キリング・ミー・ソフトリー【小説】24_○size FITS ALL
今日はフェス、野郎ばかりでなくちゃんと女の子もいますよとの意味を込め撮影した一枚を送りつける。
ちゃちな攻撃如きに莉里さんは動じないだろう、せいぜいライブキッズ軍団と嘲笑われ、どこにでも沸く虫のようにサッと振り払ってスルー。
『いいなあ。羨ましい、青春じゃん!』
私は仕事、と嘆いた。
時間の経過につれ観客が集まる。
好きな人には会えない虚しさで黄昏れると突然、首筋に冷たいものが当たり、ギョッとして叫ぶ。正体はスポーツドリンクだった。
見事に驚かせたきのピは大笑い。
「あれ?アキはてっきり淳やめいといるもんだと思ってた。」
「ぼっちだよ。俺はここがスタート。」
ややもすると勇吾が数本ペットボトルを持って現れ、こちらに渡し、こまめな水分補給を促す。気遣いが嬉しかった。
「めい達はあっちのライブ終わって間に合ったら観るかもって。」
きのピはそう言い、すかさず近くに座る若者に話しかけステージを背に3人並んだ姿をカメラへ収める。憂鬱を吹き飛ばせ、美しい青春を焼き付けろ。
高らかに響くSE、早まる心臓の鼓動、掲げられるタオル、イントロたった一音で分かる曲。
始まってしまうといつも通り、何もかもがどうでも良くなった。
これっぽっちも知らない他人とぐるぐる走り、ぶつかり合い、好き勝手にステップを踏み、サビで肩を組んで輪を作り踊る。
そこでは皆が楽しそうに笑っており、悩みや苦しさを放り投げ、転べば助け守って、思うさま歌う、そのどれもが幸せに満ち溢れ、この時間だけ自由、世界は平和なんじゃないか、地球上に住む誰もがこんな風に手を繋ぎ支え合って伸びやかに生きていけたなら素敵、なんて馬鹿なことを考えるくらい。
一頻り騒ぐと休憩を与えられテンポが切り替わった。疲れた体と現実に沁みる。
どうか終わらないでくれと願う奇跡の連続が、過ぎていく。
次のステージから暫し、きのピらと共に行動したが、段々2人も淳とめいの関係性を怪しむ。
