センチメンタルのかけらさえなかったんだ
君が「もうやだ」なんて諦めようとするから、お得意の「一緒に行こうか?」が滑り出した。
呼んだタクシーに飛び乗っても間に合わなかった電車、大荷物抱えて「エレベーター使うな、乗り換えあと2分しかない!」って走った階段、同じような人の群れ、ゴールキーパーみたいなドア付近の守護神、コンシーラーで隠せない日頃の痛みとオフィスカジュアル、7時半、ランドセルを背負った大人しそうな子どもがそこに混じっていて、そういえば自分は、出がけにシャワーすら浴びられなかった。
ナビゲーターになって見送る、僕にできることはこのくらい。
実は言われなくても着いていくつもりだったけれど、寝巻き同然で素材を活かすどころの話ではなく、どうしてこうも格好がつかないのだろう。
朝陽が当たると茶色く光る髪が、僕に何度も手を振る君の下瞼が、何だか眩しくて、気のせいか。
一生忘れないと思っていてもいつか薄れる記憶の中で、東京。

★作者急病のため今週の投稿遅れました。
あなたも、どうか、元気でいてください。
