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異世界ミートリア【番外編④~MT Landで雨宿り〜




【番外編について】

異世界ミートリアの本編から少し離れた、番外編ストーリーです。舞台は、ミートリア王国ではなくキラキラ輝く南の島。たかっち社長、みーちゃんP、ヒロパンダ、まきマネの4人は、黄金のパンツを探す「パンツ海賊団」として冒険しています。

花園で出会った親子から「黄金のパンツは海岸にある」と教えてもらい、海岸へ向かって歩き出したパンツ海賊団!!

黄金のパンツは、見つかるの!?

番外編
パンツ海賊団と黄金のパンツ

④MT Landで雨宿り



ここはMT Land。

前回のお話の続きです。

花園を出て歩いていると、空が急に暗くなりました。

ぽつ、ぽつ。

「……雨?」

まきマネが空を見上げた瞬間、
ざあっと、雨が降り出します。

「きゃー!」


パンツ海賊団は、
あわてて近くの大きな木の下へ駆け込みました。

大きく広がった葉っぱの屋根が、
雨粒をぱたぱたと受け止めています。

まきマネは、
花の冠を濡らさないように、そっと胸に抱え直しました。

「よかった。お守りが無事で」 

みーちゃんPは、
双眼鏡についた雨粒を指でぬぐいます。

「……通り雨。すぐにやむよ」

そのときです。

みーちゃんPが、ぽつりとつぶやきました。

「……歌が聞こえる」

まきマネは、雨音に耳をすませます。

「歌?」

みーちゃんPは、音のする方をじっと見つめました。

「うん。雨の音にまざってる。小さな歌」

音をたどって、太い幹の向こうへまわると、
そこには小さな小屋がありました。

雨にぬれた葉っぱに隠れるように建つ、
木のぬくもりが残る、あたたかな小屋です。

その軒先には、かえるフードを被ったひとりの女性が座っていました。

女性は、雨を眺めながら、
膝の上のノートに何かを書きつけていました。

そして、雨音にまざるように、
静かに鼻歌を歌っていたのです。

たかっち社長は、
息を整えながら一礼しました。


「失礼します。
黄金のパンツへ向かう途中なのですが、
少し雨宿りをさせていただいてもよろしいでしょうか」

女性は、顔を上げると、にこっと笑いました。

「どうぞどうぞ。ここ、結構広いから」

それから、そっとノートを閉じました。

「私は、かえるこ。
いつもここで曲を書いてるの」

たかっち社長は、
もう一度ていねいに頭を下げました。

「ご親切にありがとうございます。
私たちは、王国に伝わる黄金のパンツを探している、パンツ海賊団です」

「パンツ海賊団?」


かえるこさんは、少し目を丸くしてから、くすっと笑いました。



パンツ海賊団は、雨粒を払いながら、
小屋の軒先へそっと身を寄せました。


大きな木の葉っぱと、小屋の深いひさしが、
降り続く雨をやさしく受け止めています。



かえるこさんは、まきマネが大切そうに抱えている花の冠に気づくと、やさしく目を細めました。

「すてき。大事なものなんだね」


まきマネは、胸の中に残っているあたたかい時間を思い出しながら、ゆっくりとうなずきました。


「さっき、花園で出会った女の子がくれたんです」

かえるこさんは、ぱっと表情を明るくしました。

「ああ、あの子の花の冠だ」

「知っているんですか?」

まきマネが聞くと、
かえるこさんはうれしそうにうなずきました。



「うん。花園の親子、大好きなんだ」

「あのお母さんは、すぐ泣いちゃうよね」


「泣いちゃう?」

まきマネが首をかしげます。

かえるこさんは、雨の向こう、花園の方角を見つめながら、やさしくうなずきました。


「うん。カハリーさんは、
うれしいことにも、かなしいことにも、
すぐ心が動いちゃうの。
でもね、最後にはちゃんと笑ってる。
すごくきれいな心を持ってるんだ」


ヒロパンダが、まじめな顔でうなずきました。

「むぅ……。まるでミスジ。
美しいサシと、とろける旨味を持つ希少部位だな」


「肉でたとえないで」

まきマネがすかさずつっこむと、
かえるこさんは、くすっと笑いました。

そのころには、
さっきまで屋根を強くたたいていた雨音も、
いつのまにか少しずつやわらいできていました。

葉っぱを打つ音は細くなり、
小屋のひさしから落ちるしずくが、
ぽたり、ぽたりと静かなリズムを刻んでいます。




たかっち社長は、
かえるこさんのノートに目を向けました。


「ところで、何を書いていらっしゃったのですか」


かえるこさんは、ノートをそっと持ちました。
そして、まっすぐな目で言いました。

「忘れたくない気持ちを書いてるの」

「忘れたくない気持ち?」

みーちゃんPが、聞き返します。


かえるこさんは、
そっとノートを抱きしめたまま、
軒先の水たまりへ目を落としました。

雨粒が、水面に小さな輪を広げています。

「うれしかったことも、悔しかったことも、
放っておくと、すぐ流れていっちゃうから」

