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キリング・ミー・ソフトリー【小説】61_テレキャスターストレート


8月末日、快晴。野外音楽イベントにて
「俺も混ぜて貰っちゃってごめんね?」
申し訳なさそうに笑うが、お馴染みの5人グループに新しく加わり移動中のみで楽々溶け込んだ恐るべきコミニケーション能力を持った南はやはり〈パリピ〉では。


会場は開放感溢れる空気に包まれ、夏の締め括りに相応しい最高のロケーションだ。一方で雨フェスなどと呼ばれるも、髪色を目が覚める緑に変えたきのピが私は晴れ女だから!と胸を張った。


数え切れない程、写真を撮り合った後に何の説明もなくそれぞれ離れていくのを見て、置き去りにされた南は焦る。
「えっ、別行動なの?」
「俺ら基本そうだよ。南ちゃんがどれ観るかで誰と過ごすかが変わるくらい。」
当初、極度の人見知りによって酷く怯えていたのにも関わらず今やすっかり仲間の一員となっている淳が平然と返した。


そんな訳でオープニングアクトを楽しみにしていた自分は淳・めいと連む。
関係性があやふやなこの2人に挟まれれば、お邪魔虫としか思えず絶妙に気まずい。
きのピはフォロワーと合流し、案の定、意気投合する勇吾・南の組み合わせ。
彼らは他のステージやフードエリアに行ってしまった。


尚且つ淳が用を足すと言って、めいと共に残される。誰かの影に隠れがちな彼女とは個人的に会話した試しがなく、どう接して良いものか。
めいが身に纏うヒッピー風のアウトドアファッションは大層可愛らしいが褒められても反応に困るだろうとせめて無難な話題を振る。
「晴れて嬉しい、つってもこまめに天気予報チェックしなきゃ。」
「そうだね。」
彼女はスマートフォンに夢中で一瞥もしない。
沈黙を避け必死に続けた。


「俺さあ、このバンドすっげえ売れると思ってて。イケてるよね?」
「うん。」
「実は淳がオススメしてくれたから聴き始めたんだけど。」
淳くんが?
めいがパッと顔を上げてこちらを見つめる。
おい、露骨に食い付いてくんな、めちゃくちゃ悲しいわ。


俺自体には一切興味を唆られないようなので仕方なしに淳の話で場を繋ぐ。
めいが淳に想いを寄せるのはあからさまだった。
「お待たせ。」
そんな恋心を知ってか知らずか淳は呑気に戻る。めいちゃんはただの友達だと考えてねえぞ、馬鹿野郎と罵って突きを入れたいが、彼女の為に我慢。


もう二度とやり直しが利かない今日、暑い熱いフェスの幕開け。
きのピはステージを駆け巡るだけに留まらず各所で思い切り遊ぶ予定、勇吾と南は食の趣味も合い、さながら竹馬の友であった。
そんな中、淳とめいはカップルかの如く是が非でも着いて回る。歯痒さにやきもきするからさっさと付き合えよ。


音楽に塗れつつ黄昏れた。
結局、好きな人に会えないまま今月が終わろうとしている。誕生日にサプライズで電話がかかってきても手の届く距離にいなければ虚しい。
どんどん欲張りな気持ちが育つ。



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