はその典型。(宗次郎流フォルクローレ=ソウジローレとでも言うべきか)
コンサート時のMCで話されておられたのだが、宗次郎さんはチャランゴ(アンデスの弦楽器。小さなギターのような形をしている)の音がお好きなのだとか。
この曲はアレンジも秀逸で、パーカッション・打楽器類のリズムにのって、エスノ・ポップ(民族音楽風ポップ)な仕上がりとなっている。
2回目のサビの後にくる、大サビのメロディーが素晴らしい。(サビは、曲の中で一番盛り上がったり印象に残る部分だが、大サビとは、さらにもう一段階、曲を盛り上げるようなメロディーの部分)
メロディーの構成も見事な曲。

⑫いにしへの風
オカリナ・ソロで始まり、悠久の歴史の流れを感じさせるような、東洋的でゆったりとしたメロディーが奏でられる。アレンジも、アジアン・テイストなニューエイジ音楽らしい編曲で、間奏での、中国の弦楽器・二胡奏者のジャー・パンファン(賈鵬芳)さんによる二胡の音色が印象的。
かなり昔だが、民放のとあるニュース番組で、宗次郎さんがこの曲を、雨の降る法隆寺でライブ演奏されたのをよく覚えている。宗次郎さんのオカリナ・ソロによる演奏だったが、法隆寺の空気感と非常によくマッチしていた。

<総評>
ポリドール移籍後2作目となる本作は、“風”をテーマとしたアルバムで、前作『木道』と次作『水心』とともに、自然三部作を構成している。

前作『木道』と比較して、音楽スタイルのバリエーションが、より豊富になっているのが特徴と言える。それは民族音楽の要素だったり、今までのアルバムではあまり共演することがなかった楽器(アコーディオンや二胡などの民族楽器)が取り入れられていることから醸し出されている。

宗次郎さん作曲によるメロディーも、よりキャッチーな曲になっており、『木道』と比べると、全体的に、よりポップな印象を受ける。パーカッションなどの、リズム楽器を巧みに使ったアレンジと相まって、聴いていてとても楽しい作品となっている。

また、現在大活躍中のアコーディオン奏者・cobaさんだが、当時は本名の小林靖宏名義で活動されており、アルバムのクレジットにも“アコーディオン:小林靖宏”と記載されている。(本作に続く『水心』『鳥の歌』のクレジットも同様)

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『風人』全12曲・再生リスト

「凪」(1曲目)

「風に揺れる木々たちと」(3曲目)

「朝」(9曲目)

「光に向かって」(11曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
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◎第12作『水心(スイシン)』(1993)

“水”をテーマにした、自然三部作第3弾。
日本レコード大賞企画賞受賞作品。(『木道』『風人』『水心』の自然三部作に対して)

発売日:1993.9.22(ポリドール)

プロデュース:宗次郎
作曲:宗次郎
編曲:坂本昌之

①春の土
宗次郎さんのオカリナ・ソロで始まる曲。
ゆったりとした温かな印象の曲で、日差しが暖かくなった、春ののどかな田舎の情景を思わせる美しい曲。
1993年の“水心コンサートツアー”のパンフレットに書いてあったのだが、“水”をテーマに曲を考えた時、どうしても“土”をセットで連想し、アルバムの最初と最後は、土を描いた曲にした、とのこと。
雪解けの水が春の土に染み渡って行き、大地を潤す…そんな様を描いた曲なのかもしれない。

②水の旅人
雪解けの水が小川となり、河を下り、田畑を潤しながら海を目指し、海で雲となり、再び雨となって大地にそそぐ…そんな水の大循環の旅路を思わせる美しい曲。サビのメロディー(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る旋律)が印象的。
ちなみに、このアルバムが発売された年には、大林宣彦監督の映画『水の旅人』が公開されているが、この曲は映画とはまったくの無関係で、たまたまタイトルが被っただけと思われる。(映画『水の旅人』の音楽は、久石譲さんが担当しておられた)

③悲しい水
アコースティック・ギターによる前奏部・イントロのメロディーが印象的。
哀しげなゆったりとしたメロディーの曲だが、オカリナ・ソプラノC管(ピッコロ・高音管)により、透明感のある澄んだ美しさをたたえた曲。悲しくも美しい…そんな言葉がピッタリの作品。
コンサートの際に、この曲の説明で、透き通った美しい水を見ていると、悲しい気持ちが湧いてくる、と宗次郎さんが語っておられたのが印象に残っている。

④水の妖精
3曲目の静寂を打ち破るかのような、パーカッション(打楽器)・アコーディオン・バイオリンなどによる、躍動感あふれるイントロが開始され、まさに水の妖精たちが、水面で跳びはね踊っているかのような、動きのあるメロディーが、オカリナによって奏でられる。
このアルバムの中で、最もリズミカルな曲であり、宗次郎さんの演奏の表現力の幅広さを感じることができる。
アコーディオンでcoba(小林靖宏)さん、バイオリンで金子飛鳥さんが参加している。

