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キリング・ミー・ソフトリー【小説】72_オーダーメヰド


連絡がない。
どのような音楽を聴けどもぽっかり空いた隙間は埋められず不満が募る。彼女を思い出してしまう故に触れられなくなった曲の数々で苦しむ。


引き換え莉里さんは呑気なもの、友人とライブに行ったなどとつぶやいていた。
こちらと会ったことは一瞬たりともSNSへ載せた試しがなく、しかし既に代用品を掴み取ったようで大変悔しい。


その相手は莉里さんと特に仲が良い唯一の女性フォロワーである。
これまで気にも留めなかった〈〉のつぶやき一覧を覗けば、どうやらアラサーの看護師でお1人様を謳歌し決まったバンドを追いかけ全国のフェスに現れてツアーに通い詰めるタイプと見え、莉里さんと正反対ではという印象を受けた。


彼女らの距離が縮まろうとフラれた男には何の影響も与えないどころか、まず第一に往生際悪くスマートフォンに縋り水面下で蠢く薄暗い行為へと耽るのは我ながら鳥肌が立つ。
拗らせストーカーここに極まれり。


「あっくん、今夜はどれ観たい?」
ソファにもたれ掛かって項垂れると父がいつもの調子で話しかけてくる。
「えー?ラブストーリーだけは勘弁、見たくもねえ。」
「じゃあホラーにしようよ。大抵イチャイチャしてるカップルがやられて死ぬ。」
あっけらかんとした返事につい口元が緩む。


父は柔らかな微笑みを向け隣に座った。
まさに先日、余裕を持った大きさの長椅子へ買い換えて心地良く寛げる。
「やっと笑ってくれたね。最近、元気なかったし部屋に篭りきりだったでしょ。僕も眞紀ちゃんも気になってたんだ。」
「心配かけてごめん。」
「大学やバイトでなんかあったか、友達と喧嘩しちゃったとか、僕達は想像することしか出来ないからさ。」
何も尋ねず普段通りに振る舞い、見守ってくれる両親の暖かさが沁みた。


「クッソしょうもないネタっつーか。まあ、好きな子にフラれたんだよね。うん、そんだけ。」
幾ら家庭円満とはいえ、なんて赤裸々にぶち撒けたんだろうと目が覚め正気を取り戻す頃には父の選んだ映画が始まる。


序盤から油断した馬鹿なカップルが揃って化け物に襲われ、ほんの少し溜飲が下がった。



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