葉っぱの先から、しずくがひとつ落ちました。

ぽたり。


「だから、流れてしまう前に、ここに残してるんだ」



まきマネは、
かえるこさんのノートを見つめました。

「見つけたものを、形に残す。花園の親子と、おんなじだ」


かえるこさんは、にこっと笑いました。

「うん。気持ちにも、
音にも、居場所があったらいいなって」

まきマネは、感心したように言いました。

「気持ちにも、居場所を作るって……すごい」


かえるこさんは、くすっと笑うと、
閉じたノートをそっと胸に抱え、
たかっち社長の隣に腰を下ろしました。


それから、
ふと思い出したように、たかっち社長を見ます。


「あ、黄金のパンツ…
…歌詞にするのも、アリかも」


かえるこさんは、
少しいたずらっぽく笑いました。

「今もね、ひとつの曲を作るために、
もう三十曲くらい候補を作っちゃったんだ」


「三十曲!?」


まきマネが、思わず目を丸くしました。 

ヒロパンダが、
興味深そうに首をかしげました。

「むぅ……。ローストビーフとおなじだな。
少し休ませることで、
旨みが落ち着くということか」


「肉基準で考えないで」

まきマネがすかさずつっこみました。


かえるこさんは、
閉じたノートをそっと指でなでます。


「休ませてるわけじゃないの。
どれも違う気がして。
でも、どれも、そのときの気持ちだから捨てられなくて」


みーちゃんPが、静かに尋ねました。

「……その気持ちが、
ちゃんと音になるまで探してるの?」

かえるこさんは、やさしく目を細めました。

「うん。すぐ届かなくてもいいの。
いつか誰かの心に、ちゃんと残る音になったらいいなって」


まきマネは、小さな声でつぶやきました。

「届く言葉と、残る音…」


かえるこさんは、少し考えるように、ノートの表紙をなでました。


「うん。届く言葉が書けないって、けっこう苦しい」


そして、やわらかく笑いました。

「でも、書けない自分を責めるより、
違和感に気づけたことのほうを、大事にしておきたいの」

みーちゃんPは、双眼鏡にそっと手をかけ、
かえるこさんをまっすぐ見つめて言いました。

「さっき……姿はまだ見えなかったのに、
歌は先に届いたよ」


かえるこさんは、
少し驚いたようにみーちゃんPを見ました。


みーちゃんPは、そっと続けます。

「雨の音にまざって、
小さくても、ちゃんと聞こえたよ」


かえるこさんは、
うれしそうに目を細めました。

「そっか。わたしの歌、届いてたんだね」

気づけば、しとしと降っていた雨音は、
葉っぱの先から落ちるしずくの音だけに変わっていました。


ぽたり。


ぽたり。


雲の切れ間から、やわらかな光が差し込みます。


「……雨がやみましたね」


たかっち社長が言うと、

まきマネは、
花の冠をそっと抱きしめました。

「よかった。お守り、無事だった」


パンツ海賊団は、かえるこさんに向き直ります。


「ありがとうございました。雨宿りと、良い言葉を」


たかっち社長が深く頭を下げると、
かえるこさんは、にこっと笑いました。

「海岸へ行くんだよね。気をつけて」



パンツ海賊団は、
かえるこさんに見送られながら、雨上がりの道へ歩き出しました。



みーちゃんPは、空をもう一度見上げました。

「……見つけた」

まきマネが、顔を上げます。

「なにを!?」


みーちゃんPは、嬉しそうに言いました。

「虹。海岸の方へ向かって、かかってる」

「わぁ、きれい!」

その横で
たかっち社長が真剣に言いました。

「虹といえば、“希望”や“幸運”の架け橋。
つまり、黄金のパンツまで、あと少しという予告ですね」




葉っぱについた雨粒が、
きらきらと光っています。

後ろの方から聴こえる、かえるこさんの歌声は、
雨上がりの空にふわりと溶けて、
海岸へ向かう道をやさしく包んでくれました。


番外編⑤へつづく



📋️まきマネの覚書

番外編④:2,907字
現在の物語:35,152字  

創作大賞 エンタメ原作部門
〆切まであと⏰12日!


SPECIAL THANKS

かえるこさん

【雨音の音楽家・かえるこ】

MT Landの森に、小さな小屋を構える音楽家。
かえるフードを纏い、軒先で雨音にまぎれるように歌を歌っている。

「忘れたくない気持ち」をノートに書きとめるのが、かえるこさんの習慣。
うれしかったことも、悔しかったことも、放っておけば流れていってしまうから。

ひとつの曲のために、三十曲もの候補を作ることもある。どれも、そのときの気持ちだから捨てられない。

すぐに届かなくてもいい。いつか誰かの心に、ちゃんと残る音になればいい——そう信じて、今日も雨音と一緒に歌をつくっている。


かえるこさん☺️
ありがとうございました🙌‼️


これまでのお話はこちらから
noteマガジンにまとめてます!

 


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