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キリング・ミー・ソフトリー【小説】34_Bitter Bitter Sweet


とどのつまり、彼女とまともな食事を取った頃には日が暮れていた。言い換えれば莉里さんは殆ど休憩なし、驚異的なタフさに笑う。
本日の締めくくりは、出演者のうち最も自分が首ったけなバンドだ。
兄が熱心なファンであり、昔はツアーにも一緒に行ったという話を莉里さんにする。


「はあ、すごい。お兄ちゃんの影響?サイコーじゃん。」
「莉里さんはきょうだいって?」
軽率に聞いてみると一変して表情が硬くなった。暗黙の了解、禁句を悟る。
「あ、私いないの。ひとりっ子。だからね、アキくんと仲良くなれて、なんか弟が出来たっぽいんだ。」
弟。友人どころか恋愛対象とは違う、と明確に線引きされたようなもの。
フラれるよりショックだった。


リハーサルの段階でまたもやそっちのけ。
隣に並んだ彼女と演奏に酔い、ムードに流されそっと手を繋ぐ、とか漫画みたいな都合の良いことは絶対に起こらず人生は甘くない、大体こんな感じ。
そう簡単に上手くやれる訳がなかったけれど、少しくらい振り向いてくれても。
気持ちを知り尽くした上で敢えてあっさり弟と言い放ち、ある程度の範囲から近寄らせないよう撥ねつけた。
一方通行の恋心は、迷惑なだけ。



ずばり今の心境に当てはまる英詩、辛く逃げ出したい現実、スキンヘッドの男性と再び巡り合う。
改めて己の意思でお願いします、と頼む。
どこまでも飛ばしてくれよ、せっかく好きなメロコアバンドなのに、負けてたまるか。
「よっしゃ、任せとけ!」
望まぬスタートに比べ一際、清々しい。恐怖を克服し、音と多幸感に包まれ、ただ前へと送られる。着地にも慣れて、元居た場所に帰る時、思いがけず莉里さんを見つけた。



「アキくんも飛んだんだ?」
「うん。ごめんね、俺に預けてくれた莉里さんの帽子、なくしたかもしんない。」
「そんなもん、どうでもいいよ!クッソ楽しいから!」
彼女が笑って口ずさみながら肩を組んでくる。無為な行動だが、すこぶる引っ掻き回された挙句、ふんだんにご褒美を貰えた気分。



明日が来なければ。
このまま側にいて、別れたくない。
愛情など、どこそこ厄介で身勝手。



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