キリング・ミー・ソフトリー【小説】33_STAY YOUNG FOREVER
その後も畳み掛け、息もつかせぬ、怒涛のテンションで莉里さんは暴れ、もみくちゃになる。
底知れぬ体力というか、フードエリアでひっそり休憩していても気付かない程。
彼女曰く抑えがきかず止められないのだそう、もしや全曲飛ぶのでは?
恐るべきエネルギーがそこにはあった。
離れた場所でのんびり大人見しつつ、腹ごしらえもしたことだし、さて、ちょっくら莉里さんでも探しに行くかと腰を上げた時。
非常に印象的なたったワンフレーズのシンガロングで即座に曲を理解し、およそ生まれて初めて莉里さんの言っている衝動の欠片を掴んだ。 兄から貰った一枚のアルバムを擦り切れるぐらい聴き、歌いながら真似てギターを弾いた自分にとって大切なメッセージが込められたナンバー。
〈信じた道をいつまでも真っ直ぐに進め。〉
無我夢中でモッシュピットに飛び入る。
無論、こちらが子供のような外見だろうと容赦はなく身体中が痛い、うかうか油断すれば死ぬ。
こんな空間に彼女は毎回いるのか、まるで戦場じゃないか。
「ボウズ、投げてやるよ!」
え、待って、と断る前にいきなりスキンヘッドの男性に担がれ、何の覚悟もしないまま彼を発射台とし、意図せず人様の頭上へお邪魔していた。次々と沸くダイバーの群れに押し潰され、動きが取れずただ怯える。
下で支える者に申し訳ない、着地したくとも降りられないところでがっちりキャッチされて、震える足元、揺らぐ視界、想像を絶する興奮。
去り際にステージを一瞥した瞬間、メンバーからナイス、と讃えるかの如く親指を立てられた。少しでもこちらを見ていてくれた嬉しさに感極まり、涙が溢れる。
俺、あなた達が大好きです。
最高のパフォーマンスをありがとう。
体験し分かる、これが莉里さんがこよなく愛す世界。果たして自分は追いつけるのだろうか。
たかが見た目に惹かれ、連絡を数ヶ月続けただけで生意気にも思いを寄せた。
人が変わったかのように鬼気迫る勢いで走っては打ち上げられ転がり、ズタボロになっても満足げな様子。
爆音と共に蘇ってきて、いちいち考えるのが面倒臭い。兎も角、ライブを楽しもう。
このフェスは元々、彼女が1人で参加する予定だった。会いたいが為にノコノコやってきたのはこちらの方、今回明かされた側面はあくまでも莉里さんの一部にしか過ぎず、まだまだ膨大な秘密を抱える筈。
しかし益々、惚れ直してしまう。
本当にタチが悪い。
