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キリング・ミー・ソフトリー【小説】44_恋を伝えたいだとか


降る、降らないにしろ、すっきりしない天気が続く。波は荒れ近寄る者もおらず。
今年は比較的早い梅雨明けの予報だが、洗濯物がちっとも乾かなくて困るのよね、と母の愚痴は恒例になっている。



周囲は兎も角、莉里さんとのメッセージのラリーに病みつきだった。
不定休な彼女が頻繁にライブへ出掛けていると話すので、大胆にも勝負を始める。
『デートは?しないの?』
ほら、東京って色々あるでしょと言い訳がましく送信してから、ついに踏み込んだことを悔やむとあっさり笑い飛ばされた。
『ヤダ、アキくんてば。彼氏も好きな人も今はいないよ、ライブがいちばん』
思わずガッツポーズする。残念ながらまだ(恋愛面での)幸せを願う域には達していなかった。



『アキくんはー?GW中に女の子も混ざってフェス行ってたけど』『ああ、あいつらは完全にライブ仲間』『ホント?私、男の子の友達アキくん以外にいなくて、その感じわかんないや』
必然的に莉里さんにとって異性と親しくなる=恋人同士へ発展、という図が出来上がる。
ならば自分は一体何ぞや、やはり弟もどきか。
肩を落とした辺りで彼女に尋ねられた。



『アキくんはどんな子がタイプ?』『一緒にいて飽きない+好きなものより苦手とか許せないラインが似てる方がいいかな。莉里さんは?』『なるほどね!私は惚れちゃった人。あ、でもこれまで付き合ってきたのはみんな歳上かも
暗に莉里さんを指していると仄めかせば、この仕打ちだ。
ショックで立ち直れない、こんな表現はどうかとは思うが彼女が若くして亡くなりでもしなければ大学生の自分は彼女より歳を重ねるのは不可能。



そうですか、ありがとうございました、今日で俺の恋はお終いです、さようなら、大好きでしたと傷心のままアプリの画面を閉じた時、追撃を喰らう。
ま、人生長いし同い年か歳下もアリ?
どういうつもりだよ、とスマートフォンをベッドに投げ付ける。こちらに希望を与えたのか、ただ泳がせられたのか、掴めずに。



ふと窓の外を見れば空が黄色く染まって海まで続いていた。なんて風雅なのだろう、巡る季節の夕刻、停滞前線、雨粒がまるでひとつずつ小さな宝石のように煌めき、しとしと響く音の慈しみをも感じる。
何が嫌だって、いかに翻弄されても結局は情景をカメラに収め彼女に押し付ける、愚かさ。



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