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キリング・ミー・ソフトリー【小説】66_ハイ・ウェイ
大変に迷惑でしかない台風が過ぎ、アルバイトを済ませ慌ただしくシャワーも浴びて高速バスへ乗り込む。出発前に莉里さんから能天気なお知らせが届いていた。
『明日はちゃんと開場時間に合わせて行くねー!』
ああ、是非そうしてくれ。
いつぞやは待ち惚けを食わされたと思い出しながら心の中で返事する。
隣の席に座った30代半ばと見られる男性はバンドTシャツを着ており、どう考えても同じ目的。
高ぶる興奮に勢い余って話しかけそうになった。周囲が寝静まっているのにまさかフェス楽しみですねなどとは言えず。
そんな嬉しい出来事もあり、消灯時に一文送ってしまった。
『早く会いたい』
メッセージを取り消し誤魔化すのは簡単だが敢えて冗談やなかったことにしない。
夜が更けていく。
誰かの歯軋りといびきが聞こえ、カーテンで閉ざされた窓もガタガタと音を立てる。
このバスが東京へ辿り着きフェスが終わる頃までに莉里さんとの関係は変わるのだろうか。
気持ちを告げ拒絶される場面が浮かぶ。
保険をかけ友人と偽り無邪気な少年を演じ、実は下心がありましたなんて忌ま忌ましい、改めて異性だと認識させ、これから目眩く物語が始まる?戯言を抜かす。けれど、そこに賭けたかった。
一直線の玉砕覚悟でぶつかるのだ。
恋愛は至ってくだらない。
ただ、これも父が語る〈今しか出来ないこと〉。喉の渇きを感じペットボトルの蓋を開けたところ、よりによって選んだのが炭酸飲料で冷や汗をかいた。
こうして時が流れ、朝から莉里さんが欲しがった限定グッズの列に並ぶ羽目になる。
開場へ間に合わせると宣ったくせに彼女は遅刻(俺も慣れた)、その上ほぼ手ぶらで飲酒しつつやってきた。
