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キリング・ミー・ソフトリー【小説】67_I'M in (a) DREAM


夏空の下に現れし女神が駆け寄る。
「アキくん。ごめーん、お酒買ってたら遅れちゃった。」
ポケットが付いた赤いTシャツにフラッグチェックのワイドパンツ、オールドスクール。
幾ら暑くても生足を晒したりしない点が尚更良かった。目深に被ったバケットハットから覗く髪は涼しげ。


毎度異なる姿でこちらの心を掴んでは決して離さず、すぐさまあの子めっちゃかわいいと褒めちぎる声が飛び交う。
莉里さんは自分に自信を持てないようだが信じ難いレベルだ。


「別にいいよ。はい、頼まれてたグッズね。なんか食べとく?」
「ありがとー!そうだね、今日は1日ガッツリ見ておきたいもん。」
上手く利用されている気がする。
とはいえ彼女の緩む頬を見つめる幸せを噛み締め、会場をあちこち歩き回って写真を撮り、談笑しながら早めの昼食を取る間にこれはもうデートでは?と錯覚した。


莉里さんの隣におり、喋るだけで羨望の眼差しを一身に受ける。ベタベタ寄り添って手を繋ぐ訳でもないのに交際中と勘違いされるらしい。
それもひと時の儚い幻である。


2018年9月某日、フェスの幕が上がった。
一発目は最も恐ろしいものといっても過言ではなかったが、初っ端から果敢にも彼女が挑んでいき倒される姿に怯えた。
その後のバンドでは大人しくなったかと思いきや歓喜の涙を流してダイブ。どんなに憧れて舞台に立つ日を夢見て生きたか痛いほど伝わって感極まる。俺もずっと音楽やってたらいつかはああいう風になれるのかな。


莉里さんにとっては本命ばかり、一切休憩なしの奇跡的な体力が衰えなくて何よりです。片や車中泊でロクに寝ておらず熱中症防止の為、こまめに太陽を避ける。


様々なアーティストの熱烈なメッセージやここに至るまでのストーリーを受け止め、時に煽られて宙を舞い目を潤ませ、やはりバンドはカッコいい、彼らのように歌ってギターを弾こうとの気持ちが強まった。



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