彼氏が私のぬいぐるみと楽しそうにご飯を食べている
一人暮らしならではの〈集まれない森〉へようこそ。
最高気温25℃、日中の紫外線が強く風までもが吹き荒れる4月某日。
恋人のツヅルからスマートフォンのメッセージアプリに写真が送られてきた。
まつ毛の生えたぬいぐるみ(しかも、どう見てもウミガメなのに緑色という矛盾がある)を頭に乗せ、バランスを取り、ふざけて笑っている。
それは昨夜、「ジュリが帰っちゃうのやだ」などと玄関先で駄々を捏ねたツヅルに仕方なく私の分身として預けたものだった(幼児か)。
「はいはい、かわいいね」
湯上がり、彼の自由さに半ば呆れ顔の私は独りごちて、ドライヤーで髪を乾かしながらハートマークが踊るスタンプを返した。
すると、反応が良かったと捉えられたらしく、毎晩ウミガメのぬいぐるみと共に過ごす様子が届くようになる。
大盛りすぎる白米のお供にカメ。
わざと私のために空けたベッドの右側にカメ。
一応畳んだくしゃくしゃな洗濯物の上にカメ。
埃に塗れたノートパソコンの脇にカメ。
そして別段、羨ましくもないが、ツヅルに膝枕されるカメ。
発展途上の彼の〈森〉に緑色の住民がやってきて、
『かめたろうと一緒だよ』
終いには勝手に名付けられた。
たまたま私がセレクトショップで見つけて買ったばかりのぬいぐるみをこんなにも可愛がってくれるのはありがたい、だが、恐らくその子はメスです。
〈かめたろう〉呼びに異論を唱えてみたところ、『俺のぬい活でしょ』ときた。左様でございますか。
つまり、彼の部屋にお泊まりさせている状態、寂しい気持ちが紛れて癒されるのなら何より。やがて外出時にも連れ歩くのだろうか?
しかし、いつか私たちが結婚して子供を授かった後がちょっぴり不安だ。命名はこちらがしたい。
……まだ交際して4ヶ月経たないうちに、そんなことを考えてしまう1段飛ばしどころか10段飛ばしの浮かれた自分は、〈彼女のぬいぐるみまで大切にする〉といった愛の形に、シャボン玉のような溜め息を吐く。
『早くツヅルのおうちに行って、かめたろうごといっぱい愛してあげる』
深夜に送ったメッセージは、深夜に書いたラブレターの如く翌朝の私を恥ずかしさでのたうち回らせる。

