キリング・ミー・ソフトリー【小説】46_今日晴れるかな
6月末から7月にかけて台風が暴れ、大気の状態は非常に不安定となり全国の空模様が狂う。
自分達の住む港町は幸いなことに雨に降られるのみで比較的、被害が少なく済んだものの、山地は土砂災害を始め浸水もあったと聞いた。
海の近隣区域で暮らすこちらを案じ、落ち着かないのか莉里さんが普段以上にこまめな連絡をくれる。
昼夜問わず、凄惨を極めた豪雨によって見るに耐えない程、破壊されていく他所のニュースが流れてくれば胸が抉られた。
そのせいで亡くなった方と遺族や、家屋を奪われた人の心情を慮ると遣る瀬なく、お願いだからもう止めろよと叫ぶ。
そんなちっぽけなひとりの男が情け容赦ない自然災害に敵う訳もなかった。
やっと2018年の梅雨が明ける。
後日、バンドの初顔合わせ。
後ろと横を大胆に刈り上げた短い髪を薄い茶に染め、無精髭を生やし、夥しい量のピアスを付け、ド派手なブランドスニーカーを履く。
まさにチャラチャラした容姿でガムを噛みながら現れた南を一目見て、淳は〈陽キャのパリピ確定、言わんこっちゃない〉とこちらを睨み圧をかけた。
相当、警戒していたそうだが音楽に言葉は要らぬ。3人で演奏するとあっという間に打ち解ける。更には、南が見た目と裏腹に大らかな性格を持ち、アニメにも造詣が深く映像系の専門学校に通っていると知るや否や嬉々として
「南ちゃん!よろしく!」
と受け入れた。彼の参加に消極的だったのに、つくづく気まぐれなヤツだ。
これにてギターボーカル・俺、ベース・淳、ドラム・南。スリーピースバンドの体制が整う。
加えて両親が妙に浮き足立っていた。
要は10歳離れた兄のお出ましである。
土曜日の朝、新幹線を使い帰ってきて、実家でゆったり一晩過ごし、翌日は久しぶりに兄弟でフェスを楽しみ、再び東京へ戻るという計画。
それだけではなく、前期授業の終わりが控え、風のような慌ただしさを振り返る余裕すら残らない。
