キリング・ミー・ソフトリー【小説】15_わかってんだろ
淳の登場で学園生活はだいぶマシになった。
彼はやや離れた市から通い、人見知りが原因で孤立し、音楽を支えに踏ん張る。
知成と真司を紹介する際、淳は物凄く構えていたが、2人のコミュニケーション能力の高さに引っ張られ次第に打ち解けていく。
「例えるなら懐かない猫が心を許した、的な。」
「は、俺が猫?」
初めて全員揃い昼食を取る。
知成は大学生になろうと微塵も単独行動をせず、悉く新しい友人と連む。
しかし淳が
「みんなと仲良しは、誰とも仲良くないのと同じ。」
などと一触即発の爆弾発言を放って以来(聞いている方が怖い)、色々思い当たる節があったようで落ち着き、主にこのメンバーと過ごす。
知成と淳が軽口を叩き合う間、甘いものが苦手なのに間違えてフルーツサンドを買ってしまった真司と惣菜パンを交換した。
それを見た淳がぼやく。
「わあ、真司さんバレンタインとか大変そう。」
「ん?美弥にしか貰わないぞ。」
「てか、淳なんで真司のこと〈さん〉付け?」
問いかけるや否や、場が白ける。
何かおかしな台詞を言っただろうか?真司が珍しく知成を肘で突いた。
「ちょっ、俺のせいじゃねえよ。」
「ちーって天然だよね。俺なんかすぐ分かった。」
「黙っていて千暁には申し訳ないな、俺だけ歳上なんだ。」
途端に思考停止する。どうりで大人びている訳だ、初対面からベラベラ話し、ひいては揶揄った無礼さを詫びると真司は語りかけた。
「俺は千暁が気さくに接してくれたのが嬉しくて、敢えてこれまで話さなかった。おまけに大学ではひとつやふたつくらい、変わらない。」
長男の彼にはまだ手のかかる弟妹が複数おり、仕方なしに高校卒業後、地元の会社で働き始める。
果たしてその行動が正しいか、わだかまりを経営者である叔父に相談したところ、迷わず1年遅れの進学を勧められ、貯金を切り崩し必要経費並びに入学金を全額支払うと家族を説き伏せ、地元に程近い大学への受験を突破、将来的に何らかの形で叔父に貢献すべく学部を選び、既に美弥との結婚をも検討中。
「つまりそんな理由で4年間頑張りたいんだ、俺の仲間になってくれて本当にありがとうな。」
と真司は身の上話を締め括った。
年齢以外の経緯について他の2名も知らなかったらしく、相応しい反応を示したくとも気の利いた台詞が出て来ない。
親に背中を押され、ぼんやりと学校へ行き、つまらない授業に飽き飽きして、奨学生ですらなくアルバイトさえ決めかねる自分を、心底恥じた。
