キリング・ミー・ソフトリー【小説】35_戻れない昨日
5月も終盤に差し掛かる今日この頃、カフェテラスにて真司と寛ぐ。こちらは長袖でも代謝の良い彼は既に半袖を着ており、キャンパス内における服装のてんでバラバラな雰囲気に季節の移ろいを感じた。
「千暁、最近どうだ?…例の女性と、…会ったらしいが。」
自分も恋愛に関する話題には疎く苦手意識が強いものの、彼の不自然な切り出し方・ぎこちなさについ目を細める。
「まあ、先週ね。待ち合わせして野外フェス行った筈が放置プレイ。おまけに弟呼ばわりされて、台無しっつうか眼中にねえ、と。」
「散々だったな。」
「真司、どう思う?彼女持ちっしょ、こういうの分かる?」
縋るように問いかけた。
長きに渡る美弥の熱烈アプローチで交際へ至ったのは想像に難くない、あまりにも経験値が異なる。
「莉里さんはひとりっ子なんだとさ。んで、俺がいくら歳下だろうが弟って酷くね?だいぶ精神的にキたわ。てか、好きなのバレててもせめて告ってからフッて欲しい。」
「俺にも大事な弟や妹がいる。悪戯ばかりされて、我儘の扱いには困るけどな。千暁、一旦冷静に考えてみろ。2人とも実際の姉弟じゃない。要するに莉里さんは擬似体験を味わっているだけで、現時点では色恋へ進化を遂げるか否か、おぼろげだ。」
真司は茶化さずにきちんと答えてくれた。
不思議と彼に諭されれば、本当にそんな気がしてくる。
「マイナス・プラス思考は個人の自由、どちらに捉えても時間は平等に流れる。とはいえ、もし明るい前向きな道を選んだら……少なくもイージー、ハッピー、ヘルシー、etc。これは美弥の受け売り。」
本人は半端なく全力投球、誠意を込め相談に乗ったつもりが、堅苦しい彼に不釣り合いな横文字の羅列で吹き出しそうになった。
いかにも楽観、美弥らしきスタンスである。
高校生の頃、ふとした瞬間に彼女からこんな言葉を聞いたのがきっかけで、真司は美弥のことを大変気に入ったとか。
思い返せば自分が悩んだ時、彼女はとても肯定的に励ましてくれていた。
「従って、千暁はくよくよ気に病むな。寧ろ相手が千暁に目を向けるよう、煽って唆せ。」
「知成かよ、俺に出来たら苦労しねえって!」
彼ら程の男前は微笑みひとつで数人、事もなげに落とせるかも知れないが、こちとら平凡な初心者(というより彼女いない歴=年齢)にはハードルが高い、致しかねる。
帰宅後、動画投稿サイト及びインターネットの世界で一躍注目を浴びた弾き語りを莉里さんに見せる案を閃く。
しかし
「ギター弾けるヤツなんてごまんといるんだった。」
と挫折。
