キリング・ミー・ソフトリー【小説】62_TEENAGE 4EVER
微妙に風の冷たさを感じた頃、本日初めて南と同行する。
彼はライブを観に行く勇吾に放ったらかしにされて以降フードエリアに居座り、腹一杯好きなものを食べ、道に迷いつつ場内を徘徊していた。
「このフェス色々遊べるからさあ。せっかくだし、楽しまないとね。」
日焼けのせいで外見的には限りなく〈ウェイウェイ専門学生〉に近付いたが自由気ままで羨ましい。
「そうだ。淳とめいちゃんってあれ、付き合ってるの?」
ウォールオブデスしようぜ!などときのピと淳が血気盛んに迎える非常に激しめなレゲエを軸としたバンドのステージへ、なんとめいも馳せ参じた。まず彼女の趣味でないことは一目瞭然、怪我しようが全ては自己責任だと淳に切り捨てられたのに。
そんなにひとりぼっちが嫌なのか、しがみ付いても淳の側にいたいのか、どちらにせよ異例の事態だ。
「違うよ。友達っぽい。」
「マジかー!じゃ、俺にもワンチャンあるかな。」
耳を疑う。あの仲に割り込むのが可能とでも?
確かに中学時代からモテモテな南を見ていれば顔立ちを始め心根の良さにも頷けるが、率直に述べる。彼女と宜しくやっていける男は淳だけ。
「めいちゃん○○に似ててかわいいよね。」
知りもしないアニメ或いは漫画のキャラクターと思しき名前を出されて戸惑った。
色恋沙汰でモメるのは勘弁してくれ。
夕方ようやく6人揃い、すかさず南がめいの隣に立つ。驚くべきことに会話が成立し、そこそこ盛り上がる(どうせ俺は嫌われているんだろう)けれど、淳は然程気に留めていない様子だった。
昔の楽しみ方とは違って容赦なくダイブを繰り返し、再び散り散りになった際もめいは淳に寄り添ってステージ間を移る。
「ワンチャン、ねえよ。」
そそくさと人混みに紛れ消え去った両者を複雑な表情で眺める南の肩を叩く。
「ああ、めいちはジュンジュンにべったりだからダメだよ。分かる?ジュンジュンのこと大好きでしょ。」
勇吾があまりにも残酷な現実を告げた。
敢えて言葉を濁したこちらがハラハラしてしまう。
「うん、流石に察するよね。ってか、あんなんでもまだ付き合ってないんなら俺が引っ掻き回しちゃおうかな。アリだわ、これ。」
唖然として勇吾と目を見合わせる。
温厚な羊はどこへやら、恋愛においては物凄く肉食系の無駄なポジティブさにあやかりたい。
徐々に陽が落ちてきた。
