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キリング・ミー・ソフトリー【小説】71_彼らのMUSIC


平日の晩、スタジオ練習。
バンドメンバーのスケジュールが久しぶりに合う貴重な時間だ。
「あー!マジ無理、他行こってなんねえ。」
ギターを弾きつつ途方に暮れる。
次から次へと人を好きになれたなら苦労しない。


先月末のフェス以後、南はめいに積極的なアプローチを繰り広げているらしいが、2人きりで遊ぼうという誘いには乗らず強めに拒否されたとのこと。淳と一緒に出掛けたのに南とは個人的な約束をしない、誰が見ても明らか、つまり鈍感でも気付く筈。
そんな淳は何食わぬ顔でウォーミングアップとして適切な曲のベースラインを奏でる。清々しいまでにこちらと南の色恋沙汰には無関心だった。


「ちーは本気で向き合えただけすごいよ。それさ、引っくるめて音にしない?俺らにはバンドがあるでしょ。」
「色んなもん全部込めれば?綺麗事捨てなよ、絶対そこにきっちり合わせるから。」
両者の存在に救われる。
初ライブ当日のセットリストには自分達が最初に合わせたものが入っていた。


高らかに叫べ、今この瞬間を精一杯生きて、声を揃えて歌え、誰の為でもなく。
子供の頃から音楽が大好きでギターを10年以上続け、動画投稿サイトに載せた弾き語りが淳に見つかって、勧められるがままにギターボーカルとなり、南が仲間へ加わって体制が整い、ヒーローのパフォーマンスに憧れ、やがてバンドを真剣にやりたいと考える、俺がフロントマン。


ドラマや映画のような順風満帆に煌めく青春は待ち構えておらず悲しき哉、現実はこんなもの。
外見のみか中身もカッコ悪い上に情けなくて、〈お誂え向きに〉フラれたばかり。
だからこそ出来うる限りの全てを尽くし、喉を震わせ掻き鳴らす。
なんか文句ある?笑いたければご自由にどうぞ。


「ちーヤバ過ぎる、最高。」
死に物狂いの無我夢中で1曲通し終われば淳が目を輝かせて絶賛する。ほぼ冷静さを保つ表情が崩れ(こいつの示す反応は大体間違いない)南も深く頷き、感嘆の息を漏らした。
改めて、2人とバンドを組めて良かったと思う。



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