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キリング・ミー・ソフトリー【小説】43_金星


雨に濡れた紫陽花が知りもしない家の庭ではつらつと咲いている。砂利道、幾多の水溜まりを跨ぎ、最寄り駅へと歩む憂鬱な朝。
「なーんか、いい感じじゃね?」
莉里さんに会う度、好きになってしまう。
募る恋心を語ると知成が冷やかす。



「ぶっちゃけ、ちーの気持ちバレバレだけど反応聞く限りじゃ満更でもなさげ。」
「散々引っ掻き回して遊ばれてんなって感じ。なのに莉里さんならそれも許しちゃえるってか、ご褒美くれるし悪くねえ……俺、頭おかしい。」
サイコーに拗らせてんね!クソ面白れー、俺はこういうネタ欲しかったんだわ。」
虹色に耀くビニール傘の下、垂れる雫、知成は腹を抱えて笑う。



一方こちらはどこでどうやったらそんな派手な品物を買う気になるんだと白い目を向け考えていた。友人の色恋沙汰ほど愉快なものはない。
そう、側から見たり聞いたりする分には。
当事者はてんやわんや。



話題は変わって、淳と始めたバンドのドラム探しは行き詰まり状態だったが運良く中学時代の仲間が手を挙げ、淳に相談したところ
ちーの友達ってパリピだらけじゃない?
と指摘される。
即ちパーティ・ピープル。知成、きのピ、勇吾が脳裏に浮かぶ。莉里さんもどちらかといえばそれ、ぐうの音も出ず。



付き合いこそあれど自らがああいった類いの人間でないことは確か。
いずれにせよプレイで判断してくれ、と頼み込みスマートフォンの映像を見せた。撮影自体に慣れていないのでかなり試行錯誤したらしく斜め後ろから録画されており、曲は先日、淳と2人で奏でたもの。リズムを刻みながらサビではしっかり歌ってくれる。



(みなみ)、予め伝えておくと彼の苗字だ。
あれは中学1年生。言わば春の恒例行事、出席番号順に行う自己紹介。
千暁と名乗るのも嫌な自分とは対照的に
あっ、南ちゃんって呼んで下さい。
などと開き直りおどける姿を忽ち気に入ってしまい、一目散に声をかけた。



高校が離れようが互いの家を行き来し、今でもたまに連絡を取り合う親しみ深い関係。
中学は吹奏楽部でパーカッションのパートリーダーを務め、高校では軽音楽部というお決まりなコース、現在専門学生なのでそろそろドラムを辞めるつもりだった。


自分は幼い頃から楽器を続けてきて、淳は苦もなくすんなりこなせる天才型、南は一味違って、単純にドラムを叩くのが好き、基礎となる土台を積み重ねた安定感を持つ。
三者三様のバランスが丁度良い。



「この人、すっごい嬉しそうに演るね。」
淳がボソッと呟く。
究極の褒め言葉に聞こえた為、南がうちのドラマーでいい?と尋ねれば
「まあ、1回くらいは。」
ご覧の物言い。いつもの如く素直ではなかった。



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