⑤静なる湿原
にぎやかだった4曲目から一転し、静寂感漂う神秘的なシンセサイザーのイントロが印象的な5曲目が始まる。
この曲は釧路湿原がモチーフになっているそうだが、スケール感のある曲で、聴き応えがある。湿原に生きる生命への讃歌を思わせる、重厚な作品。後半のクライマックスの、オカリナ・ソプラノC管によるトリル(2つの音が細かく上下する部分)が、鳥の鳴き声を表しているかのようにも聴こえる。
服部隆之さんによる、ストリングス・アレンジ(ヴァイオリン類、弦楽器のアンサンブル)も見事。

⑥水心
オカリナ・ソプラノC管によるソロ曲。
宗次郎さんの代表曲の一つで、コンサートでも必ず演奏される。イ短調のメロディーを、澄んだ透明感のある音色で奏でて、“水心=水のように清らかな心”を表現している。
メロディーに使われる音階は、宗次郎さんの作品に多い“ラシドレミソラ”という、5音音階+1音の6音音階で、サビのメロディーが印象的で美しく、瞑想的な雰囲気が漂う。(5音音階とは、ドレミソラの5音から成る音階。日本や世界の民族音楽でよく使用される音階)
アルバム・ジャケットにも写真が使われている、北海道清里町の神の子池のような、澄んだ水のイメージにぴったりな曲。
自分自身、初めて聴きに行った宗次郎さんのコンサートの、オープニングがこの曲だったので、人生で初めて耳にした、宗次郎さんの生演奏のオカリナの音色の曲ということになる。高校一年生のことだったが、この時の響きは、いまだに耳と心に残っている感じがする。

⑦生きている水
曲調やテーマとしては、2曲目の「水の旅人」と重なるところが多いように思う。アコースティックな響き(生楽器を中心とした響き)を感じさせるアレンジとなっているのも、2曲目と共通。
イントロ・間奏のアコースティック・ギターの音色が心地良い。生命の源である水の尊さを描いているように感じる。

⑧雪どけの里
とても愛らしい雰囲気の曲。春の雪どけの山里で、わらぶき屋根の民家の前で楽しげに遊ぶ、童たちの姿が目に浮かぶよう。3連符(1つの拍に音を3つ入れたもの。タタタという感じのリズム感が出る)を効果的に使ったメロディーが、楽しげな雰囲気を醸し出している。
イントロ・エンディングの、坂本昌之さんによるアレンジも秀逸。
宗次郎さんの曲では、日本の山里の美しさ・素晴らしさを感じさせる作品が多いが、この曲もそのタイプの作品の一つ。
この曲からは、雪国の山里の人達の、待ち遠しかった春の到来への喜びの気持ちを、連想することもできる。

⑨海にゆられて
ゆったりとした美しい旋律が印象的。まさに海のさざ波に揺られているかのような、のどかな気持ちになれる曲。
思えば、宗次郎さんの作品では、森や風、大地といったモチーフで曲が作られることが多いが、海をテーマにした曲は、どちらかというと珍しいような気がする。
どこまでも広がる青い水平線を、平和な気持ちで眺めているような気分にしてくれる素晴らしい良曲。

⑩水と土への祈り
9曲目から一転して、重厚で瞑想的なサウンドが展開される。
いつまでも、大切な水と土が守られていきますように…という強い祈りを感じさせる曲。
中間部の、まるで尺八の古典曲を思わせるかのようなフレーズが、印象的で素晴らしい。宗次郎さんのオカリナの音色は、日本的なサウンドがよく合うと思うが、この曲はまさに、その本領が発揮されていると言える。
個人的には、1993年の水心コンサートツアーの大阪・四天王寺公演で、ステージのバックの仏像が、ライトアップで浮かび上がる中、この「水と土への祈り」が演奏された時の、幻想的な雰囲気が強く印象に残っている。

<総評>
『木道』『風人』に続く、宗次郎さんセルフ・プロデュース作品第3作となったアルバムだが、前2作を経て、成長し凝縮された宗次郎さんの音楽性の高まりが、この『水心』で見事に結実していると言える。宗次郎さんの傑作アルバムにして代表作。

先述の『木道』『風人』とともに、自然三部作を構成し、この自然三部作で1993年の日本レコード大賞企画賞を受賞することとなった。

その効果も相まって、『水心』を含む自然三部作は、宗次郎さんの数あるアルバムの中でも最もよく売れたCDになったと思われ、宗次郎さんの代表作と記されることも多い。現在のコンサート活動でも、自然三部作からの曲はよく取り上げられ、特に「故郷の原風景」「凪」「水心」の3曲は、ほぼ必ず演奏されている。

アルバム『水心』は“水”をテーマにして、水にまつわる情景、さらにはその心象をも多様な曲調で描かれており、完成度・クオリティーが非常に高い名作といえる。

個人的にも、初めて聴きに行った宗次郎さんの生演奏が、1993年の“水心コンサートツアー・水府大演奏旅行”の公演だったので、とても想い出深い作品である。

☆YouTube:宗次郎Topicチャンネルより
試聴動画:『水心』全10曲・再生リスト

「春の土」(1曲目)

「水の妖精」(4曲目)

「水心」(6曲目)

「水と土への祈り」(10曲目)

☆以下のサイトで、全曲試聴およびダウンロード購入ができます。
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次回の<宗次郎アルバムレビュー>の第4回目では、1995~1997年に発表された『光の国・木かげの花』『Japanese Spirit』『愛しの森 a-moll』を紹介します。
どうぞお楽しみに!


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