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キリング・ミー・ソフトリー【小説】45_風に吹かれろ


今しか出来ないこと、って簡単に言うけどさあ。なんなの?
父とソファに背を預け映画鑑賞の真っ只中、内容に擬えてまな板へ乗せる。
悩む若者はどこの世界にも等しくいるらしい、使い古されたこの家具も隣り合わせで休むにはうんと窮屈と化す。



「そりゃ、まさに今あっくんがやってる、まんまだよ。勉強して友達作り、バイトで怒られる、夜行バスの旅、バンドを組む、とか。そんなの大人でもイケると思うでしょ?だけど違うんだよね、微妙に。」
そういうものか。父は遠い目を浮かべ、飲めない酒の代わりに炭酸水を啜る。



「僕は大学へ通ってるうちに家庭を持って、父親になった分の時間をいつか取り戻す気満タンだった。さて、遊ぼうと決めたら次は周りが結婚していく。その都度、色々忙しいんだよね。」
「そっかあ。」
こちらは未だに莉里さんが発した〈元・交際相手は歳上のみ〉といった主旨の言葉を引き摺っていて、そんな父に対し俺は早く大人になりたいなどと虚飾なく打ち明けた。



「ま、今の時代、青春をやり直すチャンスはたくさんあるし捉われなければ楽ちんだろうね。とはいえ過程すっ飛ばして生き急ぐ必要ないよ。
日付が移り変わろうとしており、母はとうの昔に床へ就き寝息を立てる。父と子2人きりの半宵。



欠伸を噛み殺すと、大画面テレビの前で父が柔らかに微笑んだ。
「高校出てさ、あっくんはすごい成長見せてくれるね。僕も眞紀ちゃんも分かってるよ、だってずっと側で育ててきたから。ひたすら転んで、迷ったらいいんじゃないかな。苦しい時は僕らが手を貸すけど、ちょっと考えてごらん?それも全部、今しか出来ないことなんだよ。焦らなくてもすぐ大人にはなれる。ほら、もう明日が来た。」



壁掛け時計を指差し、そろそろ寝ようかと促される。まともに観ないまま、映画はエンドロールを迎えた。



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