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キリング・ミー・ソフトリー【小説】37_フタリノ夜


翌日、アルバイトから帰ると父がわざわざレンタルビデオショップで映像ソフトを数本借りてきており、たった一晩の出来事だと軽んじて受け入れた身としては恥ずかしい。
親を侮るべからず。



「暇な時にまた観ようよ。」
「オッケー、ありがと。てか父さんは知らないかもだけど今は動画配信サービスってのがあるんだわ。次からはそれでいんじゃね?」
昨夜が余程楽しかったらしく顔が綻んでいる。
その表情に弱い。



断りきれなかった為、1週間に1回は父と過ごす夜が生まれた。
「来年あっくんがお酒飲めるようになったらさ、晩酌しながら鑑賞するんだ。」
自らは下戸のようなものだが、さも嬉しそうに目を輝かせて語る父。親孝行の一環と思った。



依然、淳との仲は拗れっぱなし(すれ違う折りにつけ、謝罪しては素っ気なく遇らわれる)。
6月。いざこざとは無縁のきのピから夏の計画を立てたいと連絡が届く。
勿論あの5人が揃う訳で、そこには淳も含む。
重ねて兄とも来月県内で行われるフェスに参加が決まる。
地元のライブハウスへ通っていた頃とは異なり、常に何かしらの大きなスケジュールを待ち胸が高鳴った。しかし、一向に貯まらないアルバイト代については深刻な問題だ。



ついに莉里さんのメッセージは途絶え、数日後に返ってくればマシ。
そんな状態でも彼女のつぶやきを必死に漁り、今月半ばに関東で開かれるパンク・ラウドロック・ハードコアを中心とした屋内イベントにて2日連続遊ぶと知って、堪らず1日目のチケットを買う。



例の〈manny〉と名乗る男が莉里さんにやたら会いたがっている印象だった。
彼女と自分の共通フォロワーであり、異性と見れば誰彼構わずしつこく絡みがちな〈★てらしぃ★〉でさえ(自分も最初はアキというユーザーネームから女子高生だと誤解され迷惑を被った)同じ場に足を運ぶ。



莉里さんは安い女ではないと固く信じていても接触を阻止したかった。
もう一丁。
『ヤバい、チケット当たって泣いた!』
と勇み立つ様子に導かれ、某バンド企画のロックフェスティバルの抽選にも勢い余って申し込む。開催が発表された辺りで大騒ぎ、血沸き肉踊るも目的地が都会となっては狼狽えてしまっていた自分が。



俺だってあいつらと同類じゃねえか。
交際どころか眼中にもないくせにナイト気取り、彼女からすれば寄ってくる蚊の1匹。
だから純粋に音楽を聴いて空気を味わう、鉢合わせても偶然を装い、見守るしか、……ストーカーだろ。



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