キリング・ミー・ソフトリー【小説】36_ハロウハワユ
淳とめいは予定通りデートへ出掛けた。
どうやら互いの好きな漫画がめでたく実写映画化され、是非観に行くべしと沸き立った模様。
但し電車で1時間弱、遠い場所に住む為、中間地区の大型ショッピングモールへ。鑑賞を終え、買い物に付き合い、緩く館内を歩き、楽器屋へ寄り、めいのリクエストに応えてベースを奏で、夕飯を済ませ解散したのだそう。
「ふーん、健全なお付き合いですこと。」
「いや、いい加減にしろよ。何回も言ってるけど友達だって。」
「じゃあお前なんでめいちゃんに彼氏いるか俺に聞いたんだよ。」
「そりゃ、いてもおかしくないから確認するでしょ。普通にかわいいし、音楽以外の他にも趣味が似ててさ、仲良くなれてホント嬉しい。ただ、それだけ。全部の気持ちや関係にはっきり名前つけなきゃいけない訳?俺、ちーのそういうとこめちゃくちゃダルい。」
淳にぴしゃりと言われ、二の句が継げなくなる。余計なお世話だという禍々しいオーラが滲み出ていた。
気まずいまま講義を切り上げ、自分の心配してなよと彼は捨て台詞を吐き、こちらを一切見ずに去っていった。バンドを結成しようとの約束は未だに果たされていない。
自分のことが如何ともし難い故に友人へと視線を注ぐ。
こないだのフェス以降、微妙に莉里さんから距離を置かれているような気がする。まずメッセージの返信が滞り無下にされ、片やSNSでは別の野郎と親しく話す。
俺には構ってくれない。
彼女に預けられた帽子をダイブのせいで失くしてしまったのがそんなに悪かったかと思いきや、落とし物センターで見つかった上に別れ際また会おうね、などと彼女の方が惜しんだがこの仕打ち。
いち早く恋心を察し、後腐れないうちに避けじわじわフェードアウトしたいのか考えが読めず、夜9時過ぎリビングのソファに座り白黒映画を眺める父の足元にそっともたれかかる。
「これ、面白い?」
「うーん、冒頭ちょっとじゃ分からないかな。久しぶりにあっくんも一緒にどう?」
「いいよ。」
昔はテレビに釘付けだった。
あっくんは芸術家志望なんだから感性を養うべき、が父の常套句。
地上波で放送される作品に飽き足らず、長期休暇の度に嬉々としてアニメばかりでなく名編やシリーズのDVDを用意した。
炭酸水やスナック菓子をお供に深夜まで夢中になりそのまま眠りこけては母に叱られていたのに、歳月の流れで間隔が広がって、いつしか忘れる。
〈映画〉こそ淳との諍いの大元ではあれど、今夜くらい浸るのも結構だろう。
